110番通報も発生する首都高「迷惑ランボルギーニ」の実態
年明けから度重なる迷惑行為で首都高速では閉鎖するパーキングエリアも発生
公道での爆音走行や駐車場での空ぶかし、完全に違法な電飾(ストロボライト)、高速道路の休憩施設で大型車スペースを占拠したり一方通行を逆走したり……。「令和の暴走族」と言われる改造ランボルギーニの悪行が近年、目立っている。
ランボルギーニといえば、クルマ好き、スポーツカー好きにとって憧れのスーパーカーだった。しかし近年は善良なランボオーナーから嘆きの声が聞かれる。
「まるで暴走族。最近はオーナーとしての誇りも皆無で、不正改造と派手な外観で注目を集めたいだけの人たちが好んで乗るクルマになってしまった」
ランボルギーニを中心とするスーパーカー軍団の悪行によって高速道路の休憩施設もたびたび閉鎖されている。直近では2月18日の夜9時過ぎから翌朝午前4時半頃まで首都高速の大黒パーキングエリアが閉鎖された。この時、閉鎖を知らせる神奈川県警察高速道路交通警察隊・大黒分駐所の警察官は、
「湾岸線を走っている時から110番通報が相次いでいました。迷惑な運転手さんのせいで大黒PAは閉鎖します」
「ランボルギーニは帰りなさい。逆走はできませんよ!」
などなど、強い口調で警告を行っていた。その場に居合わせたパーキングエリアの使用者が明かす。
「大型車スペースに堂々と駐車し、通路もふさぐような形で何十台ものランボルギーニが集まっていました。まるで『展示会』でも開いたかのよう。違法駐車や空ぶかしをしていて、とても迷惑でした」
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ランボルギーニ社の社長も激怒

憧れのスーパーカーはなぜ「世間の嫌われ者」になってしまったのだろうか。その理由を3名のオーナーが明かしてくれた。
まず話を聞かせてくれたのは、ランボルギーニ4台を所有する投資家のAさん。自宅が小中学校に近く、静かな住宅街であることから、ランボの出し入れには非常に気を使っているという。そんなAさんは、オーナーの多様化が、品位の低下を招いていると語る。
「昨今、世間に大迷惑を掛けているランボオーナーは、これまでにいなかった層ですね。ビットコインでたまたま利益が出たとか、恋愛関係のマッチングサイト、占いや投資相談などの高額オンラインサロンを運営している人もいますね。お金の儲け方が多様化していますから、若くして大金を手に入れることもできるのでしょう。それで他を威嚇し、目立つことをやってみたくなる。
以前、ランボ社の社長が来日して都内の正規ディーラーを訪れた時、その情報を知った爆音ランボ軍団がディーラーに複数台で乗り付けたそうです。そしたらランボ社の社長が激怒し、『彼らに今後ランボルギーニを売らないでくれ』と言ったとか」
またアヴェンタドールオーナーを務め、昨今のランボ事情に詳しいBさんは、契機となった2020年の“ある事件”について明かしてくれた。
「嫌われ者が増え始めたきっかけは、2020年1月に開催された東京オートサロン会場内での『空ぶかし事件』が発端かと思います。消防法で禁止されている場所で爆音の空ぶかしを行った出展者がいて、それを注意した別の出展者との間でもみ合いになったんです。
様々なメディアで拡散され、オートサロン出入り禁止となったこともあって、こうしたパーキングエリアなどで迷惑行為を行うようになったんだと思います。自分たちが迷惑をかけまくっていることに気づかず、逆にギャラリーを喜ばせている気持ちなのかもしれません。
お金があるからといってやって良いこと、ダメなことをみわけ、世間一般的な常識とモラルを持った行動をして欲しい。迷惑ランボオーナーの年齢層は8割が40代後半~50代前半の方だといいます。いい大人がやることではないでしょう?」
周囲の迷惑も考えない諸々の違法改造や違法行為が増えた背景にはもう一つ別の理由がある。メディアにもたびたび登場し、自身もアヴェンタドールのオーナーを務める『武州鳶』の社長・五島学氏が語る。
「近年は多くのギャラリーがSNSや動画サイトにアップするようにスマホで動画を撮るようになりました。『ふかして!』『音出して!』ってね。サービス精神旺盛なオーナーはついつい反応してしまいます(苦笑)。いまは限られた場所と許可された時間でのみ、空ぶかしをしていい機会を設けるイベントもあります。そういった場を利用するなど、一般の方には迷惑を掛けないように配慮が必要ですね」
誰もが憧れるスーパーカーに戻ってくれることを願うばかりだ。

取材・文:加藤久美子