日本人がタイで「唯一のバッティングセンター」を開いたワケ | FRIDAYデジタル

日本人がタイで「唯一のバッティングセンター」を開いたワケ

「微笑みの国」タイで 日本人駐在員の心の拠り所になり、現地の人たちはめちゃくちゃな打ち方で楽しむ いつかプロ野球選手が誕生するかも……

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店主の羽岡は30歳のときに会社の海外転勤でタイへ渡り、35歳でタイ人女性と結婚。野球好きだったことから7年半前にオープンした

「タイの首都バンコクにバッティングセンターがある」

にわかに信じられないかもしれないが、ウソのような本当の話だ。その名も「バンコク・バッティングセンター」。プロンポン駅から、バイクタクシーで北上すること約5分。その地に、オーナーの羽岡(はおか)伸剛(47)がバッティングセンターをオープンしたのは’14年8月9日のことだ。タイ王国初にして唯一のバッティングセンターだった。

「バンコクにいる日本人、プラスアルファ他の国の人が来てくれれば、商売として成り立つだろう、と皮算用を立てました。ただ、オープンは予定より4ヵ月遅れました。これはタイで事業をやる人の″あるある″なんですが、絶対にそのくらいは納期が遅れるんです。もうその4ヵ月は気が気じゃなかったですね。単純に予定していた収入が入らないこともですけど、他のバッティングセンターができたらどうしよう? と。

僕以外にもバッティングセンターをやろうと考えている人がいる、という話は聞いていたので。特に土地を手に入れてからは、もうずっとバンコクで工事現場を見るのが怖かったですね。あれがバッティングセンターだったらどうしよう? と思っちゃって」

羽岡の不安をよそに、他に店はできなかった。開店直後の客入りは好調だったそうだ。

「最初の3ヵ月の売り上げはとても良かったですね。その後はまあ家族3人で生活できる程度には儲かっているくらいで。ただ、いろんな人に言われてたんです、″絶対に最初の売り上げからは落ちるからね″って。だからある程度の覚悟はできてたんですけど、想定外だったのは、日本人以外のお客さんがちょっとずつ増えてきているんです。最初は日本人と外国人の比率は9:1くらいで考えていたんですけど、今は6:4くらいになりました。アメリカとか韓国みたいに、野球がさかんな国の人、それからタイ人のお客さんも増えていますね。

タイではね、『ドラえもん』とか、日本の漫画が人気なんですよ。″あの漫画に出てくるスポーツをやりたい!″という感じで遊びに来ますね。ただ、やっぱりルールはわかってないので、ホームベースの上に立つ人もいる。なので最低限のことは伝えてから遊んでもらっています。そうしないと怪我しちゃいますから。

ウチは最速130㎞まで出ますが、タイ人の中にも初見でそのスピードを打ち返す人がいるんですよ。身体能力が高い人がいるので、そういう人達が小さい頃から野球をやっていたら、凄い選手になってた可能性があると思うんですよね。このバッティングセンターをキッカケに、タイからNPBやMLBに行く凄い選手が出てきて、この国で野球が広まって欲しいんです。ロックがアメリカから日本に入ってきて、一気に広まっていったみたいに。それが今の目標の一つですね」

しかし新型コロナウイルスの流行は、バンコク・バッティングセンターにも大きな影響を及ぼした。

「ロックダウンで思うような営業ができず、苦しい2年間を過ごしました。休業補償も合計で3000バーツ(約1万円)ほどしかもらえず。実はコロナが流行する直前に、バンコクで他にもバッティングセンターが数ヵ所できたんですが、すぐに閉店してしまいました。

ウチも最初にロックダウンになったときは再開できるかもわからなかったし、日本人の数も減ったので、商売を畳むことも頭をよぎりましたが、何とか踏ん張っています。今はウチの他には、量販店のレジャーコーナーとしてあるくらいですね。これから本格的に野球教室も始めるので、改めてタイで野球を広めていきたいです」

千里の道も一歩から。近い将来、バンコク・バッティングセンターからワールドクラスの選手が誕生するかもしれない。

羽岡の店は現地のユーチューバーにも紹介された。野球に馴染みのない国だけに、めちゃくちゃな打ち方をする人も多い
1ゲーム100バーツ(約370円)。マシンは依頼した日本のメーカーが、電圧などをタイに合わせて出荷してくれた

『FRIDAY』2022年4月15日号より

  • 写真・文カルロス矢吹

    ライター

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