7人兄弟のサッカー日本代表・浅野拓磨がパン屋を営むワケ | FRIDAYデジタル

7人兄弟のサッカー日本代表・浅野拓磨がパン屋を営むワケ

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
2019年1月、三重県の実家に7兄弟が勢ぞろいしたとき。右から生まれた順番に長男・将輝さん、次男・昇平さん、三男・拓磨、四男・雄也さん、五男・史也さん、六男・快斗さん、長女・小春さん(写真:浅野拓磨のインスタグラム:asatakugramより)

サッカー日本代表は3月24日、アウェーで豪州代表を2-0で下し、7大会連続のワールドカップ出場を決めた。昨年9月にはじまったアジア最終予選で常に招集されてきたMF浅野拓磨(ドイツ・ボーフム)は昨年10月7日のサウジアラビア戦以来の先発出場を果たし、後半19分まで出場。W杯出場を決める勝利に貢献した。

最終予選第4戦目となった昨年10月12日の豪州戦で、相手のオウンゴールを呼び込むシュートを放ち、「負ければ解任」が確実視された森保一監督を救った。浅野がプロ生活をはじめたJリーグ広島時代の恩師とともにW杯出場を決めた浅野は7人兄弟の3男で、故郷の三重県四日市市で高級食パン店を経営するオーナーでもある。店長として現場に立つひとつ上の兄、昇平さんが浅野家の「家族愛」を語った。

後半19分までプレーした浅野(左から2人目)

浅野拓磨が高校時代に汗を流した三重県四日市市に行くと、9人家族が朝食のパンを楽しむイラストが目に飛び込んでくる。浅野がオーナーを務める高級食パン店『朝のらしさ』だ。ひとつ上の兄、昇平さんが店長として毎日、パンを焼いている。

「ある時、拓磨から『晃平兄ちゃん、いっしょにパン屋せえへんか』と言われました。そのとき、私はパンや食品ともまったく関係のない仕事をしていましたが、もともとパン好きだったので、ぜひやってみたいと思いました。たくさんいる兄弟の中でも、私たちはパン好きで、社会人になってからも美味しいパンがあると知るとすぐに買いに行ったり。パンには目がなかったんですよ」(昇平店長)

2002年ごろの兄弟。この時はまだ7番目にあたる長女・小春さんは生まれていない(昇平さん提供)

兄妹7人の大家族。しかも7人目に女の子が生まれるまですべて男だった。子どもたちを学校へ送り出し、最後に自分の朝食としてパンを食べる母親の姿が、浅野の脳裏に焼き付いていた。

「いつも冷めたパンを食べていた母に、温かくてふっくらしたパンを食べさせたい…」

ちょうどその頃、「変な名前の高級食パン店」を国内外に350店舗まで広げ、コロナ禍でも店舗数を広げる「ジャパン・ベーカリー・マーケティング(以下、JBM)」のベーカリープロデューサー・岸本拓也氏と浅野が出会ったことが、おぼろげな願いを形にするきっかけとなった。ドイツ在住の浅野がオーナーとなり、昇平さんが店長としてお店を切り盛りする今の形ができあがった。

三重県内は高級食パン専門店が多い激戦地ともいわれ、『朝のらしさ』がある四日市は周囲に飲食店も多い。『朝のらしさ』という店名はもちろん「浅野家らしさ」という意味である。この地で生き残るために、どんな工夫をしたのだろうか。

「JBMさんに立ち会ってもらい、パン作りや販売などノウハウの特訓をうけました。JBMさんは、その店舗ごとに食パンのレシピを変える手法をとりいれてくれます。そこで、この四日市や菰野町の特産である、鈴鹿山ろくの美味しい牛乳や発酵バターを使うなどして、地元との連携も高めたパン造りを目指しました」(同)

三重・四日市市にある高級食パン店『朝のらしさ」で店長をつとめる浅野の兄、昇平さん。看板は浅野家の食卓をほうふつとさせる

昇平店長も、もともとサッカーのGKだったため、体力には自信があった。朝早く起きて仕込みにかかる。パンをこねるのも得意で、いまでは「(パンの)耳も柔らかいふっくらした甘みのあるパンで、朝のコーヒーにも合うのが『朝のらしさ』のパンの特徴です。この味を全国のファンの皆様にも知ってほしいと思っています」

浅野がプレーを続けるボーフム(ドイツ)とは時差があり、オンラインではさすがに味の確認まではできないが、常にやりとりする兄弟ならではの強いチームワークで1日平均100本のパンを売り上げる。ただ、昨今の小麦粉などの原材料の高騰は頭が痛い。なんとか値上げすることなくこの味を広めようと店長として努力は続く。

味での人気を維持するだけでなく、ネット販売にも力を注ぎ、イベントなどを積極的に行い存在をアピールすることに努めてきた。オーナーの浅野がドイツから一時帰国した時に店に立ってもらったところ、全国各地からファンが訪れた。サッカー選手のオフは短く、実家に滞在できる期間は限られるだろうが、浅野は家族のためになるのであれば一肌脱ぐのだ。

浅野は短いオフの合間を縫って、ドイツから三重に戻ってきたとき、店舗に顔を出した

2020年に『朝のらしさ』をオープンして以来、浅野家にも温かいパンが食卓に並ぶようになった。父・智之さん(56)は現役のトラック運転手として忙しく、浅野のひとつ下の弟、4男・雄也は浅野に続いてJ1広島でプレー。兄弟は国内外に散って活躍しており、『朝のらしさ』に関わっているのは昇平店長と浅野だけだが、昇平店長は焼きたてパンを母・都姉子さんにも食べてもらえるようになったことを喜んでいる。昇平店長がこう明かす。

「仕事の合間に時間があるときに実家に寄ると、母が(ドイツにいる)拓磨と電話している姿をよく見かけます。どうも、拓磨の方からかけてくるようです。試合前は必ずかけているみたいです」

話の中身は定かではないが、浅野にとっては試合でいいプレーをするための「願掛け」なのだろうか。浅野が海外でプレーするようになって6年目。前回2018年のW杯は日本代表からは外れ、予備登録メンバーとしてチームに帯同することを余儀なくされた。今年11月に開催されるカタールW杯に出場することは浅野にとって悲願なのだ。浅野が心折れることなく頑張ってこられたのは、9人家族で育った体内に深く刻まれる家族愛なのだ。

 

■「朝のらしさ」
住所:三重県四日市市日永西3丁目5-33
電話:059-327-7127
営業時間:10:00~19:00 不定休

  • 取材・文・撮影川柳まさ裕

Photo Gallery6

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事