裁判長が異例の退廷命令!実娘に子供を産ませた被告の「悪あがき」 | FRIDAYデジタル

裁判長が異例の退廷命令!実娘に子供を産ませた被告の「悪あがき」

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撮影:アフロ

実の娘と性交したとして児童福祉法違反の罪に問われていた男(氏名年齢非公開)に対する判決公判が3月4日に東京地裁で開かれた。品川しのぶ裁判長は男に懲役7年の判決を言い渡したが、このとき法廷に男の姿はなかった。主文言い渡し前に退廷命令がくだされていたのだった。

起訴状によれば被告の男は2013年6月下旬から8月中旬にかけて、自分の娘・Aさん(当時15)が18歳未満と知りながら自宅で性交したとされる。2017年の刑法改正により監護者性交等罪が新設される前の出来事となる。被害者のプライバシーの観点からか、こうした事件の被告人は氏名や年齢、住所などが明かされない。

見た目は50代ほどの痩せ型の被告は、実の娘に自分との子を2人も産ませていた。その子らが保護されている児童相談所からの情報提供を受けて捜査が始まったのだという。

それでも被告は否認していた。21年9月に開かれた初公判の罪状認否では、書面を手に持ち「犯行場所の住所が、起訴状に書かれている住所と違う」「子供たちの人権を著しく侵害している」など、長時間、主に捜査に対する不満を訴えた。弁護人は「違法捜査に基づく公訴権の濫用だ」と要約し、捜査機関による手続きに違法な点があるため無罪であると主張していた。

とはいえ被告とAさん、そして児童相談所に保護されている2人の子についてDNA型鑑定も行われており、その結果によると、2人の子と被告が親子である確率はそれぞれ約99.999%。被告が実娘のAさんに、自分の子を2人産ませたことは間違いないと公判ではわかった。しかし被告は、この鑑定における警察の手続きに不備があり、DNA型鑑定の結果が証拠能力を持たないとの言い分を貫いてきた。

捜査手続きに違法な点があったか否かが争点となったこの公判では、判決まで刑事や科学捜査研究所の職員らが多数、証人として出廷し、当時の様子を証言した。被告は毎回、調書や捜査報告書などの書類を大きな袋に入れて持ち込み、長いテーブルの上にそれらを広げ、証人らの話に耳を傾ける。

それだけでなく被告は審理のたび、裁判手続きについて30分ほど裁判長に“意見”を述べるのだった。例えば、被害者である被告の娘・Aさんの証人尋問がビデオリンク方式で行われること、弁護士の付き添いをつけることなどが発表された際は「人権擁護の観点から著しく不相当……弁護士が国家権力を濫用し尋問内容に影響が生じる……」などと高い声で反対した。

さらには被告人質問が予定されていた昨年12月の公判においても、質問が始まる前に「証拠調べに関する異議申し立てを行います!」とまたもや“意見”を述べ始めた。

「書類が不必要にマスキングされている……よって証拠能力はない……」

その書類はまだ裁判所が証拠として取り扱うか決めていないもので、証拠ではなかったが、こうした意見を延々と述べ続ける。終盤には「捜査機関が意図的に事件の犯行場所や住所、子供の名前、実在しないものにしていることが前提に進められている。これからの被告人質問に対し、どのように答えればいいのかわからない。公平な裁判の体をなしていない」と訴えたのだった。

 

つまり被告は“警察や検察が事件をでっち上げており、それを前提に進められる被告人質問には何も答えられない”というのだ。

そのため、長い“意見”が終わっていよいよ始まった被告人質問で、被告は「答えられません!」と全ての質問に拒否や黙秘を貫いた。また今年2月に行われた最終意見陳述の場においても「意見陳述の前に、述べたいことがあります」と切り出し、こう言い始めた。

「私は今回、初めて捜査機関側の逮捕状を見たんですが、私が持っている逮捕状とは違うことを発見しました!偽造したものと、すり替えられている。法曹三者が関与していることは明らか。なので私の意見陳述期日を変更していただきたい」

改めて捜査側の“事件のでっち上げ”を訴え、その後もこうした意見を述べ続ける。

この日の法廷は13時から14時まで確保されていたが、だんだんと終わりの時間も迫ってきた。意見陳述は行われるのか。裁判長も「14時から別の事件が入ってますので、最終陳述をお願いします!」と改めて仕切り直した。

なのに被告はまた「刑事訴訟法313条により弁論再開請求を申し立てます」と、最終陳述に入らず”意見”を述べ続けるのだった。14時になった頃、品川裁判長は容赦無く閉廷を告げた。

「もう終わります!最終陳述をしてくださいと前回あなたに伝えていました。とはいえ言いたいことはあると思いますので、書面で裁判所に伝えてくれればそれを踏まえて判決を言い渡します」

意見を述べすぎて最終陳述を行えなかった被告人は、3月4日の判決公判でも変わらなかった。

「弁論再開請求を申し立てたい!」

なんとしても公判を終わらせたくないようだ。やはり同じ調子で、でっち上げ捜査への不満や訴訟手続きへの不満などを述べ続ける。判決を目前にしても続けられる被告のあがきに、品川裁判長が「これ以上発言するのであれば退廷を命じます」とついにイエローカードを出した。しかし被告はやはり「異議を申してます!」と止まらない。品川裁判長はいよいよ告げた。

「ではここから出ていってもらいます」

そして、被告は両腕を職員に捕まれ、法廷の外に連れて行かれてしまったのだった。

被告人不在で言い渡された判決では、それまで被告の縷々述べていた“違法捜査”や“でっちあげ”などの主張は認められなかった。捜査は適切に行われ、それぞれの証拠についても信用できると認定された。

判決によれば、被害者のAさんは2014年の2月に出産。産科医の証言からは2013年5月から8月中旬に妊娠したことが認められるという。

「2013年6月下旬から8月中旬にかけて被告はAさんとの間で性交したと認めることができる。当時 Aさんは15歳の中学生。被告の養育下にあった。被告から『実母は敵だ』と植え付けられ、母子関係も良好ではなかった。精神的にも被告の影響を強く受けていた。正に実父の立場を利用した行為にあたる」

被告のいない法廷で判決言い渡しはこう締めくくられた。

「本来、父として心身ともに生育する責任があるが被告はこの立場を利用し、当時中学生だった長女Aさんと性交した。Aさんの人格形成における悪影響は計り知れず、自己の欲求のはけ口にした、極めて卑劣悪質な犯行。被害者は妊娠出産しており、処罰感情が強く、犯情はすこぶる悪い。いっぽう、被告がその行状を省みる姿勢は皆無」

この事件は被告側から控訴の申し立てがなされている。被告が行状を省みる日は来るのか。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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