結果は1勝3敗「ラグビー日本代表」課題だらけテストマッチツアー

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欧州ツアーでは、福岡賢樹の活躍が目立った。写真は11月24日のロシア代表戦

世界ランク11位のラグビー日本代表は、2019年のワールドカップ日本大会で初の8強入りを目指している。11月にその試金石となる2018年秋のツアーに挑み、テストマッチと呼ばれる代表戦3つを含む計4つのゲームを実施。結果は1勝3敗だった。

日本代表は、トップリーグ開催中の10月中旬から宮崎で合宿を行い、対外試合に備え万全の準備を行っていた。ところが10月26日、大阪・東大阪市花園ラグビー場での世界選抜戦を28―31で落とす。続く11月3日には東京・味の素スタジアムで、世界ランク1位のニュージーランド代表と対戦したが、こちらも31―69と敗れた。ここでは世界選抜戦で後手を踏んだスクラムを改善してきたが、自軍ボールでの肉弾戦で相手の狡猾さに手を焼いた。

渡英して迎えた11月17日(現地時間)は、ロンドンのトゥイッケナムスタジアムで世界ランク4位のイングランド代表と対戦。前半こそ若手主体の相手に健闘し、15―10でリードする。ところが後半は、相手が主軸のオーウェン・ファレルを出場させてきたことで陣地の取り合いで苦しむようになった。さらにオールブラックス戦に続き、攻撃中の肉弾戦で思うようにいかなかった。

というのもイングランド代表戦では、レフリングの指針が突然変わったようなのだ。具体的に言うなら、後半から相手の妨害を激しく引きはがす動きが厳しく取り締まられたのだが、日本代表はこれに対応できなかった。その結果、15―35で完敗した。

さらに勉強させられたのは11月24日、グロスターのキングスホルムスタジアムで、日本大会の初戦でもぶつかるロシア代表(世界ランク19位)に挑んだときのことだ。愚直ながらキックとフィジカルバトルに注力する挑戦者に対し、日本代表は反則やパスミスを犯す。自軍のミスの連続が、相手の強さを引き出すことになった。メンバーに経験の浅い選手を多く並べていたこと、本番に向け手の内を隠さなくてはならなかったことを差し引いても、格下相手の戦いとは思えないゲームにファンは戸惑った。最終的には、リーチの個人技などでなんとか32―27で辛勝したのだが、課題が残る試合だった。

11月27日、都内で会見を開いたジェイミー・ジョセフヘッドコーチ

「イングランド代表戦ではペナルティーがかなり厳しく取り締まられた。これが本当にペナルティーだったかは自分のなかでは謎です。けれど、ペナルティーが影響を与えた。ロシア代表戦でも酷なペナルティーの判断をされた。レフリーは日本代表に対し、平等に吹いてくれなかった」

ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフは11月27日に都内でこう語った。日本協会主催の総括会見でのことだ。ここでは質疑応答を前に、自身が本格的に指揮を執り始めてからの約2年間の歩みを20分に渡って述懐した。

ジョセフは控え主体のアイルランド代表に2連敗した2017年6月のことを「ここで判明したのは、選手たちにテストマッチ(代表戦)を戦うだけの力量が足りていないということ」と振り返った。さらに、同年秋のツアー最終戦でフランス代表に引き分けたことを「時間をかければかけるほど高い強度の試合を戦うだけの力量をつけられる」と語った。

ジョセフは2018年、日本代表の兄弟格としてスーパーラグビー(国際リーグ)を戦うサンウルブズでも指揮官を兼務していた。このことから、戦術家のトニー・ブラウンとともに「選手と密な関係性を築き上げた」ことを改めて強調した。

ジョセフの着任前を振り返れば、2012年、現イングランド代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏がジャパンのボスに就任。1日複数回の猛練習と緻密なスケジュール管理を遂行し、エディー自らも一時脳梗塞で倒れるほど働きまくった。

選手も徐々に自主性を鍛え、2015年のワールドカップイングランド大会では歴史的な3勝を実現。特に初戦では、過去優勝2回の南アフリカ代表から大会通算2勝目をもぎ取った。

この日のレフリーだったジェローム・ガルセスは、事前の国内合宿へ招かれていた。キャプテンだったリーチ・マイケルは「俺がよくとられる反則の理由がわかった」と喜び、当日はアタック側に優しいガルゼスの笛を踏まえ攻撃中の分厚いサポートプレーを徹底したものだ。ちなみにジョセフが今回の会見で「平等に吹いてくれない」と嘆いたロシア代表戦のレフリーも、このガルゼスだった。

イングランド大会後は後任決定の遅れなどにより、代表チームの進化に一時停止がかかった。日本でのプレー経験のあるジョセフが再来日したのは、その只中の2016年秋だった。だから「力量が足りていなかった」など一連の発言は、ジョセフが当時の現状を見極められなかったこと、ジョセフが当時の現状を把握するためには助け船が少なかったことの表れとも取れる。

今回のツアーでは多くの課題が浮き彫りになったが、今後の日本代表についてもっとも気がかりなのは、2016年からサンウルブズのアシスタントコーチだった田邉淳の立ち位置だ。司令塔である田村優のゴールキック成功率を高めた元名キッカーは、現代表でも側面支援を続けていた。しかし今秋、スタッフから外れた。ジョセフは「田邉はもともとサンウルブズの所属で、日本代表には参加しなかったということです」と説明しているが、これをそのまま受け止めるべきなのだろうか。

この件と関連して気になるのは、ジョセフが「現状(のまま)で行く」とする指導体制の編成についてだ。自国開催の重圧に対処するメンタルコーチ、体格差を技術で埋めるのに必要な格闘技出身のタックルコーチなど、ジョーンズ時代にあったポストで再設置されるべきものがいくつも思い浮かぶような。ブラウンや長谷川慎スクラムコーチらユニークなスタイルを浸透させる指導者もいるだけに、目指すべきは最強布陣の構築であろう。

もっとも、いまの日本代表には心強い点もある。その象徴的が、リーダー候補とも見られる流大のこの言葉だろう。

「僕が次にジェイミー、ブラウニー(ブラウン)、アナリストの方に言おうと思っているのは、『レフリーの傾向を調べてもらって、選手に提示してもらって、僕らがそれを意識したトレーニングをするようにした方がいい』ということ」

選手は各試合に備え相手のプレーや選手を分析するが、

「一応、(専用のシートなどでも)レフリーという欄はあるのですが、特徴までは書いていなくて。次のステップに向けてはそれが大事になる」

と流は言う。とにかく今回の遠征で見つかった課題から、選手の方が今後の改善策を提案しているのだ。

いまの日本代表では、エディー時代以上に選手たちの自治の精神が高まっている。ここは心強い。

12月15日までは、国内トップリーグの順位決定トーナメントが開かれる。各選手はそれぞれのクラブでしのぎを削る。

現在ジョセフは、母国ニュージーランドに滞在中と見られる。12月17日には「第3次ラグビーワールドカップトレーニングスコッド」が発表されるが、この時も離日中の可能性がある。

しかし、もしこの時期にジョセフが日本にいないのだとしても、サントリー所属の流は前向きであり続ける。

「いまはサントリーにコミットしているだけ。(ジョセフが)見ている、見ていないはあまり意識していなくて、自分のプレーを水準高くやることを考えています」

ワールドカップイヤーはブラウンが新たに率いるサンウルブズ、ジョセフの指導する日本代表候補勢がほぼ同時進行で実戦経験を積む。代表の主軸は春先以降いずれかのグループに合流の見込みで、本格的なワールドカップへの準備は6月に始まるようだ。選手層の薄さを課題とするジョセフは、「全選手に高い強度の試合を経験させたい」と訴える。

9月からの本番ではロシア代表、アイルランド代表(世界ランク2位)、サモア代表(同16位)、スコットランド代表(同7位)と順に激突。初の決勝トーナメント進出に向けた各ゲームのプランについて、指揮官は「詳細を伝えるのはまだまだ先のこと」と答えを濁す。

いよいよワールドカップ開催の2019年が近づいてきた。今秋のツアーでは、せっかく世界最高レベルの相手の胸を借りたのだ。成功への手順が、よりクリアになればいい。

  • 取材・文向風見也(スポーツライター)

    1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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