ゼレンスキー大統領の情報戦略を支える「キーマン」の実像 | FRIDAYデジタル

ゼレンスキー大統領の情報戦略を支える「キーマン」の実像

ロシア苦戦の背景には英米の後方支援が

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日本の国会でリモート演説を行ったゼレンスキー大統領(AFLO)
日本の国会でリモート演説を行ったゼレンスキー大統領(AFLO)

日本向けスピーチを書いたのは誰か

ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、日本の国会で演説をした。各国で行った名演説の戦略、一体誰が描いているのか。

「この演説、戦略の背後には英米の諜報機関が存在しています」(外相経験者)

英国、カナダ、ドイツなど各国の国会で演説をしてきたゼレンスキー大統領は、「真珠湾攻撃」や「ナチス」の過去の歴史を引いてロシアの蛮行を訴え、各国にさらなる対応を迫った。一方、日本では、

「ゼレンスキー大統領の演説は、原発事故を乗り越えてきた国同士という共感を前面に押し出した内容でした。ウクライナへの支援に感謝すると同時に、『いちはやくロシアへ圧力をかけた』ことに深い感謝を表明。演説は、共感と感謝にあふれる温かい内容だった。

アメリカには無制限の軍事支援を求め、ドイツやフランスに対してはロシアへの投資をきびしく指弾した。が、日本へのメッセージは、一転して融和ムードで、アジアにおけるゆるぎない『味方』であることを伝えたんです。この『戦略』の背後には、コンサルファームや英米の諜報機関が存在しています」(同前)

ウクライナの対ロシア戦略には、周到に練られた情報戦術が駆使されているという。この元外相を含め複数の政府関係者によると、そこには英米の関係機関との密接な繋がりと、キーパーソンの存在があるという。

ゼレンスキーを支える人物の正体

ゼレンスキー大統領は2019年11月5日の大統領令で、アメリカの法律事務所「Asters」社のアンドリュー・マック氏を大統領非常勤顧問に任命している。

ゼレンスキー大統領を支えるANDREW MAC(アンドリュー・マック)氏。(Asters 社HPより)
ゼレンスキー大統領を支えるANDREW MAC(アンドリュー・マック)氏。(Asters 社HPより)

マック氏は、アメリカの名門ペンシルベニア州のリーハイ大学出身。南のハーバードと評されるテネシー州ナッシュビルのヴァンダービルトロースクールを経て、法律事務所「Asters」社を立ち上げた。同社はワシントンにも事務所を構えている。

ウクライナ語、ロシア語も堪能なマック氏は「複雑な国境を越えた紛争の調整や、ウクライナとCISの企業に米国のパートナーとのやり取りに関する助言において、深い実践的な経験を持つ」という。

「ゼレンスキー大統領は、アンドリュー・マック大統領顧問を介して、この数年で英米の政府機関と密接な関係を作りました。このところ、バイデン大統領とゼレンスキー大統領は、ほぼ毎日のように、ホットラインで話し合っています。

キエフの15㎞近郊までロシア軍に迫られても押し返せたのは、キエフに米軍ミリタリーアドバイザーがいたから。アンドリュー・マックら顧問がハブとなって、西側諸国、とくに米国との連携を担っているようです」(外務省キャリア)

米軍のミリタリーアドバイザーはウクライナ周辺に早期警戒管制機「AWACS」を集中させ、ドローンを駆使してロシア軍の動きをつぶさに把握し、本国の分析チームに送って解析、ウクライナ軍に情報提供をしているという。その情報精度の高さには驚かされる。

「アメリカが軍事面を支援し、英国は、亡命してきたロシア要人からロシア国内情報を収集しています。プーチンの片腕ともいわれた国際機関調整担当のアナトリー・チュバイスロ大統領特別代表が辞職したのは、米英の情報機関が関与していると思われます」(防衛省幹部)

「親プーチン」だった日本に、何ができるか

日本は、長く続いた安倍政権が一貫して「親プーチン」だった。ふたりは「ウラジーミル」「シンゾー」と呼び合い、「同じ未来を見ていた」。岸田文雄首相はG7で、バイデン大統領と歩きながら意見交換をした。西側諸国やNATOとの連帯を強める決意とともに、北朝鮮の弾道ミサイルの懸念を伝えたという。

岸田首相は、特別機でブリュッセルへ向かう間際に、こう漏らした。

「戦争を煽る結果を招くことはしたくないが、いまは国際的な結束力を強めていくしかない」

国会と外国訪問が続き、岸田首相の疲労はピークに達しているはずだ。しかし、「国際的な結束力を強める」ためか、その表情には「高揚感」があったという。

ロシアによるウクライナ侵略戦争の終わりは見えない。西側諸国で「もっともプーチンに近かった」日本にできることはないのか。戦争を止めるために。今、世界中の国が、その力が問われている

  • 取材・文岩城周太郎

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