坂本、宇野W優勝も…「世界フィギュア」ロシア排除が招く深刻問題
フランス・モンペリエで開催中のフィギュアスケート世界選手権で日本選手が大活躍した――。
女子は坂本花織が自己ベストを更新する合計236・09点で初制覇。男子も宇野昌磨が、日本人としては’17年の羽生結弦以来、5年ぶりとなる優勝を決めた。
また、ペアでは“りくりゅう”こと三浦璃来、木原龍一組が、日本勢としては過去最高となる銀メダルを獲得した。
ただし、大会自体のレベルは「?」だ。
北京五輪でブッチギリ金メダルに輝いた米国のネイサン・チェン、日本の絶対エース・羽生結弦が揃って欠場。さらにウクライナ侵攻により、“最強”ロシアチームが男女で大会から排除された。
もちろん出場選手に非はないが、坂本花織は北京五輪で金メダルのアンナ・シェルバコワ、銀メダルのアレクサンドラ・トルソワ、4位のカミラ・ワリエワらが不在となり
「急に金メダル候補って言われて大会に臨んで…」
と動揺を隠せなかった。
男子SPでも上位独占した日本勢に対し、会見を仕切る主催者から
「まるで全日本選手権のようだ」
と、皮肉とも賞賛とも取れる言葉が聞かれた。
「ペアでもロシアと中国が出場せず、北京五輪の上位5組が不在。正直、一番盛り上がっているのは日本くらい。ロシアのウクライナ侵攻は決して許されることではありませんが、フィギュアにおいては競技レベルを考えるとロシア勢抜きでは厳しいことが浮き彫りになりました」(スポーツ紙記者)
ロシアメディアは“主役不在”の世界選手権に批判を強めている。
五輪銀メダリストで現在はコーチ兼振付師のアレクサンドル・ズーリン氏は日刊紙『スポーツエクスプレス』の中で
「世界選手権は観ないし、興味もない。エンターテイメント性が損なわれている」
と形容。世界選手権を2回制覇しているイリーナ・ソルツカヤ氏も露メディア『チャンピオナット』で
「コメントもしたくない。全く興味がない。ロシアが出ない世界選手権は競争がない」
と述べた。
ロシアフィギュアスケート界の名指導者として知られるタチアナ・タラソワ氏も露メディア『RBCスポーツ』で坂本花織を酷評。
「今回滑った中では、日本の女の子が一番上手かった」
としつつも
「でも、もし我々が出ていたら、彼女が1位を取るチャンスはなかったでしょうね」
と言ってのけた。坂本の演技については
「彼女の演技は20年前のスケート。彼女は最高難度の技を持っていないし、我々は技術的な完成度が常に進化している。どこでも1位になる。日本人は健闘しているが、最高レベルではない」
と斬り捨てた。
遠吠えのようにも聞こえるが、人気&実力を兼ね備えたロシア選手の排除が続けば、今後の国際大会にもダメージがじわじわと蓄積される。前出のスポーツ紙記者は
「スポンサー離れが心配されます。いまはロシア制裁という“大義”があるので、ある意味、スポンサーは降りたくても降りられない。離脱すれば、スポンサーに批判が集まることも考えられますからね。あとはこの状況がいつまで続くかということ。長引けば長引くほど、フィギュア界にとって死活問題になります」
そうしたなか、ロシアスフィギュアケート連盟(FFKKR)が、独自のグランプリシリーズの創設へ向けて動き出したという情報もある。ロシア放送局『マッチTV』は
「(ロシア寄りの)中国、ジョージア、ウズベキスタンからの選手を競技に招待する」
とし、各国の都市で持ち回り開催する案を準備しているという。実現には批准手続きを行う必要がある。
どちらにせよ、ロシアのウクライナ侵攻がスポーツ界の分断を招いていることは間違いないようだ――。
写真:共同