初日から4連敗…大関陥落危機の正代「不祥事退職の師匠から金言」
今場所、初めて応じたオンライン取材では思わず本音が漏れた。
「(フーッと大きく息を吐き)とりあえず、ホッとしています」
3月場所5日目となった3月17日、前頭3枚目の阿武咲を上手投げで退けた大関・正代(30)は、ようやく初白星をあげ一息つけたようだ。
だが、厳しい状況は変わらない。カド番で迎えた今場所は、覇気なく初日から4連敗。カド番大関の4連敗発進は、92年11月場所の霧島以来ワーストタイの不名誉な記録だ。正代が、大関降格危機にあるのは間違いない(霧島は8日目から休場し翌場所に降格)。
「上半身と下半身が、バラバラに動いている印象を受けます。初場所後に新型コロナウイルスに感染し、何もできない期間が10日間ほど続き、体力が落ちているのが一因でしょう。本人はオンライン取材で、こう答えています。『(浮上の)キッカケが掴めず、モチベーションが下がっていました。(心身が)噛み合っていない。目に見えて『ここが悪い』という部分は、わからない。探り探りですね』と」(相撲協会関係者)
大きかった先代師匠の存在
原因は他にもある。師匠が変わったことも、正代の心理状態に影響しているようだ。
「正代をスカウトしたのは、先代の時津風親方(元前頭・時津風)です。もともと正代は、大学(東京農業大学)で相撲を辞めようと考えていたとか。しかし農大の先輩である先代が、馬力の強い正代の相撲に惚れ込み熱心に勧誘。部屋に入門してからも、公私に的確なアドバイスをしていたそうです。
しかし先代は、昨年1月に『週刊文春』の報道でコロナ禍に麻雀に興じ風俗店に通っていたことが発覚。処分を受け、相撲協会を去ることになりました。それからです。正代の調子がハッキリと落ちたのは。信頼する師匠がいなくなり、モチベーションが下がったのかもしれません。正代はマジメで、ちょっとしたことでネガティブになる部分がありますからね」(スポーツ紙担当記者)
大関在位9場所目の正代。どうすれば復活できるのだろう。
「荒磯親方(元横綱・稀勢の里)やNHK解説者の舞の海は、今の相撲スタイルを変えるべきだと話しています。胸から当たってはダメだと。現在の力士は、身体が大きくなり力が強い。まともに当たる相撲では、勢いを止められてしまうという理屈です」(同前)
では、正代が信頼する先代師匠はどう見ているのだろう。相撲協会を退職した、元時津風親方が話す。
「ボクの意見は違います。正代は胸から当たる相撲で、大関まで昇進したんでしょう。だったらそのスタイルに磨きをかけるべきです。自分のスタイルは、簡単に変えられません。ただ今の正代は上体が高く、馬力が薄れている印象を受けます。コロナの影響などで、稽古不足なのでしょう。もう1cm腰を低くするだけで、強く踏み込めるようになると思うのですが……。
本人に直接アドバイス? 退職したボクに忠告する資格はありませんよ。たとえアドバイスできても、場所中なので戸惑わせるだけ。『ガンバレよ』という気持ちで、遠くから応援するしかありません」
先代からの厳しくも温かい金言は、悩める大関を奮い立たせることができるだろうか。
写真:共同通信社