「ビールは買ったら飲むまで1日置いたほうがいい」その理由 | FRIDAYデジタル

「ビールは買ったら飲むまで1日置いたほうがいい」その理由

国際ビール審査員『ビアジャッジ』の資格を持つ佐藤翔平氏が推す美味しい飲み方の奥義

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
写真提供:佐藤翔平

皆様は買ってきたビールをいつお飲みになるだろうか?仕事帰りに買ってきたものをそのままプシュッと、あるいは1〜2時間冷蔵庫に入れたのち、晩酌や風呂上がりにグビッと喉を鳴らすことが多いのではなかろうか。つまりは「買った当日」に「美味しい」ビールを堪能している方がほとんどだと思う。

ちなみに私は、買ってきたビールはその日には基本的には飲まない。ビールを「1日置いてから飲むとより美味しくなる」と知ってから、その味わいの虜になってしまっているからだ。

着想は「ワイン」のセミナーから

なぜビールは1日置いたほうがより美味しくなるのか、それには様々な理由がある。

一つ目は「ビールをしっかり芯まで冷やすこと」ができる。例えば、350mlの缶ビールを買ってきても、1〜2時間冷蔵庫に入れただけでは中心部まで冷えきらないことが多い。大体6時間ほど入れておくと、ビール全体が冷蔵庫の設定温度(一般的には6〜8℃)まで冷やすことができ、これは日本の大手ビール会社の淡色ラガービールを飲むときの適温と言われている。

それなら、6時間待つだけでいいのでは?と思うかもしれない。しかし重要なのは、ビールは「炭酸飲料」だということだ。買ってきたビールは、少なからず帰宅までにバッグの中でゆさゆさ揺れているはずである。振られたコーラを開けると、泡が噴き出してくることがあるのと同様に、ビール内の炭酸ガスも隙あらば液体内から空気中に出てやろうと意気込んでいるのだ。

つまり、「振動」にも弱い。炭酸ガスが暴れた状態のまま口にすると、大粒でピリピリとした刺激を強く感じたり、炭酸ガスが素早く分離して気の抜けた平坦な味になりやすい状態になっている。炭酸を落ち着かせることで、ガスの粗さがないきれいなのどごしを味わうことができるのが、二つ目の理由である。

落ち着かせるのは、炭酸ガスだけだはない。1日置く理由の三つ目として、「香りも落ち着かせる」ことができる。炭酸ガスが暴れているということは、それによって香気成分が揮散しやすい状態になっている。一見、香りが強く感じられてより良いように思えるが、好ましい香りだけが揮散するわけではない。

特に、大手を代表する淡色のラガービールといったビールは強くなりすぎるとやや飲みづらさを演出してしまう香気成分(オフフレーバーという)も含まれている(欠陥ではなく、製法上この手の種類のビールには感じられることがある香りである)。それらが無駄に目立つのを防いでくれるだけでなく、注いだ際に炭酸ガスとともに香りが飛散することで味わいがどこか物足りなくなってしまうことも防止してくれると筆者は経験上推測している。

私がこれを実践し始めたのは、あるワインのセミナーに参加した際、「ワインを買ってきた当日に飲まない(提供しない)」と講師が仰っていたのを聞いたのがきっかけだった。

理由としては

・ 数日(最低3日)は冷蔵保存してから飲むほうが、味が落ち着く。
・ 不快な香りを容器の上部に集めることができる(分離できる)。

ということで、実際に飲み比べたワインは別物のような味わいがしたのを覚えている。では、ビールの場合も同様の結果が得られるのではないか?と試し始めて上記の結論に達した。

注ぐビールの味わいに定評のあるプロも1日以上の静置を自ら実践。東京・中野にある『麦酒大学』の山本祥三 氏もその一人だ
『麦酒大学』の山本祥三氏は、注ぎ分けによって1つのビールの味わいを何通りにも変化させ、お客様に提供している

実際、「提供するまでに1日置くこと」を重要視しているビール専門店も少なからず存在している。『ビールスタンド重富(広島)』の重富寛 氏、『麦酒大学(東京・中野)』の山本祥三 氏など、「ビールの注ぎ手」と言われ、その注ぐビールの味わいに定評のある方々も、1日以上の静置を自ら実践し、その重要性を唱えている。

冷蔵庫に静置する時間を変えて飲み比べてもらう実験もしてみた

実際に飲み手に飲んでみてもらった感想も同様の結果だった。

上記の『麦酒大学』の皆様のご協力のもと、一般のお客様にもその違いが分かるのか実験をしたことがある。ラガーとエール、それぞれ同じ銘柄、同じ製造日のビールを複数用意して、3時間、6時間、12時間…というように、冷蔵庫に静置しておく時間を変えて20人ほどに飲み比べてもらった。購入した場所、注ぎ方やグラス、検体を飲む時間など、すべて条件は一緒で行った。結果、下記のような仮説が導き出された。

◆ラガービールを冷蔵庫に置いた時間別の味の違い

◆エールビールを冷蔵庫に置いた時間別の味の違い

参加者20名のポイントを平均したグラフ(+ほど感じる、-ほど感じない)。実際にはポイントだけでなく味わいについてのコメントを頂き、下記の仮説に達した。

◎ラガーは12時間、エールは24時間静置したものから「好ましい」と感じる人が増えた
◎炭酸は、静置時間が長くなるほど強く感じる人が多い
◎「オフフレーバー」は、静置時間が長いものほど気にならないという回答が多かった
◎36時間、48時間以降から、多くの方が違いを感じにくくなったと回答した
◎48時間(2日)以上静置すると、香りや味わいが落ち着きすぎる&炭酸が強すぎるとネガティブな意見も見られた

どうしても各々で異なる「味覚」がかかわる分野なので個人差はあるものの、これらの結果からも、最低でも1日は静置させてから飲むのがベストという考え方は、一定の根拠があると私は思っている。

静置する為の冷蔵庫内のベストポジション

1日置くのにも、ただ冷蔵庫の中にいれておけばよいわけではないことを最後にお伝えしておきたい。ベストポジションが存在する。

まずは、「ドアポケットや冷却ファンの近くなど、振動が加わる付近は避ける」こと。ビールに振動が加わってしまっては、1日置いた意味がなくなってしまう。また、冷蔵庫から取り出す際や、開栓する際もそっと運んで優しく開けることが望ましい。これだけでもビールが劇的に美味しくなっているはずだ。

他にもグラスの扱い方や注ぎ方によってもビールの味わいは変わってしまうのだが、詳しくは先日発売した私の著書『うまいビールが飲みたい! 最高の一杯を見つけるためのメソッド』にも詳細に記されているのでぜひ参照していただければ嬉しい限りである。

  • 取材・文・写真提供佐藤翔平

Photo Gallery6

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事