1年半後のラグビーW杯の星・齋藤直人が語る「自信と手応え」 | FRIDAYデジタル

1年半後のラグビーW杯の星・齋藤直人が語る「自信と手応え」

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3月20日のNTTコムシャイニングアークス東京ベイ戦に先発。69-29の快勝に貢献した(写真:アフロ)

ラグビー日本代表として2023年のワールドカップ(W杯)フランス大会での活躍が期待される齋藤直人。現在は東京サントリーサンゴリアスの一員として、国内リーグワン1部で首位争いの只中にある。同じポジションには2019年ラグビーワールドカップで日本代表として活躍した流大がいるが、入部2年目ながらサンゴリアスのゲーム主将も任され、リーグワンで8試合中4試合に先発。それでも齋藤は葛藤の日々だ。昨年の代表の遠征後に首脳陣からある助言を受けた。授かったメッセージを心技体に刻み、自問自答を重ねる。

桐蔭学園、早大で主将を務めた24歳。攻撃の起点にあたるスクラムハーフとしての運動量、パスの精度、テンポの速さ、何より、居残り練習を欠かさぬ真面目な態度が尊ばれた。

所属するサンゴリアスは、国内屈指の選手層を誇る。齋藤と同じポジションにも日本代表の流大がいて、学生シーンの花形とてそう簡単にレギュラーはとれない。

期待される齋藤は、入部1年目の2020年からサンゴリアスのリーダー陣に参加している。さらに2022年に始まったリーグワンの1季目では、日本代表の副将でもある中村亮土主将らの欠場時にゲーム主将を任された。

とはいえ戦力が揃う時は、流と先発の「9番」を争う立場にある。

その構造は、自身が昨季初めて入った日本代表でも変わらない。ゲームに出れば持ち味を発揮してスリリングなアタックを支えた齋藤だが、流が復帰した秋の遠征では、春にあったスターターの機会を一度も得られなかった。

「周りを気にしてしまう自分がいた」

どうすれば、首脳陣の信頼を得られるのだろうか。攻撃を担当するトニー・ブラウンアシスタントコーチの見立ては、一貫していたようだ。

出場機会をうかがっていた遠征中も、遠征後のレビューの折も、齋藤は通称ブラウニーからこう言われ続けていた。

「自分を持て。誰にもならなくていい。お前はお前だ。お前の強みを出して、自信を持ってプレーしろ」

齋藤は高校時代から、独自のラグビーノートをつけている。週末の試合に向けては、その週の序盤に心身両面で思い浮かんだ事象を様々に書き込む。

1日ごとにその内容をそぎ落とし、「週の半ばくらいには、その短い単語を見たら頭にやることが浮かんでくるまでにしたい」。試合当日には、その「単語」をマジックで手の甲に記す。

漠たる感覚を、簡潔な自分の言葉に置き換える。その習慣があるから、ブラウンの言葉を適切に掘り下げられた。

「自信を持ってプレーできる選手じゃないと、チームをドライブできない。そう言われた時は、間違いないと思った。そもそも、自分を信じられていない選手ってどうなんだろう、というところから考え始めました。自分に対して不安を持っている選手が、チームを引っ張れるわけないな、と」

攻撃を引っ張るスクラムハーフの位置にこのポジションに不安を抱えた自分がいたら、周りの仲間はどう思うだろう。もし自分のチームに、おっかなびっくりプレーしているリーダーがいたらどんな気分になるだろう…。アスリートの心のありようについて模索しながら、次第に自らが「自信を持つ」ための方法を確立した。

誰にも似ていない「自分らしさ」を見出し、それを信じることだ。

「どうしても周りを気にしてしまう自分がいたのですが、ブラウニーにそれを言われて以降は『自分の強みって何なんだろう』と考える機会も増えて。チームの決まりを踏まえたうえで思い切りプレーできた時のほうがいいプレーをしていると、自分でも感じる。自分らしさというものを持ってプレーしようと、(2022年以降の)今シーズンは、思っています」

着手したのは、現状の「自分らしさ」の整理である。「ノート」と向き合った末、自らの真骨頂は「テンポ」だと再確認した。

「速いテンポを生み出せること。ここは、自分にしかないものかなと思います。それ以外では、攻守で重要な局面で顔を出せる嗅覚みたいなところも、強み、ですかね。あとはラン。(接点の脇からの)仕掛け(の判断など)はまだまだ伸ばさなきゃいけないですが、ラン自体は苦手だとは思っていない」

書店に向かい、ページをめくった

さらに「強みは何個あってもいい」と、リーグワンのシーズン中は自陣からスペースを割くキック、抜け出した味方を援護してのフィニッシュと、多彩な動きをアピールする。このあたりにも、思い切って「自分らしさ」を出す意図がある。

「練習でフォーカスしてやれていることを本番で躊躇して思い切りやれていない段階で、それはレビューの対象に繋がらない(反省材料にもならない)と、自分では思っている」

グラウンドを離れても、「自信」の源を探る。「しっくりくる言葉」を探すため、マスク着用で書店に出向く。気になったページをぱらぱらとめくり、レジへ向かう。

目当ての一冊をインターネットで買うのとは違う。その過程に意味がありそうだと問われれば、「効率、悪いですよね」と照れたように言う。

具体的な書名などは明かさなかったが、メジャーリーガーの大谷翔平の談話が集まった1冊がお気に入りのようだ。

「しっくりくる言葉、自分に足りないマインド…。それを知っているか知らないかも、大事になるじゃないですか。何かが、自分に繋がるかなと思って、本は読んでいます」

日本大会で活躍した姫野和樹は、国際リーグのスーパーラグビーで持ち前のパワーが通用したことから代表レベルで戦う「自信」を得ている。

齋藤も、2020年に姫野がプレーしたサンウルブズでスーパーラグビーを経験。チームメイトの行動様式をはじめ多くを学んだ。

とはいえブラウンの目からは、姫野が持っているような「自信」を得ているようには映らなかったのだろう。だからこそ遠征後のレビューで、「お前はお前だ」と諭したのではないか。

才能が認められたトッププレーヤーでも、「自信」を掴むのはそう簡単ではない。それでも齋藤は、己に言い聞かせる。

「周りを気にする…。そういう自分は、捨てたと思っています。そこは、本当に、変わらなければいけないことだと思っています」

日本代表は今年6月、次回のW杯開催国となるフランスをこの国に迎える。必要に応じての新陳代謝とプレースタイルのアップデートが期待されるなか、ひと皮むけようともがく齋藤がどんなアクセントをもたらすか。

まずは5月までのリーグワンで「自分らしさ」をフルに発揮し、深い「自信」を作り上げたい。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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