「ウクライナは滅びず」炎の指揮者・小林研一郎が夜空に奏でた思い | FRIDAYデジタル

「ウクライナは滅びず」炎の指揮者・小林研一郎が夜空に奏でた思い

「ウクライナ国歌」に込められた希望と平和への祈り

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「ウクライナの人たちを応援したい」炎の指揮者・小林研一郎氏が企画した屋外コンサート。夕暮れの空にウクライナ国歌が力強く響いた 撮影:TEN

3月11日、金曜日の午後5時30分。暮れかかる池袋の広場に、力強い女声の独唱が響いた。ウクライナ出身の歌手、オクサーナ・ステパニュックさんが歌う『ウクライナ国歌』だ。

「ウクライナは滅びず。その栄光も、その自由も! 

ウクライナの同胞たちよ、運命はまた、私たちに微笑みかけるだろう」

池袋西口公園、東京芸術劇場前の野外シアターで、1000人を超える人々がその舞台を見つめている。指揮者・小林研一郎さんが急遽企画した「ウクライナ応援コンサート」が、この夜、開催された。

「ひとりの人間のせいで、あんなに大勢の人たちが…なんか…不条理を感じますよね。痛い目にあったり、悲しい目にあったりしているウクライナの人たちに、特別な、心から出た音楽を使って、慰めを贈れたらいいなあと思って、このコンサートを企画しました」

ヨーロッパでの公演も多い世界的な指揮者「炎のマエストロ」と呼ばれるコバケンさんは、静かにこう話し始めた。

「帝政ロシアの圧政に苦しむ農民たちの苦しみ、立ち上がっていくフィンランドの人たち、そのなかから『必ず幸せがくる』という、シベリウスの交響詩『フィンランディア』を演奏します。さまざまな楽器が奏でる希望の曲です」

今回の公演には「コバケンとその仲間たちオーケストラ」が出演している。東日本大震災の被災者支援にも集まったメンバーで構成される、まさに「仲間たち」だ。

「4、5日前に、この企画を立ち上げました。みなさんに声をかけて、来てもらえる人に急遽集まってもらいました。今回初めて手を上げてくださった方もいます。ぼくの主治医の先生も参加してます。練習は、ぜんぜんしなかった。さっき、はじめて顔を合わせて、リハーサルをしたんです」

『ウクライナ国歌』に続き、男声合唱の入った『フィンランディア』、そしてアイルランド民謡『ダニーボーイ』が、コバケンの指揮で「仲間たち」によって演奏された。

「今日は3月11日。僕は福島県いわき市の出身なんです。この『ダニーボーイ』という曲は、東北で亡くなった人への追悼のメッセージでもあります」

このころには日が暮れて、観客の数はさらに増えた。広場の後ろのほうのベンチから舞台は見えないけれど、年配の人が座って演奏に聴き入っている。ベビーカーを揺らしながら前方の舞台をじっと見つめる女性、仕事帰りなのか、ビジネススーツの女性男性の姿も増えてきた。MCの朝岡聡さんが、曲紹介とともに平和へのメッセージを語りかける。

最後の曲は、ラヴェルの『ボレロ』。小太鼓とフルートのソロから静かに始まり、同じフレーズを繰り返しながらどんどん楽器が増えて、壮大な音の重層が生まれる。平和を祈る人、ひとりひとりの思いが集まって、大きなうねりになるように。

「ウクライナのみなさんには、勇気をもってくださいと伝えたい。政治と権力の犠牲になっている市民を世界中が見守っています。世界の共通語である音楽で繋がって、ウクライナの人を応援したい。必ず幸せがくる、そう信じています」(コバケンさん)

この日、会場には募金箱があった。集まった募金は、来月、ウクライナの隣国ハンガリーに渡る小林さんが自ら、ハンガリーに逃れた難民のための支援部に届けるという。日本で、世界で、ウクライナへの支援と戦争終結の願いが日に日に大きくなっている。

「私たちの粘り強さと誠実な努力が報われて 自由の歌がウクライナ全土に響く

このウクライナに幸福が再び訪れることを」

ウクライナ国歌には、こう歌われている。

リハーサルから本番の間に、FRIDAYデジタルの取材に応えてくれたコバケンさん。その優しい語り口から溢れる思いは熱く、その言葉には、音楽の力を信じずにいられない説得力があった
当日の午後、一度だけ行われたリハーサル。この公演のために、60人の音楽家が集結した
春の気配を感じる暖かい夜。311への追悼とともに、ウクライナの人たちの平穏を戦争の終結を祈る人々

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