ウクライナが警告した「プーチンに迫る戦慄の暗殺計画」の深層
ロシア中央銀行の資産凍結、国際的な決済ネットワーク「SWIFT」から主要7銀行を除外、原油輸入禁止、低関税の貿易優遇処置の撤回……。
西欧諸国が、ウクライナへ侵攻したロシアへの経済制裁を強めている。永世中立国のスイスも制裁に参加。多くのロシアの富豪が同国に資産を置いているため、被害の拡大は避けられないだろう。
「ロシア経済は、疲弊の度合いを増しています。国内通貨ルーブルは大暴落。ウクライナ侵攻前は1ドル=70ルーブル台前半だった為替レートが、『SWIFT』からの除外決定以降は同120ルーブルまで下がったんです。その結果、銀行のATM(現金自動支払機)には、連日長蛇の列ができている。4月には、外貨建て国債のデフォルト(債務不履行)になると言われます」(全国紙経済部記者)
経済が破綻すれば、戦争どころではない。国民の生活が成り立たなくなるのだ。
「プーチン大統領を支えているのは、『オリガルヒ』と呼ばれるロシアの新興財閥や資産家たちです。彼らは天然資源や外国との事業をほぼ独占し莫大な利益を得ることで、プーチン大統領に忠誠を誓っています。しかし厳しい経済制裁で、この利益システムが破綻しつつある。『オリガルヒ』の中にはウクライナ侵攻に異議を唱え、プーチン大統領に反発する動きも出ているんです」(同前)
〈暗殺、突発的な死、事故……〉
こうした情報を裏づけるかのように、3月20日にウクライナ国防省の情報総局長が同省のフェイスブックへ衝撃の投稿をした。冒頭には、こう書かれている。
〈暗殺、突発的な死、事故……。ロシアの上層部がプーチン排除の可能性を探している〉
ウクライナ国防省の投稿からの、引用を続ける。
〈ロシア政財界の上層部に、反プーチンのグループが作られている。彼らの目的は、プーチンを権力の座から降ろすこと。ウクライナ侵攻で失われた、西欧諸国との経済的パイプを回復させることだ〉
後継者まで決まっているという。ロシア連邦保安局(FSB)の長官アレクサンドル・ボルトニコフ氏。旧ソ連の諜報機関「KGB」出身で、08年5月から現職にある実力者だ。だが遅々として進まないウクライナ侵攻に焦ったプーチン大統領に責任を押しつけられ、仲たがいしたとされる。
ウクライナ当局が暴露した、プーチン大統領の暗殺計画。はたして実際に起こりうるのだろうか。ロシア情勢に詳しい、筑波大学の中村逸郎教授が語る。
「十分に考えられます。プーチン大統領は、6年ほど前から自身の行動を制御できない病気を患っているといわれる。肉体や精神のバランス感覚を持って、正常な判断ができなくなっている可能性が非常に高いんです。
ロシアを追い詰めようとする欧米憎しの感情が止められず、暴走している恐れがある。20年も権力の座にいるプーチン大統領は、もはや冷静に話を聞く耳を持っていないでしょう」
暴走を繰り返し、国内外で孤立しつつあるプーチン大統領。暗殺情報はウクライナ側が恣意的に流している可能性があるが、もしそれを免れたとしても、このままの地位にとどまり続けるのは不可能ではないか。独裁者の最後の時は迫っているのだろうかーー。
写真:AFP/アフロ