平和な世界を…スペインの奇才ガウディはSDGs先駆者だった | FRIDAYデジタル

平和な世界を…スペインの奇才ガウディはSDGs先駆者だった

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着工から140年。今も建築中の「サグラダ・ファミリア聖堂」。天才・ガウディが夢見た平和な世界は未だ実現しない…  写真:山村健

「ガウディというと、見た目の奇抜なデザインに注目されがちですが、じつは彼の建物には水や空気といった自然エネルギーを活用して、いかに暮らしやすくするかといった工夫がさまざまになされているんです」

ガウディに魅せられて建築家への道を進んだ東京工芸大学准教授の山村健氏は、こう言う。

すべての人々にとってよりよい、持続可能な未来を築くための開発目標「SDGs」。2030年までにその目標を達成するため、今、世界各国で取り組みが行われている。が、なんと150年前に、このSDGsの思想を取り入れた建物を作った人物がいた。アントニ・ガウディ。スペインのもっとも有名な建築家だ。

自然エネルギーを利用した建物を150年前に

バルセロナにはサグラダ・ファミリア聖堂、グエル公園、カサ・バトリョなど、彼の手による建築物がたくさんある。

バルセロナの「グエル公園」は、自然の美しさと水の流れを計算してデザインされている 写真:山村健

1880年代はじめから建設が始められた、サグラダ・ファミリア聖堂は、着工から140年近く経った今も建築中で、バルセロナを訪れた観光客が必ず立ち寄る観光スポットだ。

「ガウディは、人間と自然が共生することが幸せだと考えていました。また、自然は美しく、その美しい形こそ構造的に安定している、と、建築物に自然の形を取り入れたのです。サグラダ・ファミリア聖堂の中にはたくさんの柱が立っていますが、あれらは樹木を模したもので、幹から伸びる枝によって天井が支えられているのです」

こう語るのはスペイン大使館・文化科学担当参事官のヘスス・サンツ氏。

自然のなかに「直線」的なものはない。ガウディの作品に曲線が多いのは、そのためだという。そんなガウディの作った「住宅」は、デザインが個性的で、少し暮らしにくそうに見える。ところが、山村さんは「とても暮らしやすい」と言う。

「たとえば、集合住宅のカサ・バトリョは、両側の建物にはさまれ、風が抜けにくい立地なので、中庭を作り、各戸に風の通り道をつけて、住民が自由に換気量を調整できる仕組みを設けてあります」

自然エネルギーを利用する工夫

グエル公園には、広場に砂を敷いて雨水をろ過し、柱の中を通って地下の貯水槽にため、貯水槽がいっぱいになるとグエル公園のシンボルである彫刻の「トカゲの口」から水が流れるシステムになっている。

これはまさに自然エネルギーを利用したSDGsの目標の一つ「住み続けられるまちづくり」の実践。ガウディはSDGsの先駆者でもあったのだ。こうしたガウディの功績に注目した展覧会「SDGsの先駆者アントニ・ガウディ 形と色 150年前からのヒント」が、スペイン大使館で開催されている。「住宅の換気窓」や「トカゲの口」のレプリカなど、興味深い展示が並んでいる。

働く人の環境も考え、SDGsを実践

「ガウディはまた、職人たちを大事にする人でもありました。サグラダ・ファミリア聖堂には付属の学校計画して、お父さんが仕事をしているときに、子どもたちは勉強をして、お父さんの仕事が終わったら一緒に帰るということを考えていたのです。近年、企業が職場に保育所を設けていますが、ガウディは150年前に、すでにそれを考えていました。

職人とのコミュニケーションも大事にしていたようです。住宅を作るときには、窓枠を作る木工職人、外壁を彩るタイル職人というふうに、さまざまな職人が関わります。自分がイメージするものをいかに作ってもらうか、毎朝のようにそれぞれの職人たちと相談していたんです」

これまでガウディは「芸術家肌の気難しい人」のイメージもあった。が、決してそうではなかったと山村さんは言う。

「ガウディは『私の唯一の長所は、私のもとで働いている人々の一人一人が仕事を充分にできるよう、彼らの能力を引き出すことにある』と言っているんです。僕のいちばん好きな言葉です」

「働きがいも 経済成長も」というのが、SDGsの目標のひとつだ。ガウディはその部分でもSDGsを実践していたのだ。

戦禍で資料は消失。平和を希求する

「ただ、僕たちは今、ガウディが何を考えて、どのように作ろうとしていたのか、推測でしか知ることができません。ガウディは図面を描き、その模型をたくさん作り、それを何度も何度も作り直して完成へ近づけていったのですが、ガウディの没後に起こったスペイン内戦で、そのほとんどは壊されてしまったからです」(山村さん)

今、サグラダ・ファミリア聖堂は、わずかに残った資料をもとに建設が続けられている。

「ガウディは散歩が好きでした。草木に触れ、風や光を感じながら歩き、ときには10㎞も歩いたと言われています。それは平和だからこそ、できること。だれよりも平和を愛したのもガウディでした。

世の中が落ち着いたら、ぜひスペインに遊びに来てください。スペインは多様性に富んでいて、お勧めしたいところがたくさんあります。バルセロナ近くにあるモンセラットの、のこぎり状の岩山はサグラダ・ファミリア聖堂をはじめ、ガウディがさまざまな作品のモチーフにした場所として有名です。

マヨルカ島にあるドラック洞窟の鍾乳洞も神秘的で、ガウディにインスピレーションを与えた場所です。この美しさがずっと守られるように。心から、平和を願っています」(ヘスス・サンツさん)

アントニ・ガウディ。死後もその作品が作られ続けている天才建築家が夢見た「世界」。その精神は、確かに引き継がれている。

スペイン大使館・文化科学担当参事官のヘスス・サンツ氏は、マドリッド出身。「スペインには地方ごとに多彩な文化が。ぜひ、訪れて」
「ガウディに魅せられて建築の道に進んだ」山村准教授。「現地に行って、もっともっと研究したい」
1階から屋根までの空気の流れを考え、計算された窓の形に注目。カサ・バトリョ(Casa Batllo)外観 写真:山村健
住宅、カサ・バトリョの窓には、こんな通気のための工夫が 写真:山村健
グエル公園にある「トカゲ」(レプリカ)。この口から、再生された水が流れ出る仕組みだ

*「SDGsの先駆者アントニ・ガウディ 形と色 150年前からのヒント」は、東京・六本木のスペイン大使館で開催中(入場無料・3月31日まで)

  • 取材・文中川いづみ写真協力山村健

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