現役自衛官の告白「いま日本の国防最前線で起きているヤバイ事態」 | FRIDAYデジタル

現役自衛官の告白「いま日本の国防最前線で起きているヤバイ事態」

ウクライナの惨状は他人事ではない 北海道&尖閣諸島の2正面作戦に「米軍は動かない」、格好の標的「丸裸の原発群」、オスプレイ&空母「乗組員確保に四苦八苦」

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対ロシアの切り札として開発され、北海道に限定配備される90式戦車。主力戦車ではあるが、運用開始からすでに30年が経過している

国際社会の制止を振り切って強行されたロシアのウクライナ侵攻、とどまるところを知らない北朝鮮のミサイル発射、中国による覇権主義的海洋進出――日本を取り巻く安全保障の環境は日々厳しさを増している。

具体化した脅威に対し、防衛省は’22年度予算の概算要求で5兆4797億円を計上した。防衛費は過去最大規模となった。軍事ジャーナリストの清谷信一氏が一刀両断する。

「本予算のみで補正予算は含まれていません。’21年度は8000億円近い補正予算が組まれています。防衛省のおカネの使い方はデタラメ。国民はもとより、現場の自衛官への裏切り行為です」

防衛費が増額されることがなぜ、裏切りとなるのか。ある防衛省事務官は「中身が伴っていないのです」と嘆く。

「額が大きいだけのハリボテ。海外からの武器等の購入について、防衛省は基本的に値引き交渉をしない。完全に商社任せで、言い値で買っている。防衛省の各部署に『専門官』という役職がありますが、名前だけ。私も人事異動で、突然やったこともない分野の『専門官』を命じられました。研究どころか関連する本を一冊も読んだことがないのに……」

先の清谷氏は日本の防衛事情をこう例えた。「具が全然ないスキヤキの鍋に、超高級なアメリカ産牛肉がチョロッと入っている状態」だと――。

今回、国を憂う5名の現役自衛官がFRIDAYに登場。ニッポンの国防の、お寒い現状を語り尽くした。

尖閣有事に米軍は来ない

40代陸上自衛官A「ウクライナの惨状を見て思うことは『明日は我が身』だね」

30代陸上自衛官B「いや本当に。これまで、防衛予算を獲得するために恐怖を煽(あお)るストーリーとして語られてきた『ロシアの北海道侵攻』も、『中国の尖閣諸島侵攻』も俄然、(がぜん)現実味を増してきました」

40代航空自衛官C「北海道侵攻は旧ソ連時代の話で、ここ十数年のメインシナリオが尖閣への中国軍の上陸。尖閣に安全保障条約が適用されるかどうか、歴代の自民党内閣が何度もアメリカに確認してきたけど、今回のウクライナ侵攻の対応を見たら望み薄だね。尖閣有事の際に米軍が出張ってくるとは考えづらい」

30代陸上自衛官D「北海道と尖閣で2正面作戦を展開されたらと思うとゾッとします。ただ、中国が侵攻するとしたら、まずは台湾でしょうね。ウクライナ東部の親露派の要請を受けて、平和維持のために軍を派遣――というロジックが通用するなら、台湾にも応用できるわけで」

30代海上自衛官E「中露がガッチリ手を結んでいるのは不気味。中国と握れているから、ロシアは安心して西方に戦力を集中できているわけですからね」

「ロシア機と見られるヘリが3月2日に北海道・根室半島の南東沖で領空を侵犯したのは不気味だった。空自の戦闘機が緊急発進(スクランブル)したが……」

「領空に接近しているとの通告、侵入したことに対する警告を、いずれも無視されたんですよね?」

「空の守りと言えば、最新鋭戦闘機F-35が導入されたけど?」

「ステルス性が高く、飛行能力も非常に高い。けど……値段も高い。導入まで、もっと慎重に物事を進めるべきだった。2兆5000億円も払って147機買うことになったけど、『高すぎる』と世間から袋叩きにあった後に突然、一機あたり10億円ぐらい安くなった。総額で1500億円ほど圧縮できた。財務省にうるさく言われて、防衛省がしぶしぶ交渉したら、ロッキード・マーチン社が値下げに応じたみたい。つまり、いままで値下げ交渉していなかったということ」

「もっとおカネをかけてほしいところは一杯ありますよ。日本の主力戦闘機のF-15って、’70年代の戦闘機ですからね。計器など内部のシステム等をアップグレードして、’22年の現在も使っている」

「機体設計自体が古いから、アップグレードには限界がありますよね?」

「中国やロシアはどんどん新しい戦闘機を開発していて、完全に置いて行かれている。北朝鮮が使っている古い兵器のことを笑う資格はないね」

「初期型のF-15は、もはやアップグレードすらできないと聞いています」

「空自が対艦、対地上用のスタンドオフミサイルを搭載できるようにF-15を改造。空対空の戦いを捨てようとしつつあるのは現実的だね」

「空対空じゃ勝てないですからね。1月に小松基地(石川県)を飛び立ったF-15が墜落して、パイロット二人が亡くなる事故がありました。調査結果が出ていないので何とも言えないですが、不可解な点が多すぎますよね」

「考えられるのは機体トラブル、落雷、バーティゴ(空間識失調)でしょうか」

「F-15は機体が古いからね……事故になっていないだけで、バーティゴもよく起きているとか?」

「バーティゴは私も何度も経験しているけど、陥りやすいのは曇天のときや、雲の中、夜の闇を飛んでいるとき。とくに夜は星の光や漁船の灯が海に反射して、海面が夜空に見えて上下がわからなくなる。その状態になると、不思議と計器が信じられなくなる」

戦後初の空母が「定員割れ」

「戦後初の空母『いずも』は既存の護衛艦『いずも』を改修して、空母化すると聞きましたが……」

「それが大問題なんですよ。現時点で『いずも』は定員約500名に対し、半分の200名台半ばぐらいしかクルーが乗っていない。空母化すれば搭載する航空機の整備士など、さらに多くの人員が必要になるのですが、いったい、どこから連れてくるのか。現時点ですでに定員割れしているというのに……」

「結局、自衛隊内部で人の奪い合いになるんだよね……」

「たとえばエンジンを担当する3分隊(機関科)は、エンジンのオート化によって人員が削減されているんですけど、整備や点検、清掃には人力が必要。だから、他の分隊から人員を回してもらわないといけない。タコが自分の足を食べて生きながらえている状態ですよ」

「その『いずも』にはF-35の短距離離陸・垂直着陸タイプのF-35Bが搭載されることになって、隊員の教育が始まったんだけど、ここでも人手不足がネックになった。海自が運用しようとしていたけど、結局、人員を集められず、『教育ができない』ということで、通常型F-35が配備される空自が担当することになった」

「そうなると『いずも』のイニシアチブは誰がとるのか、という話になります。もちろん、トップは艦長に間違いない。『いずも』型の艦長は一佐(一等海佐。軍での大佐に相当)職。もし、空自の部隊が乗ってくるとすれば、二佐の飛行隊長クラスがトップになるでしょう。ただ、これだと、空自の意見が通りづらくなる。もしかしたら『派遣部隊指揮官』とか、よくわからない役職を作って、一等空佐を乗せるかもしれないですね。ただでさえ、現場は人がいないというのに、見栄だけで無駄な幹部が配置に付きそうな予感……」

「陸自に配備され始めたMV-22B(オスプレイ)でも同じような現象が起きていますよ。尖閣や南西諸島への侵略に対する島嶼(とうしょ)防衛の切り札として水陸機動団が使用し、かつ『いずも』にも搭載されるのですが、オスプレイ用の乗組員が全国から掻き集められて、現場は人手不足に陥っています」

「オスプレイは不満の声が多いね。機体性能は確かに素晴らしいが高い。なのに、3600億円もかけて17機も配備することにしてしまったものだから、他のヘリが買えなくなっている」

「今、攻撃ヘリも輸送ヘリも観測ヘリも数が足りていません。もっと普段使いが出来て、安いヘリが絶対に必要。現場は『誰でも気楽に使えて小回りがきくママチャリが欲しい』って言っているのに、ベンツが続々と納車されているようなもの。不便でしょうがない」

「この間、引退したはずの小型ヘリOH-6Dも結局、完全引退できていないみたい。輸送ヘリや観測ヘリがないので、いざという時用にいつでも使えるように補給処でモスボール(劣化防止処置を施しての保管)しているからね」

当たらない機関銃

「F-35やオスプレイ、スタンドオフミサイルなど、世界もうらやむ高額な高性能兵器を買い揃えたおかげで、末端の部隊は大変なことになっていますね」

「高額の装備品の購入に伴い、防衛予算を大幅に取られることで、陸自では小銃や防弾チョッキがお粗末な事態になっている。わけても衝撃だったのが、住友重工の不正。自衛隊が配備する数種類の機関銃を製造していた住友重工が40年以上にもわたり、性能や耐久性に関するデータを改竄(かいざん)していたことが’13年に発覚。防衛省は同社を指名停止処分にするなどの制裁を科し、『住重に裏切られた』という姿勢を見せましたが……」

「バッテリーで言えば、広帯域多目的無線機のバッテリーもヤバいですね。本体と、本体に接続されている端末の両方にバッテリーが搭載されているのもどうかと思うけど、その端末側のバッテリーがすぐ切れる。演習中、ずっと電池切れの警報が鳴っていたこともあった」

「あの無線機、コードが細くて弱いからよく切れる。アンテナもよく折れます。骨伝導イヤホンの耳に入れる方のゴムが取れやすくて、落ちないようにテープでとめているから耳が痛い。よほど、AirPodsの方が丈夫で便利ですよ」

「防弾チョッキも、身長に合わせてサイズが決められているはずなのにブカブカ。3号サイズの次が5号とサイズの選択の幅がザックリ過ぎるところからして、おかしいよね(笑)。もう少し小さいサイズの防弾チョッキが欲しいと言っても『数が足りないから無理』と一蹴される」

「今回、ロシアがウクライナの原子力発電所を次々と占拠しました。原発が砲撃されるたび、放射能汚染を恐れるヨーロッパ諸国は恐怖のドン底に突き落とされましたが、日本の地上部隊はこんな有り様。守る以前の問題ですよ」

「ほとんど丸裸な日本の原発は、侵略者から見れば格好のターゲット。しかも、列島のあちこちにあるから、それだけで守りづらい。大兵団を送りこまなくても、やすやすと占拠できるでしょう」

「原発はいろんな意味でリスクだね」

「在日ウクライナ大使館は日本人、それも自衛官を集めて義勇兵としての参加を呼び掛けていたけど、言語が理解できない以上、大した戦力にならない」

「戦車は国やメーカーが違っても、操縦方法に大差はない。だからと言って、すぐに乗れるかと言うと、やはり車内での連携が取れないと戦えないですね」

世界第9位の防衛費は「ハリボテ」。人手不足で老朽化した役に立たない戦力、それが自衛隊の実態だ。5人は最後にこう嘆いた。「国防破綻ですよ」と。

戦車間をネットワークシステムで繋ぐ最新鋭の10式戦車。戦車の数を削減する政府の方針を受け、配備数は少ない
″日本版海兵隊″こと水陸機動団の訓練風景。種子島や沖縄諸島、尖閣など南西諸島の防衛が主な任務だ
今後改修され、空母として生まれ変わる護衛艦『いずも』型。F-35Bを搭載し、東シナ海方面の防衛力強化を図る
島嶼防衛に欠かせない兵器として導入されたオスプレイだったが、現場では汎用性の高いヘリを望む声が大きい
空自への配備が進むF-35A。現在は三沢基地(青森県)に2つの飛行隊を置いている。今後、全国配備する予定
2月下旬、墜落した小松基地所属のF-15の尾翼を引き揚げるサルベージ船。2名の優秀なパイロットが失われた
100隻超の艦艇を誇る中国海軍と対峙するため、海自は護衛艦などを増やす予定だが、乗組員不足に頭を抱える

『FRIDAY』2022年3月25日号より

  • PHOTO瀬川 力 山崎健一 幸多潤平(F-15)

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