仕掛け人は有名チェーン…1000円のラーメン自販機が人気のワケ | FRIDAYデジタル

仕掛け人は有名チェーン…1000円のラーメン自販機が人気のワケ

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凪スピリッツジャパンが展開する冷凍ラーメンの自販機「RAMEN STOCK 24」

最近、街中で「ラーメンの自動販売機」を見かける機会が増えた。コンビニやショッピングモール、駅構内やパチンコ店といった施設だけでなく、あろうことかラーメン店の隣にまで設置されている。

ラインナップを見てみると、煮干ラーメンや博多とんこつ、二郎系や坦々麺に加え、家系ラーメン「吉祥寺武蔵家」、京都の煮干ラーメン「藍」、金沢の味噌ラーメン「神仙」など、全国各地のラーメン店の品物を揃えた自販機もある。

購入してみると、それぞれパッケージ化された麺、スープ、チャーシューやメンマなどの具材、仕上げのタレが、冷凍されて1つの容器にまとまって出てくる。これらを湯煎して、どんぶりに盛り付けて調理する。

ラーメンの具材、スープ、タレ、麺と作り方がパッケージに入っている

単価は1000円台で、ラーメン店で食するのと変わらない。手間を考えればむしろ割高な金額だ。それにもかかわらず、「ラーメン自販機」の設置台数はジワジワと増え、人気を博しているという。

この密かなブームの「仕掛け人」的存在がいる。新宿ゴールデン街に本店を置く煮干しラーメンチェーン「ラーメン凪」だ。同チェーンを経営する凪スピリッツジャパンが展開する自販機「RAMEN STOCK 24」の戦略が、コロナ禍で躍進を遂げている。なぜ売れているのか。同社副社長の西尾了一氏に、その戦略を聞いた。

副社長の西尾了一氏

凪スピリッツジャパンが冷凍ラーメン事業を始めたのは20年春ごろのこと。

西尾:きっかけはコロナ禍で店舗が打撃を受けたことです。コロナ前は毎日300~400人ほど客足があった『ラーメン凪』の実店舗も、20年4月に緊急事態宣言が発令された時期は1日8人しか来ない日もあって…。そこで販路を拡大するため、最初は自社の通販サイトや他社の自販機の枠を借りる形で、冷凍ラーメンを販売し始めました。

冷凍ラーメンは予想を超える反響で、通販サイトでは4か月で4万2000食ほど売れました。それなら我々で自販機を展開しよう、と考えました。ユーザーからしても、自販機なら送料をかけずに1食単位で購入できるので、通販に比べて融通がききます。

21年6月から販売を始めた1台目は、6月の売り上げが128万円、7月も120万円を超え、かなり良い数字でした。そこで21年9月頃から、本格的に全国各地への展開を始めました。

22年3月中旬時点で、設置台数は67台、1台あたりの平均売り上げは約30万円弱、1日1台あたり10食売れている計算です。設置し始めた頃の全盛期に比べると数字は落ち着きましたが、今でも月88万円を売り上げる台もあります。

ラーメンの自販機が月88万円の売り上げーー。24時間稼働できるうえ、商品を補充するだけで手間もほぼかからない。時短営業や外出自粛で凹んだ売り上げの補填には大助かりだろう。実際の利益はどれくらいになるのか。

西尾:1食あたり、当社側の経費や利益、税金は合わせて700円弱。1000円で提供すると、約3割ほどが自販機の経営者の利益になります。仮に1台で月30万円売り上げると、純利益は9~10万円ほどです。

西尾氏によれば、初期投資は自販機の設置代の150万円ほどがかかる。順調にいけば、1年数か月で元手を回収できる計算だ。

自販機の経営権は、凪スピリッツジャパンが持つ場合もあれば、設置場所の土地の所有者が持つ場合もある。いずれにせよ、初期投資の150万とその後の運営や維持費を請け負って自販機のオーナーとなれば、月30万円の売り上げで10万円近く収入が見込めるわけだ。

設置場所の土地の所有者からすれば、経営を凪スピリッツジャパンに任せた場合は、比較的少ないリスクで自販機分の土地代が毎月お小遣い程度に入ってくる。

西尾:設置場所によって値段は異なりますが、毎月の土地代が平均1~2万円、電気代が平均5000~6000円ほどです。固定費が少ないので、長期的に運営すればするほど赤字になる可能性は低くなります。

見通しの立たないコロナ禍では、店舗を出店するより、自販機を展開した方がリスクは少ないですね。店舗を出店する場合は初期投資が2000~3000万ほどかかる上、ランニングコストも重なり、今は人不足の問題もあるので…。

板橋にある製造工場。ここでは1日で約4500食を製造できる。麺やスープ、チャーシューなど全ての具材を1つの工場でまとめて製造できるのが強みだという

初期投資さえ払ってしまえば、あとは簡単なオペレーションと僅かな維持費で、継続的に毎月の収入が得られる。現在、ラーメン凪の実店舗が国内6箇所なのに対し、自販機が67台に拡大している状況を考えれば、RAMEN STOCK 24が負担の少ない隙間ビジネスとして機能していると言えるだろう。

とはいえ最大の疑問は、店内で食べるより割高にもかかわらず、なぜ平均で1日1台あたり10食売れるのか、ということ。西尾氏は大きく2つの要因を挙げる。

1つ目は「女性ユーザーが多い」ことだ。

西尾:当初は我々も、客層の大半は学生やサラリーマンだと予想していましたが、蓋を開けてみると約35%が女性ユーザーでした。

女性で二郎系や家系のラーメンを食べたい人でも、店舗だと量が多かったり、行列に並ぶのが恥ずかしかったり、忙しない店内でゆっくり食べれなかったりと、躊躇してしまう人が多いのではないでしょうか。自販機なら、ちょうど良い量を好きなタイミングで食べられるので、潜在的にラーメンに興味がある人を取り込めました」

他に多い購入理由としては、「いつでも買える」「人目につかずに購入できる」「1食単位で買っても送料がかからない」「麺の硬さを調節できる」といった意見が多いそうだ。

2つ目は「設置場所にこだわった」ことだ。

西尾:一例を挙げると、駅前の駐輪場や駐車場など、動線がスムーズな場所は売れます。学校や職場からの帰宅途中に買えて、自転車のカゴに商品を入れられるので、ユーザーからしたら買いやすい状況にあります。

それからパチンコ屋とも好相性です。勝った時はつい財布の紐が緩んだり、お釣りで小銭が余ったり、夜遅い時間まで遊んでいると時短中は飲食店が閉店していたりするのが主な理由です。

あとはスーパーやコンビニ、ドラッグストアの近くは、ついで買いが期待できます。どこでもカップ麺などを販売していますが、RAMEN STOCK 24でしか購入できない商品を展開して差別化を図っています。

人通りの多い場所ではシンプルに売り上げが伸び、商業施設の場合はついで買いを期待できる。ラーメン店の近くに置いてある場合も、時短営業などで落ち込んだ売り上げを補填するために、24時間稼働できる自販機を設置するのは悪くない選択肢だ。利用客も、店舗とは違った状況でラーメンを味わえる、ある意味「三方よし」のビジネスモデルになっているわけだ。

とはいえ、比較的売れやすい条件に沿って設置を進めたところで、必ずしも成功するとは限らない。

西尾:群馬県にある交通量が多い幹線道路沿いに、1日200~300人ほど客が来るアダルトビデオ屋がありました。そこは駐車場も設置されており、近所に繁盛しているラーメン屋もあるので、立地としては申し分なかった。

ただ実際は全然売れず、現在は別の場所に移動しています。ユーザーからすれば、アダルトビデオ屋に入っていくと思われるのが嫌だったり、わざわざ道路から外れて買いに行くのが面倒だったのかもしれません。

周りの環境や施設が揃っていて人通りがあっても、動線が悪いケースもあるので、必ず設置する予定の場所は下見しています。

巷で急増しているラーメンの自販機。背景には、こうした緻密な経営戦略があったのだ。

  • 取材・文佐藤隼秀

    1995年生まれ。大学卒業後、競馬関係の編集部に勤め、2021年頃からフリーランスに。趣味は飲み歩き・競馬・読書

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