真っ暗なコンビニに行列が……大地震後に見た「都内予想外の光景」
本誌カメラマンが地震直後の都内各地に飛んだ
3月16日夜11時半すぎ、本誌カメラマンが首都高速を走っていると、妙な違和感を抱いた。風か、なにかの振動かと思っていたところ、高速の案内板に「地震発生」という表示が出る。
宮城県、福島県などで震度6強を観測した、マグニチュード7・4の地震だった。すぐに王子南インターチェンジから高速を降り、都内の各地に向かった。王子駅前は特に異変はなかったが、上野方面に走っていると、急に前方が真っ暗になっていた。上野駅からすぐの「仲町通り」は飲食店やキャバクラが立ち並ぶエリアだが、大半の店やビルが停電している。
ニュースを確認すると、都内で約70万軒が停電したという。停電になって店にいられなくなったのか、キャバクラやクラブから出ていく客の姿があった。真っ暗な通りの前で、クラブのママやホステスが客を見送るという不思議な光景が広がっていた。
田端のあたりに移動すると、真っ暗なローソンに行列ができていた。懐中電灯や買い物客のスマホの明かりだけで営業中のようで、夫妻らしき2人の店員が忙しそうに働いている。店員に話を聞いた。
「レジは止まってしまって使えないんです。ATMもダメです。ただ、これが使えているので、値段を出して、現金精算だけですね」
バーコードのスキャナー単体は電池駆動のため、商品の読み取りがかろうじて可能なのだという。辺り一帯は広い範囲で停電していて、開いている店に食料や懐中電灯などを購入しようとする客がつめかけていた。
再び上野に戻ると、ビルの前に消防隊員や警官が集まっている。周囲にいた客引きの男性に聞くと、こう答えた。
「どうやらスタッフさんが1人エレベーターに閉じ込められているみたいです。もう2時間以上もそのままになっています」
消防隊員が作業をしていたが、真っ暗闇の中での作業とあって、難航しているようだった。
午前2時すぎには都内の停電も徐々に復旧し始めた。しかし、北区・浮間の交差点では消えてしまった信号がなかなかつかない。一帯の停電が復旧しても信号機だけは点灯しなかったので、警察官が誘導灯を手に、歩行者や車などをさばいていた。
今回の大規模停電では、「ここは真っ暗なのに、少し先は電気が点いている」というような場所がいくつも見られた。電気の点いている場所ではいつもの日常が続き、停電したところでは混乱が起きていて、まさに「明と暗」そのものだった。
- 撮影:結束武郎