「世界が終わる前にプーチンを捕まえろ!」近田春夫の叫び
『もう、ハイルプーチンってやってる人いるかもよ。』(2月25日)
連日更新される近田春夫さんのtweetが興味深い。そのtweetをもとに、ウクライナ侵攻について話してもらった。

『この発言 プーチン大統領、核兵器の行使を再び示唆「邪魔する者は歴史上で類を見ないほど大きな結果に直面するだろう」 いくらなんでも恐ろし過ぎる。 気が狂ってるよ。ぷうちん。』(2月24日)
三日くらいで完遂するはずだったロシア側のシナリオが、当初とは違うものになってきた。その焦りから「核を使いますよ」と口走ってしまったんですよね。
ウクライナもいっぱい核を持ってたけど「うちはみんなが守ってくれるから」と廃棄したらこういうことになっちゃった。
だとしたら他の国も「ウクライナ失敗したな」と思ってしまうよね。
ロシアだって核を持ってるから、こんなことができるんだよ。本当に人類って脆いものですよね。
『しかしこの誕生日は、一生忘れることはないだろう。気の狂った男が率いる大国が戦争を始めてしまった次の日なのだから。』(2月25日)
ここから先のプーチンの人生は“茨の道”ですよ。
自分一人がひどい目に遭うなら地獄に道連れっていうのは人間誰でも考えることで、要するに無理心中と一緒。身体中にダイナマイトを巻いて立てこもってるテロリストみたいなものじゃない?
今回核が使われなくても、いずれどこかでそうなるだろうということを、みんな改めて実感したんじゃないかな。
ジュールヴェルヌはいい意味で「人が想像できることは、必ず人が実現できる」と言ったけど、ものすごく邪悪なものでも、それが想像できるものであれば人間は作れてしまう。アメリカが原爆を発明しなかったとしても、どこかで絶対作られてますよ。
人間はどういう形にしても滅びる方向にしか進むことはできないし、地球は、あと1万年はもたないかもしれない。けれど、その中で最後の日までの時間をどれだけ長引かせられるかという、そこにエネルギーを注ぐ以外ないと思うんだ。
『たしかに我々が得られる情報や映像が、まったくニュートラルな視点なものではないとは思うが、目に映るウクライナの景色は、リアルなものだ。これを見て、ロシアを擁護しようとする日本人がいるのだろうか?』(3月3日)
起こってしまったことはもう変えようがないから、ここからどうしていけばいいのかを考えていくしかない。
例えば北朝鮮だって、ああやってポンポンとミサイル打ってくるけど、あれは甘噛みみたいなもんで、一応一国のリーダーたる立場にある人間が、この21世紀に、いくらなんでもそういうことはしないだろうという前提だったと思うんですよ。
でも「考えてみたら、それは誰でも核を持っていればできることなんだよな」ってことに今回初めて気付いた。時すでに遅しだけどね。

『かつて日本は第二次大戦で世界を敵に回し、全面降伏をしたのち、こうして復興を遂げた。この経験をロシアに親切に説くことこそ、今この国がやるべき外交なのでは?』(3月11日)
第二次世界大戦は、我慢できずにまんまと開戦してしまった日本が幼すぎただけで、その結果降伏した。
日本が唯一ロシアに教えられるのは「日本はああいう形で完全降伏したけど、なんとかこうやって復興してるんだから、いろいろコツは教えてあげるよ」ってことだと思う。
ただ、あの時代と違って毎日世界中の人が見てるでしょ? これ、そういう状況になるってことに対して想像力は働かなかったんですかねって。そこはホント、謎だよね。
『これからみんなでウラジーミル・プーチンのことをこう呼びませんか? 世界一卑怯な臆病者。あ。世界一臆病な卑怯者のほうがいいかとも。どっちがいいかなぁ。みなさんどうですか?』(3月12日)
今アメリカがNATOと協議しながらとってる作戦が、おそらく最善だろうと思うんですよ。アメリカって戦争のプロだから。
ちょっと前までは、プーチンが次はこう出るだろうとアナウンスしてましたよね。でもある時から予言の数が減ってきた。
情報は入っていて、秘密裏に何か行ってる可能性はなきにしもあらずだなと。
これがトランプだったらぎりぎりのとこで笑って誤魔化してさ、明るい気持ちにさせて終わっちゃうこともあったのかな。ま、今となってはどうでもいい話だけど。ここまでだったらどんだけめちゃくちゃなこと言っても通用するっていう、歩留まりみたいなものに関しては、天才的な判断力があったと思うんだ。

『ちなみに僕はここに些少ではありますが寄付をすることにいたしました』(3月12日)
ある意味ではもう人間のクズの時代に突入してるってことですよ。一つの象徴としてトランプが現れ、今回プーチンが現れるっていう、これはもう連鎖反応だと思いますよ。
コロナが始まったときも、人類は未体験ゾーンに突入したと思ったけど、これから先、もっと想像を絶することが起こるかもしれない。でも、せっかくこうして築いてきた我々の文化が一瞬にして滅びちゃうのは癪だよね。

近田春夫(ちかだ・はるお) ’75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてレコードデビュー。タレント、ラジオDJ、作詞・作曲家、プロデューサーとしても活躍。
’81年にビブラトーンズを結成、’87年には人力ヒップホップバンドのビブラストーンを始動し、日本語ラップシーンの黎明期を支えた。2018年、ソロ名義としては38年ぶりとなるアルバム『超冗談だから』(ビクター)をリリース。近年は元ハルヲフォンのメンバー3人によるバンド「活躍中」、ディスコ×テクノユニット「LUNASUN」を展開。近著に『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(近田春夫・下井草 秀/リトルモア)、『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』(文春新書)などがある。
取材・文:井出千昌