デーブ・スペクターが語るウィル・スミス夫妻と司会者の「因縁」
なぜ司会者は夫妻に「ジョーク」を飛ばしたのか
「ウィル・スミスとしては、聞き流すか、カメラに向かって指で『NO』というジェスチャーをするといったやり方もあった。全世界生配信ですから、ウィル・スミスとしても勇気のいる行動だったと思います」
そう話すのはテレビプロデューサーでハリウッド事情に詳しい、デーブ・スペクター氏だ。
3月28日、アカデミー賞の授賞式で起きた「殴打事件」は今後長く語り継がれていくだろう。プレゼンターを務めた、コメディアンのクリス・ロック(57)が、俳優のウィル・スミス(53)の妻であるジェイダ・ピンケット・スミス(50)の髪型を揶揄して「G・Iジェーンの続編に出ますか」と発言した。これは97年のアメリカ映画『G・Iジェーン』の中で、女性主人公が頭を丸刈りにしたシーンを踏まえたものだ。ジェイダは脱毛症であることをカミングアウトしている。
この発言にウィル・スミスが怒り、壇上のクリス・ロックを殴打したというわけだ。
妻のジェイダも女優であり、映画『マトリックス』シリーズでナイオビ役を演じた女性といえば、膝を打つ方も多いのではないだろうか。デーブ氏が話す。
「二人はおしどり夫婦と言っていい関係だと思います。仲はいいんですが、『オープンマリッジ』といって、互いを束縛しない関係を築いています。だから子どももとても自由奔放に育てられていて、家族のその自由な感じが憧れの的となっています」
実はクリス・ロックとウィル・スミス夫妻の間には「6年前の因縁」があるという。
「16年のアカデミー賞授賞式をウィル・スミス夫妻はボイコットしています。俳優部門の候補が2年連続で白人のみだったことなどが理由です。このとき司会を務めていたのがクリス・ロックだったのです。実はクリス・ロックはこのときも二人がボイコットしていることをネタに、ジョークを飛ばしていたのです」(デーブ氏)
ウィル・スミスの頭の中にはこのときの記憶も当然残っているだろう。そのクリス・ロックから、今度は目の前で看過できないような「ジョーク」を飛ばされた。ウィル・スミスの堪忍袋の緒が切れるのも無理はない。
一方で、クリス・ロックの側にも同情の余地はあるという。デーブ氏が話す。
「クリス・ロックが少し気の毒なのは、過激なことを言わないと手抜きをしているととられてしまうことです。みんな大物を茶化すのを期待しているという雰囲気はある。アカデミー賞離れが進んでいるなか、彼のようなエッジが効いた人物を起用するというのは、そういうギリギリのギャグを求められているというところもあったわけです。
ただ問題はクリス・ロックがジェイダが脱毛症であることを知っていたかどうかでしょうね。病気だということを知っていながら茶化すというのはさすがに失礼だと思います」
すべての人にとって後味の悪い事件となった。
- 撮影:共同通信社