犯罪学者が警告…!「日本の公衆トイレは世界一危険かもしれない」 | FRIDAYデジタル

犯罪学者が警告…!「日本の公衆トイレは世界一危険かもしれない」

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男子トイレと女子トイレの入り口は、離して作るのが世界の常識だが…

「日本のトイレはグローバルスタンダードでは考えられない。欧米をはじめ、アジアでもアフリカでもグローバルスタンダードに基づいて作られているのに、日本はそうではない。世界一危険と言っても過言ではありません。日本の常識は、世界の非常識です」

怒りを含みながら、こう言うのは、立正大学で犯罪学を教える小宮信夫教授。

一見、どこにでもあるような公衆トイレだけど…

日本の公衆トイレには、「入り口が一つ、男子トイレと女子トイレが左右にあり、中央に多目的トイレがあるスタイル」か、「手前に女子トイレ、次に多目的トイレ、いちばん奥に男子トイレ」というスタイルが多いが、

「トイレの犯罪でいちばん多いのは、女性の後ろからついていって、多目的トイレに連れ込むというパターン。たとえば公園で犯人がベンチに座って物色している。そこへ女の子が一人でトイレに行く。そのあとをついていって、事件が起こるわけです」(小宮信夫氏 以下同)

そんな事件が起こらないよう、男女のトイレの入り口はできるだけ離し、多目的トイレは男女のトイレの中にそれぞれ設けることがグローバルスタンダードになっていると言う。

「入り口が一つだったら、後ろから男性がついてきても、何も違和感を感じない。一方、入り口を離しておけば、女性の後ろから男性がついてきたらおかしいと思うわけです。トイレを利用しようとする女性だけでなく、周りの人もおかしいと思う。犯行動機がバレてしまうので、トイレで犯行に及ぼうとは思わないようになります」

ニカラグアのトイレ。女子トイレと男子トイレの入り口が離れ、車いす対応トイレは男女それぞれのトイレの中に設置されている
海外でよく見かけるドアの下部が開いたトイレ。個室に連れ込まれても、2人以上の足が見えれば、犯罪が行われている可能性があると外からわかる(写真:アフロ)

犯罪者をいくら罰しても「環境を整えなければ」犯罪は減らない

不幸にもそういう事件が起こった場合、日本では犯人が罰せられるだけだ。しかし、海外では犯人が罰せられるのはもちろんだが、そのトイレを管理している自治体や企業が責任を問われると言う。

「イギリスでは1998年に『犯罪および秩序違反法』という法律ができて、その17条に、『地方自治体は、ありとあらゆる施策において犯罪防止を考慮しなくてはならない』と規定されています。たとえば自治体が公園を作って、そこで犯罪が起きたときには、被害者は自治体に公園設計に関する議事録の開示請求をして、犯罪に対して何も議論をしていなかったとわかった場合は、自治体に何億円もの賠償金を請求できるんです」

イギリスでは犯罪の予防は警察というより、地方自治体の仕事と考えられていると言う。

そうした法律が作られたのには2つ理由がある。

一つは、被害者救済のため。

「犯罪者をいくら罰しても被害者に賠償金が支払われる保証はない。管理者を相手にすれば補償が受けられるからです」

もう一つは、同じような事件を起こさせないため。

「犯罪者を罰することで、もしかしたらその人は二度と犯罪を起こさないかもしれない。けれど、別の人によって再び同じような犯罪が起きる可能性は残る。それを防ぐためには犯罪が起きにくい環境を作らなくてはいけないというメッセージにもなるんです。 

ところが日本には、〝犯罪を誘発する場所を減らす〟という発想がない。犯罪が起きたら、犯人を罰するだけですべてを終わらせてしまうんです」

2011年、スーパーマーケットで一人でトイレに入った3歳の女の子が殺されるという事件があった。このときも世間が注目したのは犯人だけ。 

「日本にはイギリスのような法律はありませんが、建物の瑕疵や安全配慮義務といったルールはあるので、被害者が設置者などの責任を追及しようと思えばできるんです」

実際、設置者の管理責任が認められた例もある。2001年6月に起こった大阪教育大付属池田小学校事件だ。開け放してある校門から入り、2年生の3教室に次々に侵入して、児童8人を殺害し、教員を含む15人に重軽傷を負わせた。この事件では裁判にはならなかったが、大学側が保護者に賠償金を支払っている。

「このように管理責任を認めた事例が日本でもあるんです。でも、安全を確保する責任は施設の所有者や管理者にもあるという発想がないのか、被害者は泣き寝入りしています。 

海外では、心理的・物理的に犯罪を行い難い環境を作り、犯罪の機会をなくすことに力点を置く〝犯罪機会論〝に基づいて、防犯対策をすることが主流ですが、日本では、犯罪者の異常な性格や劣悪な環境などに犯罪の原因を求める〝犯罪原因論〝がいまだに主流を占めているんです。 

よく駅や電車内で『不審な人を見かけたら連絡してください』というようなアナウンスがされたり、ステッカーが貼られたりしていますし、小さい子に『あやしい人についていったらダメ』などと注意しますが、見ただけで犯罪者かどうかはわからない。なので、海外では『不審者』という言葉は使いません。犯罪を生み出す環境をなくすことに集中しているんです」 

女子殺害事件が起こった熊本のスーパーマーケットのトイレ。このトイレは男子トイレがいちばん奥にあるが、女子トイレを奥にすれば、男性がそこまで後ろからついてくることができなくなるので、女性にとっては安全になる
女子殺害事件が起こった熊本のスーパーマーケットのトイレ。
韓国のトイレ。男子トイレと女子トイレの入り口が離れ、男女別に多目的トイレが設けられている。女性トイレは奥にあるので、男性は尾行を中止せざるを得ない

設計コンペティションで選ばれたトイレで犯罪が

それにしても、なぜ日本はグローバルスタンダードに従おうと思わないのか?

「日本は安全だという勘違いでしょうね。法務省の『犯罪被害実態調査』の結果をしっかり見てほしいです。これは、警察へ被害届を出さなかった犯罪もカバーしているので、毎年発表される警察統計よりも、実態を正確にとらえています。

たとえば、性的事件の8割以上は、被害届が出されていないので、警察は認知できていません」

トイレ自体は、さまざまな工夫がなされ進化している。サービスエリアにあるトイレの中には、センサーで忘れ物があることを教えてくれるトイレや、疲労度を測定してくれるトイレもあるというから驚きだ。

最近は建築家が手がけたおしゃれなトイレもたくさん登場している。

「トイレ自体は進化しているんでしょう。けれど、防犯対策はお粗末です。犯罪者がどう物色し、どう接触し、どう逃走するかをシミュレーションして、犯罪がやりにくい状況を作る『防犯環境設計』と呼ばれるデザイン手法を知らないのではないでしょうか」

そういえば、2021年に性犯罪が起きた大井町の公衆トイレも品川区の設計コンペティションで選ばれたトイレだった。

「デザインを優先して犯罪を誘発してしまった典型的な例です。ロンドン芸術大学では、盗まれにくい自転車など、デザインによって犯罪を防ごうとしている。いちばん大切なのは安全。それを最優先に考えた上でデザインしていく。その順番でなければ犯罪はなくなりません」 

大井町の公衆トイレ。「トイレが歩道上にあるので、通行を装って尾行すれば気づかれない。防犯カメラがあっても、性犯罪の届出率が1割程度だと犯罪者は知っているので、大きな抑止力にはならない」と小宮氏は言う(撮影:結束武郎)
大井町の公衆トイレ。「入り口が線路側にあるので、連れ込まれる瞬間を目撃されにくい。しかも、男女が分離していない共用トイレなので、異性に尾行された人も違和感を覚えず、周囲の人も不自然に思わない」と小宮氏(撮影:結束武郎)

小宮信夫 立正大学教授(犯罪学)。社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。本田技研工業情報システム部、国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。第2種情報処理技術者(経済産業省)。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。

代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)、『犯罪は予測できる』(新潮新書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材、全国各地での講演も多数。

HP・YouTube チャンネル「小宮信夫の犯罪学の部屋」はコチラ

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  • 取材・文中川いづみ写真提供小宮信夫

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