『星野リゾート リゾナーレ熱海』総支配人が見た新しい家族旅行 | FRIDAYデジタル

『星野リゾート リゾナーレ熱海』総支配人が見た新しい家族旅行

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

終わりの見えないコロナ禍。大打撃を受ける観光業界にありながら、柔軟かつ迅速な対応で新たな旅のかたちを提案し続けているのが星野リゾートだ。

2月25日には、東京・赤坂の一等地に都市型の観光ホテルの『OMO3東京赤坂 by 星野リゾート』をオープン。2021年から2022年までに国内外で9施設を開業するという、逆風をものともしない積極的な事業展開に注目が集まっている。

そんな同グループの攻めの姿勢を象徴する施設のひとつが『星野リゾート リゾナーレ熱海』だ。

JR熱海駅から車でおよそ20分の高台に位置する『星野リゾート リゾナーレ熱海』。エントランスからは市街地と花火大会で有名な熱海湾が一望できる。

ここは、2020年、最初の緊急事態宣言により一時クローズしたビュッフェを、わずか40日ほどでリニューアル。『新ノーマルビュッフェ』と名を改め、最高水準の感染対策を実装し再開するなど、驚くべきスピード感で”withコロナ”のサービスを実現している。

同施設総支配人の福井ゆう子氏に、コロナ禍におけるサービスの変遷について話を聞いた。(以下、「」はすべて福井氏)

”倒産確率”の明示で、覚醒する従業員たち

「初めて緊急事態宣言宣言が発令された2020年の4月前後には、お客様が前年と比べておよそ8割もいなくなりました。もちろん見たことのない落ち幅です。

これからいったいどうなるのか、これからもっと大変なことになるのか。それがまったくわからない。私に限らずおそらく多くの従業員が感じていたことだと思います。

そんな時、代表の星野佳路(よしはる)が社内に向けて”倒産確率”を発表しました」

”倒産確率”。後にいくつものメディアで取り上げられることになる刺激的なこの指標は、星野リゾート各施設の予約数や財務の状況など複数の数値をもとに算出された同社独自のデータである。

会社が実際に抱えるリスクを具体的な数値として提示する。それにより従業員の意識は変わっていったという。

「ただただ漠然とした不安を抱えている状況がある意味一番つらいのかもしれません。それよりも、どんなに厳しい現状であっても、それを明確に把握したほうが腹をくくることができる。今がドン底だったら、ここから登っていくしかない。じゃあそのためにどうしたらいいのかと、切り替えることができました」

現在のビュッフェの様子。料理を覆うように設置されているアクリルカバーの高さや形状は、チームの地道な検証によって設計された。

リゾナーレ熱海がビュッフェ始めたのは開業した2011年。ファミリーでの利用が多いリゾナーレ熱海にとってビュッフェはリゾナーレ熱海の象徴のひとつといってもいい看板サービスである。コロナウイルスの猛威の前には、その看板すら降ろさざるを得なかったが、現場の声が再開への糸口を作っていく。

「感染拡大防止のため、ビュッフェが全面クローズとなったのが2020年5月1日。やむを得ないことでした。しかしクローズして早々に現場スタッフ、特にお客様からのご予約を承るスタッフから『ビュッフェの再開は難しいのか』という声がすぐにあがってきました。

記録が残っているのですが、お客様からご予約を承るメンバーから、社全体に話があがったのが5月18日。その後、代表も含めてビュッフェが再開できないか会議されたのは5月21日のことでした」

なんと現場から意見があがってわずか3日後には全社会議の議題に。その後の展開も早かった。

「5月23日、とにかくやってみようということでメンバーが集まり始めました。
私たちは”フラット”という言葉の使い方をしていますが、役職やブランドも関係なく、必要な時はその瞬間に連絡を取り合うという文化があります。それがこのスピード感につながっているのかなと思います」

リゾナーレ熱海のスタッフに星野リゾートの他のスタッフも加わり、コロナ禍でも安全安心に楽しんでもらえるビュッフェのスタイルが思案されていく。

しかしそれはまさに手探り、試行錯誤の連続。手本もなにもないところからのスタートだった。

「どこよりも先駆けて再開を検討し始めたので、モデルケースなんてありません。たとえば料理の入った大皿の上をアクリルカバーで覆うとする。でもどのような形状にしたら飛沫を防ぎつつ使いやすいものになるのか、当時は正解がありませんでした。大人の平均身長のデータを使って効果的な位置や形など、スタッフ一人ひとりが想定しうることをひとつひとつ、慎重に検証を重ねて、最適なものを模索していきました」

前例のない取り組みの連続。反対意見は出なかったのだろうか。

「お客様からの声に応える、ということでみんな貪欲に取り組みました。確かにリスクがゼロとは言い切れません。ただ、リスクがあるから再開に反対ではなく、どうやって克服しよう、どう向き合っていこうと、われわれは議論を重ねました」

こうして、利用者を宿泊者に限る、テーブルや椅子などに抗ウイルス効果のあるコーティングを施す、など、具体的かつ様々な対策を練り上げていく。

そして迎えた6月12日。ついにリゾナーレ熱海でビュッフェ再開が実現したのだった。現場からの提案から1ヵ月足らずという驚きのスピード感である。そして7月1日には星野リゾート全施設での本格再開につながっていくのであった。

「お客様には想像以上に喜んでもらえましたし、予約自体も徐々に回復していく実感がありました。また、withコロナの取り組みはビュッフェだけではありません。同時期には大浴場の混雑率をアプリで表示するシステム開発も進め、密の回避も実現させています」

大浴場の3密回避のためアプリを開発。これもなんと2020年6月にリリースされている。

こうして安心と安全を担保したリゾナーレ熱海は次のステップへ進んでいく。顧客ニーズにこたえた、新たなプランの創出だ。

「星野リゾートのなかで、熱海含め全国で5ヵ所ある『リゾナーレ』ブランドのコンセプトは、『大人のためのファミリーリゾート』です。多くのファミリーリゾートはどうしてもお子さまが主役になりがちですが、私たちはお子さまはもちろんのこと、大人のお客さまにも楽しんでリラックスしていただきたい。大人の方が楽しむことを諦めない、そんな思いでプランを設計しています」

そんな思いのなかで生まれたのが、祖父母、夫婦、子どもが一緒に過ごす”三世代みずいらず旅”だ。

「三世代旅は2018年頃から観光業界のトレンドになっていました。リゾナーレ熱海もそれに応え、当時から大人6人が泊まれる部屋をつくり、三世代向けのプランもご用意しています。そんななか、コロナ禍により友人と旅行するのは難しいけれど、家族や親戚とならいいかもね、という声が増え、三世代旅のニーズがますます顕著になってきました。

おじいちゃんやおばあちゃんとお孫さんが再会するということも、これまで以上に貴重なことです。そんな大切な機会により充実した時間を過ごしていただくため、”三世代みずいらず旅”をパワーアップさせました」

同プランは人気を博し、部屋の予約は現在でも早い段階で埋まっていく状況だ。これには熱海が、東日本と西日本のおよそ中間地点にあることも寄与している。たとえば関西や九州などの西日本出身で、現在は東京などの東日本で暮らす現役世代が、両親と孫の”再会の地”として、熱海を選ぶ。そんなことが増えているのだという。

そんな折、福井総支配人はこれまでになかった”ある光景”を目にするようになっていく。

「離れていたご家族同士が、ホテルのエントランスやロビーで、いままさに再会するという瞬間を目にすることが本当に増えたんです。きっとこれまでは空港や駅で集合していたことを、少しでも人との接触を避けるためにそうされるようになったのだと思います。

初めてそんな光景を目にしたときは本当に衝撃でした。コロナさえなければ、もっと頻繁に会っていたであろう、おじいちゃんやおばあちゃんとお孫さんが、本当に久しぶりに目の前で抱き合ったりされているわけですから。

いまでも日々、そうした光景を見るのですが、本当に微笑ましいの一言です。お見送りの時もそう。シャトルバスに乗って去っていくおじいちゃんやおばあちゃんを、お孫さんたちがずっと手を振って見送っている光景なんかは何度見ても胸にきます」

徹底したお客様ファーストの精神でつくりあげた安心安全の空間で、家族の物語が紡がれている。

Photo Gallery11

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事