『ドライブ・マイ・カー』快挙に期待!アカデミー賞注目作一挙紹介 | FRIDAYデジタル

『ドライブ・マイ・カー』快挙に期待!アカデミー賞注目作一挙紹介

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『ドライブ・マイ・カー』全国超ロングラン上映中! (C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

日本映画の歴史が変わる――。宣伝文句などでつい使いがちな歯の浮いた表現が、いよいよ現実のものになろうとしている。

日本時間3月28日に開催される第94回アカデミー賞授賞式。濱口竜介監督・西島秀俊主演の『ドライブ・マイ・カー』が、作品賞・監督賞・脚色賞・国際長編映画賞の4部門にノミネートされているのだ。

日本映画の作品賞と脚色賞ノミネートは史上初。「ついにこの日が来たか……」と感慨にふける映画人・映画ファンも多いことだろう。

今回は、その“スゴさ”をノミネート4部門に改めて紹介しつつ、本年度のアカデミー賞の特色についても考えてゆきたい。

”史上初”づくしの「作品賞」

まず日本映画史上初となった「作品賞」について。候補作品を改めて振り返ってみよう。

『ベルファスト』(公開中)
『コーダ あいのうた』(公開中)
『ドント・ルック・アップ』(Netflixで配信中)
『ドライブ・マイ・カー』(公開済み)
『DUNE/デューン 砂の惑星』(公開済み)
『ドリームプラン』(公開中)
『リコリス・ピザ』(7月1日公開)
『ナイトメア・アリー』(公開中)
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(Netflixで配信中)
『ウエスト・サイド・ストーリー』(公開中)

見ての通り、今回のアカデミー賞は授賞式までに『リコリス・ピザ』以外の候補作品をすべて観賞できる。

『ドント・ルック・アップ』『ドライブ・マイ・カー』『DUNE/デューン 砂の惑星』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は自宅観賞も可能で、例年以上に主体的に参加することが可能だ。日本に暮らす人々にとっては、それも今回の特色といえるだろう。

また実は、本年度からアカデミー賞の作品賞候補を10本に固定するという新ルールが適用された(近年は5~10本というざっくりとした括りだった)ため、「より多くの作品にチャンスを与える」という意味合いが強い“初回”でもある。

その観点で行くと、“お初”として話題性が強いのは『ドライブ・マイ・カー』とNetflix作品の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』といえそうだ。

Netflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 Netflixで独占配信中

ジェーン・カンピオン監督、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、『ROMA/ローマ』が持っていた各映画賞の作品賞獲得数を超え、現段階でNetflix史上最多の作品賞獲得作品となっている。

アカデミー賞作品賞を受賞すれば史上初の快挙となり、配信作品と劇場作品の根強い対立関係に変化が訪れることにもなろう。

何より、作品のテーマが「西部劇のルックで、マイノリティや弱者の生きざまを描く」意義深いものになっており、そこにサスペンス要素も加わって非常に完成度が高い。

配信作品という意味では、Netflix作品『ドント・ルック・アップ』やApple TV+作品『コーダ あいのうた』が受賞しても史上初となる。

現時点では『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が作品賞の当確と見られているが、ここに来て『コーダ あいのうた』が全米俳優組合賞の最優秀賞とアメリカ製作者組合賞の劇場用映画賞を続けて受賞。一気に攻勢をかけてきた。さらに、『ベルファスト』の存在も気になるところ。

本作は、『ナイル殺人事件』が公開中の俳優・演出家・監督ケネス・ブラナーの自伝的作品。アイルランドのベルファストを舞台に、プロテスタントの武装集団がカトリック住民を攻撃し、平和な日常が破壊されていく姿を描く。

『ベルファスト』 TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイント他にて全国公開中 Ⓒ2021 Focus Features, LLC.

主人公の少年とその家族は、危険を承知で生まれ育った町に暮らし続けるか、故郷を離れるかの選択を迫られるのだが……。偶然ではあれど、現在のウクライナ情勢と重なって見えてしまう部分もあり、アカデミー会員の心理にどう影響するか、というところだ。

そういった意味では、「分断」のテーマをより強めたスティーヴン・スピルバーグ監督版『ウエスト・サイド・ストーリー』の立ち位置も変化しているかもしれない。

配信作品が目立つ「脚色賞」、史上初3部門ノミネート作に注目の「国際長編映画賞」

次に、「脚色賞」について。そもそも脚色賞とは何ぞや? だが、オリジナルの物語=脚本賞、原作があるもの=脚色賞、という区分になる。

村上春樹の短編集『女のいない男たち』にアントン・チェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』等の要素をミックスさせた『ドライブ・マイ・カー』は後者。ちなみに他の候補作品は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』『コーダ あいのうた』『DUNE/デューン 砂の惑星』『ロスト・ドーター』だ。

『コーダ あいのうた』はフランス映画『エール!』のリメイク作品のため、脚色賞に入る。反対に、実話ベースではあっても『ベルファスト』『ドリームプラン』が脚本賞に入ったのは、原作がないためだ。

『コーダ あいのうた』全国公開中  © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

ここで注目すべきは、配信作品の多さ。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』『ロスト・ドーター』(Netflix)『コーダ あいのうた』(Apple TV+)と過半数が配信作品なのだ。製作したパターンと買い取ったパターンなどの違いはあれど、時代の流れを感じさせる。

また「国際長編映画賞」とは、かつての外国語映画賞のこと。作品賞とのダブルノミネートでいうとメキシコの『ROMA/ローマ』や韓国の『パラサイト 半地下の家族』などがあり、その流れが今回の『ドライブ・マイ・カー』につながる。

上記の作品が映画史に残した功績を考えるに、アメリカでも好成績を収め、英国アカデミー賞でも非英語作品賞(外国語映画賞)に輝いた『ドライブ・マイ・カー』の存在は今後ますます大きくなっていくことだろう。

この部門においては、アニメ映画『FLEE フリー』(6月公開)が長編アニメーション賞・長編ドキュメンタリー賞とトリプルノミネートを果たしている点に注目したい(アカデミー賞史上初)。

『FLEE フリー』 2022年6月 新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国ロードショー

国際長編映画賞・長編アニメーション賞・長編ドキュメンタリー賞ってどういうこと? とお思いの方も多いことだろう。そもそもドキュメンタリーとアニメーションという点が結びつかない。この真相は、本作の成り立ちにある。

『FLEE フリー』はアフガニスタンからデンマークへと亡命した青年が半生を語ったドキュメンタリーで、彼や周囲の人間の安全を守るためにアニメーションという手法をとったものなのだ。その特殊なシチュエーションが、史上初となる3部門ノミネートへとつながったというわけ。

ノミネート常連が勢揃いの「監督賞」

最後に「監督賞」だが、ここにおいては説明は不要だろう。驚くべきは、『ベルファスト』のケネス・ブラナー、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン、『ウエスト・サイド・ストーリー』のスティーヴン・スピルバーグ、『リコリス・ピザ』のポール・トーマス・アンダーソンの全員がアカデミー賞の候補入り経験者であること。

その中に濱口竜介監督が入っている姿を見るにつけ、感慨がこみあげてくるが、彼はキャリア初期の『PASSION』や『ハッピーアワー』から国際的な評価を得ていた。

商業映画デビュー作『寝ても覚めても』がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出。東京藝術大学の恩師である黒沢清監督の『スパイの妻<劇場版>』に共同脚本で参加し、第77回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。

第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『ドライブ・マイ・カー』では日本映画史上初となる脚本賞ほか4部門で受賞した。さらに『偶然と想像』が第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞。

つまり、携わった作品が世界三大映画祭すべてで受賞しているのだ。ここに英国アカデミー賞や日本アカデミー賞での受賞も入ってきているわけで、米国アカデミー賞での快挙は「まさか」というより「ついに」の感覚が強い。

第74回カンヌ国際映画祭で写真撮影に応じる濱口竜介監督(中央)と出演した三浦透子さん(左)、霧島れいかさん=2021年7月、フランス・カンヌ(共同)

以上が、『ドライブ・マイ・カー』がノミネートされたアカデミー賞4部門の簡単な概要だ。波乱が起こる可能性も残されており、受賞結果がどうなるのかは発表を観るまでわからないところだが、個人的に気になるのは“この先”である。

黒沢清・是枝裕和・深田晃司といった国際的に評価される監督を輩出してきたものの、濱口竜介監督に続く作り手をどこまでコンスタントに送り出せるのか、アカデミー賞ノミネートの快挙を単発として終わらせず、“文化”として根付かせられるのかは、日本映画界にいま強く問われているところであろう。

不祥事や諸問題が続々と取り沙汰されている日本映画界が、ここから変わることができるか――。我々観客の“見る目”も含めて、授賞式後も注視していきたい。


『ドライブ・マイ・カー』
全国超ロングラン上映中!
(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

Netflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
Netflixで独占配信中

『ベルファスト』
TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイント他にて全国公開中
Ⓒ2021 Focus Features, LLC.

『コーダ あいのうた』
全国公開中
© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

『FLEE フリー』
2022年6月 新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国ロードショー
© Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション勤務を経て映画ライターへ。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント等幅広く手がける。

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