ウクライナ戦争 追い詰められたプーチンが始める「大粛清」の中身
現状とこれからが一目でわかるマップ付き 苦戦に苛立つプーチンは責任を丸投げ FSB(連邦保安局)の裏切りと粛清、軍中枢部の腐敗、若手兵士の士気低下 核の使用はあるのか? プーチンはどこにいる? 都市部への無差別攻撃で死者数が跳ね上がっている
「ロシア軍が一気に首都・キエフに襲いかからず、15〜30㎞手前で駐留しているのは、歩兵、戦車、ロケットなどの軍備が整うのを待っているからでしょう。シリアで募集した実戦経験豊富な兵士の到着を待って、総攻撃を始める可能性が高い」(元傭兵で軍事評論家の高部正樹氏)
ロシア軍による侵攻が始まってから3週間、ウクライナ戦争に重大局面が訪れようとしている。地図を見てほしい。キエフや第二の都市・ハリコフなど北部の都市で戦闘が激化しているのが分かる。都市部では市民への無差別攻撃が行われ、ウクライナからロシア、ベラルーシへ抜ける人道回廊に地雷が設置されるなど非人道的行為も続いている。一方のNATO(北大西洋条約機構)はポーランド、ルーマニア、バルト三国に軍を配備し、ロシア軍を牽制。にらみ合いが続いている。前出の高部氏が続ける。
「ロシアはキエフへの総攻撃と時を同じくして、南部の都市・マリウポリを攻撃する算段でしょう。マリウポリが落ちれば、親ロシア派地域のドネツクからクリミア半島まで陸路で繋がります。ウクライナを黒海から孤立させるため、オデッサにも攻撃を仕掛ける。原発がある西部のロブノ、フメリニツキーを制圧して隣接するポーランドなど西側諸国に圧力をかけ、補給線の遮断も狙うはずです」
プーチン大統領(69)は暗殺リスクを避けるため、一部の最側近を連れて、モスクワから逃れたという。
「クレムリンと遜色ない機能を持つ秘密指令部が西部のウラル山脈と中国国境地帯にあると言われています。もしものことを考慮するなら、中国国境にいる可能性が高いでしょう。ただ、プーチンの周辺にはGPSが起動しないよう外からの電波を遮断するジャミング装置があるので、正確な居場所の把握は困難です」(全国紙モスクワ支局記者)
モスクワから遠く離れた地でプーチン大統領はどんな次の手を考えているのか。ロシア政治に詳しい筑波大学教授の中村逸郎氏が語る。
「大粛清です。侵攻に苦戦したのには二つの理由があります。一つはFSB(連邦保安局)に反プーチン派がいて、情報を西側に漏洩(ろうえい)していたこと。実際に3月11日、対外諜報部門のトップらが拘束されています。二つ目はロシア軍の腐敗です。ショイグ国防相(66)など軍トップは汚職にまみれ、末端の兵士は兵器の横流しや麻薬でカネ儲けしていた。当然、若手兵士の士気は低い。プーチンは保安局と軍内の粛清を早々に済ませてから、キエフへ総攻撃を仕掛けるでしょう」
前出のモスクワ支局記者が続ける。
「プーチンにとって停戦交渉はただのパフォーマンス。妥結なんて望んでいない。実際は時間稼ぎで、その間に軍備の増強と粛清を進めているのです」
前出の中村氏によれば、「ロシア軍の脅威はウクライナ以外の国に向けられている」という。
「今後、東ヨーロッパのポーランド、ルーマニア、ブルガリア、バルト三国にある軍事基地やウクライナ難民も標的になる可能性があります。欧州は経済制裁の代償で一枚岩ではないし、米国は弱腰。プーチンは、NATOは反撃できないと踏んでいるのです。リトアニアとポーランドの間にあるロシアの飛び地・カリーニングラードに進駐する恐れもある。そうなれば、東欧諸国がロシア本国とベラルーシに挟み撃ちされる形となり、西側諸国は一気に不利になります」
世界は21世紀最大の危機を乗り越えられるか。





『FRIDAY』2022年4月1・8日号より
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