最高のスターとメジャー絶賛の鈴木誠也「地元の意外な不安要素」
〈日本のスーパースター〉
〈シカゴの救世主〉
5年総額8500万ドル(約101億円)という日本人ルーキー野手の史上最高額でカブスと契約した鈴木誠也(27)に対し、地元シカゴのメディアは絶賛の嵐だ。球団も、最高級の待遇で迎えているという。
「交渉段階でオーナーのトム・リケッツ氏とデビット・ロス監督ら球団幹部が、わざわざ鈴木の滞在していたロサンゼルスを直接訪れたそうです。しかも鈴木がリラックスできるようにと、オフィスではなく高級な日本料理店を予約して。
契約には、成績が悪くても来季いっぱいまでトレードを拒否できる条件が含まれています。専属通訳やトレーナーがつくのは当然。日米間を飛ぶ飛行機のファーストクラス往復チケットも、支給されるそうです」(スポーツ紙担当記者)
東京五輪では「侍ジャパン」の4番を任され、広島の主砲として2度の首位打者に輝いた鈴木への敬意の表れだろう。最高レベルの評価には、昨季メジャーリーグの英雄となった日本人選手の存在も影響している。
「昨季MVPをとった、エンゼルス・大谷翔平です。メジャーでは長らく、日本人野手は長打力がないと思われていた。しかし大谷が両リーグで2番目に多い46本塁打を放ち、急に日本人打者の株が上がりました。毎年30本前後の本塁打を打っている鈴木なら、メジャーでも十分クリーンナップを打てると考えられているんです」(在米ライター)
福留が受けたイヤガラセの中身
絶賛の一方で、不安材料はある。
「右打者ということです。大谷や松井秀喜、イチローなど、メジャーで活躍した野手はみな左打ち。日本人の右打ち野手で、誰もが納得する働きをした選手はいません。井口資仁も城島健司も、日本での実績を考えればメジャーでの成績には物足りなさを感じてしまう。手元で動くムービングファストボールに手こずり、右打ちの鈴木も簡単には打てないのではないでしょうか。
英語をほとんどしゃべれないことも、不安材料の一つです。松井や大谷はなるべく英語で首脳陣や同僚とコミュニケーションをとろうとし、不振の時もチーム内では温かい目で見られていました。英語が話せないと、存在が浮いてしまう恐れがあります。評価が高かったのに、フタを開けてみればまったくダメではなおさらです。鈴木は性格が朴訥としてマジメ。メジャーの選手たちの輪に入れず孤立しなければ良いのですが……」(同前)
注意すべきは、野球技術や英語力だけではない。地元シカゴにも不安要素はある。メジャー事情に詳しい、スポーツジャーナリストの友成那智氏が語る。
「『ブリーチャーバム』と呼ばれる、カブスの熱狂的なファンですよ。彼らの激烈さは、日本の阪神ファン以上です。不調の選手には、スタンドから容赦ない批判を浴びせます。時には選手とトラブルになることも。11年まで在籍したエースのザンブラーノは、激しいヤジを受けスタンドのファンを挑発。謝罪に追い込まれました。
日本人選手にも手厳しい。08年から4年間在籍した福留孝介(現・中日)は、期待されながら打率2割台中盤とイマイチ。レッズへのトレードが決まると、空港では皮肉を込めたこんな管内アナウンスがあったそうです。『ミスター・コウスケ。シンシナティ・レッズへの移籍が決まりました。さっさと搭乗口を向かってください』と。前評判が高かった分、結果を残さなければ鈴木への風当たりも相当強くなると思います」
今のところは、地元で大歓迎されている鈴木。ファンの声援がシーズン中も続くかは、本人のバット次第のようだ。
撮影:香川貴宏