今こそ「ニュース番組とワイドショーを区別すべき」深刻な理由 | FRIDAYデジタル

今こそ「ニュース番組とワイドショーを区別すべき」深刻な理由

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イメージ:アフロ

「そんなに英語は得意ではないが、ウクライナの戦争の正確な情報を得るためにBBCやCNNを頑張って見ている」「ウクライナについてのコメンテーターのコメントを聞きたくないので、スタジオになるとテレビの音声を消している」……私の周囲に実際にこんな人がいる。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、日本のテレビニュースへの信頼感は、残念ながらまた一層低下してしまっているようだ。

なぜこれほどまでに日本のテレビのニュースは信頼されないのだろうか?私は「ニュースとワイドショーがほぼ同一化してしまったこと」がひとつの大きな原因だと見ている。

見分けがつかない「ニュース番組」と「ワイドショー」

ここでひとつあなたに質問したい。テレビをつければ早朝から深夜まで連日「ニュースのような番組」をやっているが、そのうちどの番組がニュースで、どの番組がワイドショーか区別できるだろうか?

各局月〜金帯の代表的な「ニュースのような番組」の名前をここに挙げてみよう。

日本テレビ系列:「Oha!4 NEWS LIVE」「Z I P!」「スッキリ」「ヒルナンデス!」「ミヤネ屋」「news every」「news zero」

TBS系列:「THE TIME」「ひるおび!」「ゴゴスマ」「Nスタ」「news23」

フジテレビ系列:「めざましテレビ」「めざまし8」「バイキングMORE」「イット!」「FNN Live News α」

テレビ朝日系列:「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」「大下容子ワイド!スクランブル」「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」

テレビ東京系列:「モーサテ」「昼サテ」「ゆうがたサテライト」「WBS」

答えを申し上げると、テレビ東京系列はすべてニュース番組だが、他の系列でニュース番組はこの中では「news every」「news zero」「Nスタ」「news23」「イット!」「FNN Live News α」「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」の8番組のみ。あとはいわゆるワイドショーだ。

言い方を変えると「夕方と夜のみ」がニュース番組で、「朝」「昼」「午後」にやっている番組は原則ワイドショー。間に短い定時ニュースが放送されているだけなのだ。

私が言いたい「ニュースとワイドショーが同一化してしまっている」という現状がずいぶんお分かりいただけたのではないだろうか。

一番分かりやすい例で見てみよう。「ワイドショーとニュースが連続した時間帯で放送している」ということでセレクトすると、日本テレビ系列の「ミヤネ屋」と「news every」、そしてTBS系列の「ゴゴスマ」と「Nスタ」がそうだ。

「ミヤネ屋」と「news every」に何か違いを感じることが出来るだろうか?「ゴゴスマ」と「Nスタ」は何か違うだろうか?多分ほとんどの人は「ほぼ同じような番組だ」と感じるはずだ。そう感じても不思議はないほどこれらの番組は似通った印象だと思う。

しかし、実は「制作体制」からこれらの番組を見てみると、全く違う番組であることがよく分かる。詳しく説明してみよう。ウクライナのニュースを制作する場合を例に取ると、その違いがとてもよく分かると思う。

根本的な「制作体制」の違い

ワイドショー番組である「ミヤネ屋」と「ゴゴスマ」を制作しているのは、実はニュースを制作する部署ではない。しかも、実はこの2つの番組を制作しているのは東京の放送局ではない。「ミヤネ屋」は大阪の読売テレビ、「ゴゴスマ」は名古屋のCBCが制作している。

そのVTRの「原材料」になっている「ウクライナのニュース映像」は、自分たちではほぼ一切入手していない。東京にある日本テレビやTBSの報道局が取材したものや、外国の放送局などから東京の報道が購入したものを「ください」とお願いして、東京から送ってもらって使っている。

最新の映像を「東京のニュースより早く使用する」ことはほぼ難しい。東京のニュース番組で放送された映像を見て、「いついつのニュースで使っていたあの映像を使いたいので許可をください」とお願いしないと映像はもらえない。

これは、地方局が制作するワイドショーだけではなく、東京キー局が制作するワイドショーでも基本は同じことだ。ニュースで流れた映像を見て、ワイドショーのスタッフが「あれを使いたいです」と使用許可申請をして、OKが出て初めて映像が貸し出されるのだ。

だから、ワイドショーの中で使用されるウクライナの映像は、原則的には「ニュース番組ほど最新ではなく、少し前のもの」だと言っていい。(ただし、ワイドショーの中で、「報道フロアーから最新のニュースをお伝えします」と言ってニュースフロアーが出てくるコーナーの内容は、ニュースのスタッフが作っているから最新だ。)

一方、「Nスタ」と「news every」は東京の報道が制作している。ニュース映像は原則的にすべて海外特派員が取材した最新のものと、外国の放送局や通信社などが配信した最新のものを使っている。すべて「その時点で日本で入手可能な最新の映像である」と言っていい。

さらに同じことは「原稿」や「情報」に関しても言える。原則的なルールとして、報道の記者は「ニュース番組に要求されたら原稿を書かなければならないし、記者レポートや中継をしなければならない」決まりになっている。

しかし、ワイドショー番組には原稿を書く義務はないし、記者レポートや中継をする必要は一切ない。

だから、原則的に「ミヤネ屋」や「ゴゴスマ」にウクライナから記者が生中継で登場することはない。原稿も、「ミヤネ屋」や「ゴゴスマ」のために報道記者が書くことは原則ない。ニュース番組向けに書かれた原稿を、番組側でお願いしてもらってきて、それをワイドショーのディレクターが書き直して使っている。

しかも、「ミヤネ屋」や「ゴゴスマ」を制作している大阪・名古屋の放送局の報道には、国際ニュースを担当する部署はない。各系列とも、国際ニュースを担当する「外報部」「外信部」などと呼ばれる部署は、東京キー局にしかないのだ。

ただ、大阪や名古屋の放送局も、海外の支局を1つか2つくらいは持っている。たとえば「上海支局とパリ支局に1人ずつ」とか特派員を出している。だから、大阪や名古屋にも、海外取材経験のある記者が数名はいる。ただし、国際ニュースを日々出している専門家はいないから、海外ニュースの情報源との人脈はほぼない。

何か分からないことがあっても、東京に聞かないと教えてもらえないし、原則そんなに国際ニュースを制作することには慣れていない。むしろ不得意であると言って良いと思う。番組のディレクターも、名古屋や大阪在住の人たちだから、国際ニュースを扱った経験は、東京在住のディレクターに比べれば残念ながら乏しい。

何を言いたいかというと、見た感じではほぼ同じに思えるニュース番組とワイドショーは、残念ながら実は全然違うということだ。「似て非なるもの」であることをちゃんと認識していただくだけで、今後どの番組を見るかを選択する上で役に立つと思う。

ワイドショーは、自分たちが「得意」なことを活かすべき

上で説明したように、ニュース番組に比べて、「正確で最新の情報を取材すること」についてはワイドショーはどうしても劣らざるを得ない。

国際ニュースに関して基礎知識を持つスタッフも、ニュース番組に比べれば少なく、番組予算も一般的にニュース番組に比べて少ない。だからその分、時間を埋めるためにはスタジオでの「パネル解説」や「コメンテーターたちの感想」そして「専門家とリモートで繋いでの生解説」に頼らざるを得なくなってくる。

本来的にワイドショー番組は、「生活に密着した、身近な話題やニュース」を扱うのが得意だ。そうした「身近な話題」についてスタジオでトークするのは、それはそれで大切なことだ。

だからスタジオにいるレギュラーコメンテーターも、それほど「ウクライナやロシア」「戦争」などに関する専門的知識を持ち合わせていない顔ぶれになっている場合が多い。それでもその人たちが「スタジオにいるからには、何かコメントせざるを得ない」状況に追い込まれている。

探してきた「専門家」も、急遽お願いしてなんとか確保しているというのが実態ではなかろうか。1人や2人の専門家の情報に頼り切って番組制作を行えば、どうしても内容に偏りが出てきてしまう。専門家とはいえそれぞれの意見や知識には偏りがあるからだ。

いっそ、ワイドショー番組は戦争などの「不得意」な話題は無理して扱わず、ニュース番組に任せてはどうだろうか、と私は思う。その分自分達が得意な「生活に密着した、身近な話題やニュース」に特化すればいいのではないか。

疫病が流行し、天災も頻繁に起こり、加えて戦争まで勃発してしまった今の世界は、まさに「人類の危機」であると言えると思う。こんな時だからこそ、「生活に密着した、身近な話題やニュース」をちゃんと扱うことも、視聴者にとっては大切なのではないか。

朝から晩まで、ずっとウクライナ…というのでは息が詰まるという人も多いだろう。芸能ニュースや、ご近所トラブル、生活情報も「見たい」と思う人が、こんなご時世だからこそ多い気がするのだ。

ニュースの「ワイドショー化」を推し進めてきたテレビ局

そして、ニュースにも実は大きな問題があると私は思う。ワイドショーがだんだんニュース化していくのと歩調を合わせて、ニュースもだんだんワイドショー化しているからだ。

いま夕方の各局のニュースを見ると、「話題の新製品」とか「人気グルメ」とか、「本当にこれニュースなの?ワイドショーじゃないの?」という内容の特集がよく放送されている。そしてニュース番組にもタレントや、「この人どれだけニュースを語れるの?」と心配になってしまうような文化人がコメンテーターとしてよく出演している。

かつてニュース番組は「そのニュースに関する専門家」か「ジャーナリスト」くらいしかコメンテーターとしてキャスティングしなかったものだ。深刻なニュースを扱うときに「個人の単なる感想を言う」みたいな要素はあまり必要ないのではないか。やはりニュース番組なのだから、「ワイドショーとは違う、客観的事実を追求するための厳しい制作基準」を持たなければならないのではと私は考える。

「客観的事実」と言えば、かつて私が記者をしていた頃は、ニュース番組は必ず「自社として記者が確認をとった事実」つまり「裏が取れている情報」しか放送することができなかった。私はテレビ朝日にいたわけだが、たとえ親会社の朝日新聞が大々的に報じているニュースでも、テレビ朝日として確認が取れない限りニュース番組では放送しなかった。

それがいつの間にか、ワイドショーと同じように「◯日付の◯◯新聞によると」ということで、他社のニュースを裏取りせず平気で放送するのが当たり前になってしまった。

良い側面で言えば、ワイドショーに近づくことでニュースは身近になったのかもしれないが、悪い意味でもニュースのワイドショー化が進むことによって、情報の信頼性は明らかに低下したのではないかと思っている。

コロナ禍とウクライナの戦争の只中にある今こそ、そろそろ「本来あるべきテレビニュースとワイドショーの姿」をもう一度考え直し、はっきりと役割を分けるべきではないだろうか。

そうしないと、果てしなく日本のテレビニュースの信頼性は低下していきそうだ。そして、失いつつある視聴者の信頼を取り戻すには、今がラストチャンスなのではないか。いや、ひょっとしたらもう遅いかもしれないくらいだ。

それくらいの危機感を持って、今こそテレビ局やテレビマンたちは、ニュースとワイドショーの改革に真剣に取り組んでほしいと、テレビマンの端くれとして切に願っている。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

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