『変な家』の作者・雨穴が「全身タイツにお面」で動画に出るワケ | FRIDAYデジタル

『変な家』の作者・雨穴が「全身タイツにお面」で動画に出るワケ

なりたかったものがあったけど…

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「【不動産ミステリー】変な家」の再生回数が1000万回を超えた雨穴

再生回数1000万回を超えるネット動画「【不動産ミステリー】変な家」をきっかけに生まれ、売り上げ30万部を突破した小説『変な家』(飛鳥新社)。ある奇妙な間取り図から、その家に住む一族の忌まわしい因習をあぶりだす物語は、来年以降の映画化も決定している。

この作品の著者は、ウェブライター、ユーチューバーとして知られる「雨穴」。大ヒット動画「変な家」が生まれたきっかけはなんだったのか?白い仮面に黒の全身タイツ、ボイスチェンジャーを使った独特のキャラクターの秘密と併せて、話を聞いた。

――幼いころに夢中になったカルチャーを、そのどんな部分に最も惹かれたのかも合わせて教えてください。

サザンオールスターズです。悲恋もシュールも下ネタもホラーも、すべてが「サザン」という器で共存しているところが好きです。子供の頃、サザンのDVDを何十回も見て「桑田(佳祐)さんになりたい」と思っていたのですが、成長にするにつれ自分が桑田さんとは似ても似つかない人間だと分かり、その反動でこんな感じになってしまいました。

――ユーチューバーになったきっかけは?

もともと「オモコロ」というメディアにウェブライターとして所属していました。「オモコロ」というのは、主にギャグ系記事を毎日配信しているウェブサイトなのですが、2019年からYouTubeでの活動(オモコロチャンネル)も並行して始めました。私自身はオモコロチャンネルにほとんど関わってはいませんが、「オモコロがYouTubeをやるなら自分も始めてみよう」と思ったのがきっかけです。

――「雨穴」というちょっと変わった名前の由来は?

私が憧れているウェブライター「夢顎んく」さん(通称「夢顎」)という方がいるのですが、その方が「まったく関係のない漢字二文字の組み合わせ」でペンネームをつけたと聞いて、同じ方法で自分が好きな二つの言葉(雨+穴)をくっつけて作りました。

ーー全身黒タイツに仮面と音声変換というスタイルも他ではあまり見ないですよね。

当初は「黒子」の格好でやろうと思っていたのですが、黒子の衣装は意外と構造が複雑で、特に顔の部分を自作するのは難しそうで。それで全身黒タイツでお面をかぶることにしました。世界堂でたまたま見つけた「お面の型」をそのまま使っていますが、結果的に「カオナシ」のような格好になってしまいました。声は地声でやるのが恥ずかしくて。

ーーウェブライターとユーチューバーの表現者としての違いって何でしょうか?

ウェブ記事に求められるのは、誠実で個性のある視点だと思っています。視点はあくまで主役ではないので、自己主張せず、フラットに書くことを心掛けています。逆に、ユーチューバーとしては、自分が主役にならなくてはいけないので、ある程度キャラクターやクセを出すようにしています。

――雨穴さんの動画は、「おせちを求めて」の変な「取り寄せおせちセット」や、「サンタさんからのプレゼント」の不気味なプレゼント、「水のいきもの」の「生き物育成キット」など自作の小道具が多く登場します。小道具制作で印象に残るエピソードを教えて下さい。

一番大変だったのが、「дефекация(金魚育成装置)」という記事に出てくる頭のない金魚です。まず、銀色の折り紙を穴あけパンチで直径5ミリくらいの円形にくりぬいて鱗を作り、それを粘土で作った土台に一枚ずつピンセットで貼り付けていきました。しかし、途中で色がいまいち金魚っぽくないことに気づき、二週間かけて作った二体をボツにして、新しく作り直しました。大変でした。

「オモコロ」より「頭のない金魚」

ーー動画を作る上で意識していることは?もしフライデーとコラボ企画をやるとしたら何をやりたいですか?

あまり他の人がやらないネタをやることです。フライデーさんとなら「水着姿の透明人間がそこにいるかのようなグラビア写真」を撮る企画がやりたいです。

ーー動画&小説「変な家」はどうやって生まれたんでしょうか?

思いつくまま色々な動画を作っていく中で、ずっと好きだったミステリーをやってみたいと考えました。「変な家」より前に「ヤツヱメヂキ」という因習ネタの動画を作っているんですが、そのときは力不足で「あとは皆さまの想像におまかせします」という形で、中途半端に終わってしまって。「変な家」はそのリベンジをしたいという気持ちもありました。

間取り図しかでてこない地味な絵面だし、長さも長いので、絶対にウケないだろうと思っていたのですが、それまでで一番再生数が伸びたので驚きました。それで出版社の方に声をかけていただき、書籍化することになりました。

ーー「変な家」の後半は、ある山村の一族の因習が描かれ、昭和のミステリー作家・横溝正史の世界観を彷彿とさせます。こうした話は何に着想を得ているのでしょうか?

はい、横溝正史の作品はとても参考にしました。小説も読みましたが、個人的に印象深かったのは角川映画の『犬神家の一族』『八ツ墓村』です。閉鎖的な村や家の息苦しさが、誇張されたものとはいえ、「実際にこういう世界で一生を終えた人たちが日本にはたくさんいるんだろうな」と、考えさせられました。

ーーライターとして得意ジャンルの「オカルト」「ホラー」に「不動産」を組み合わせることは、どこから着想したんですか?

私の家の近所に、二階の一部分が一ヵ所だけ出っ張っている家があり、そこを通るたびに「変な形だな」と思っていました。なにかしら事情や都合があるのでしょうが、それは住人しか知らず、部外者は想像するしかありません。そういうところにホラー的な要素があるのではないかと思いました。

ーー雨穴さんの思う「面白さ」「恐怖」とはどんなものでしょうか?

どちらも共通するのは「わからなさ」だと思います。たとえば道端にでっかい魚が落ちていたら怖いしちょっと面白い気がしますが、「実はその数分前に魚屋のトラックが通って、車輪が空き缶に乗り上げた衝撃で転がり落ちた」という情報を知ってしまったら、最初に魚を見つけたときの非日常感やワクワク感は薄れてしまいます。なので、わからない状態を維持し続けること、わからなさを味わい尽くすことが面白さ、恐怖の本質なのではないかと思います。

ーー小説『変な家』ですが、どんなふうに楽しんでもらいたいですか?

普段あまり本を読みなれていない人にも楽しく読んでもらえるよう、読みやすさ、分かりやすさを意識したので、小さい子供が読んでくれたり、「はじめて本を読破できた」という感想を見たりしたときはとても嬉しかったです。その時の自分の持てる力をすべて使っておもしろいものを作ろうと意気込んだ本なので、「とにかく一人でも多くの人に読んでもらいたい」という気持ちです。

  • 取材・構成渥美志保

    Vドラマ脚本家を経てライターへ。女性誌、男性誌、週刊誌、カルチャー誌など一般誌、企業広報誌などで、映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がける。yahoo! オーサー、コスモポリタン日本版、withオンラインなど、ネット媒体の連載多数。

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