「センバツ圧勝」大阪桐蔭 20年以上の取材でわかった強さの理由 | FRIDAYデジタル

「センバツ圧勝」大阪桐蔭 20年以上の取材でわかった強さの理由

「2022センバツ」インサイド・レポート

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
圧倒的な強さでセンバツを制した大阪桐蔭ナイン

歴代チームと比べると……

2022センバツは大阪桐蔭が圧巻の強さで頂点に立った。閉幕から2日、3日と過ぎ、ネット上にはその強さを称える一方、強過ぎることへのやっかみや今後の高校野球を憂う声まで混じり始めている。

準々決勝以降の3試合が17対0、13対4、18対1。地方大会の序盤戦のようなスコアで勝ち切り、打線は不戦勝を除く4試合で大会記録を塗り替える11本塁打。投げても実質的なエース、2年生・前田悠伍の投球イニングはわずか13回。投手陣も余力十分の起用で勝ち切った。選手層、個々の体力、技術、勝利への執念。すべての面で他を圧倒しての4年ぶりの春の日本一だった。

決勝戦当日、ネット裏からワンサイドとなって進む試合を眺めていると、旧知の編集者が尋ねてきた。

「このままいけば春は4回目の優勝。過去には春夏連覇も2回ありましたけど、歴代のチームと比べてどうですか?」

歴代トップクラスの強さ、ひょっとすると最強チームになる可能性も? そんなニュアンスだった。時代も、相手も違い、比較できるものではないが、そう言われると、過去の思い出深いチームのことが頭に浮かんできた。

中村剛也と西岡剛、藤浪晋太郎と森友哉

大阪桐蔭のグラウンドを初めて訪ねたのは“ナニワのカブレラ”と呼ばれていた中村剛也を取材した2001年。この夏のチームも迫力があった。2年の西岡剛と3年の中村が3、4番に並ぶ超強力打線。ただ、最後は大阪大会決勝で延長の末に敗れ、甲子園には届かなかった。エース岩田稔が1型糖尿病を発症し、投げることができなかったのだ。戦力が万全なら甲子園でも主役になる力を持っていただろう。

センバツ決勝、近江戦での西谷とナイン

藤浪晋太郎、澤田圭佑の強力投手陣と2年の森友哉がバッテリーを組み春夏連覇した2012年。根尾昂、藤原恭大に柿木蓮、横川凱と秋にドラフト指名を受ける4人が揃い、やはり連覇の2018年。辻内崇伸、平田良介の超高校級コンビにスーパー1年生中田翔と、スケール感たっぷりだった2005年夏。右ひじを痛めなければ投手・中田翔がどこまでの怪物ぶりを見せていたかと今でも思う2007年のチーム。もちろん、創部4年で春夏連続出場、夏に全国制覇、1991年の強さも忘れてはならない。

昭和の王者、PL学園を語る時によく“最強チーム論”が出る。メインは清原和博、桑田真澄が3年となった1985年のチームと、立浪和義、片岡篤史、野村弘樹らで春夏連覇の1987年のチームはどちらが強かったか、というところだ。一度、両チームを知る当時のコーチを訪ね、架空の対戦をイメージし、語ってもらったことがあったが、結論は出なかった。

昨年の屈辱を糧に

大阪桐蔭史上最強チームは?

この話題を西谷浩一監督に向けるとどんな反応が返ってくるだろう。「強い」「凄い」「さすが」。こうした類の誘いにはまず、乗ってこない人だ。チームや選手に優劣をつけて語ることもよしとしない。「勘弁して下さい」と苦笑いを浮かべながら、流されるだろう。今年のチームに関して言えば、秋の時点から一貫してこう繰り返していた。

「夏までの先輩たちのチームより自分たちは力がないとみんなわかっているので、もっと、もっと、とやってここまできました」

昨夏の3年生にはプロへ進んだ池田陵真(オリックス)、松浦慶斗(日本ハム)ら力強さを持った選手が揃っていた。確かに、西谷の言葉は本音である。

その力を持ったチームでも勝ち上がれなかった。昨年の大阪桐蔭は春、西谷がチームを率い17度目の甲子園で初の初戦敗退。チーム一丸となって雪辱を期した夏も、甲子園2回戦敗退。しかも敗れた相手が智弁学園と近江。大阪桐蔭が甲子園で近畿勢に負けるのも初のことだった。

さらに、一昨年夏の大阪は甲子園につながらない代替大会ではあったが、夏の直接対決で11連勝中だった履正社に1999年以来、実に21年ぶりの黒星。これまでになかったことが続けざまに起こり、何かが変わり始めているような流れがあった。

迎えた昨秋。夏の経験者は松尾汐恩(今春3番捕手)のみ。ここでもし〝らしくない戦い″で敗れていれば、一気に暗雲が立ち込めていたことだろう。しかし、そうはならず。大阪、近畿を制し、神宮大会まで初優勝を飾ると、大本命となったセンバツも大本命の評判通りに勝ち切った。

「まだまだ、もっともっと」

このチームは何を持っているのか。試合後、場内へ流れた優勝インタビューの中で西谷が言った。

「今年のチームは一生懸命やる子たちが多くいるいいチーム。そのいいチームが少しずつ強いチームに変わってきています」

中学球界のトップレベルの選手が集まり、「まだまだ、もっともっと」と求め続け、一生懸命野球に打ち込む。そこへ技術指導にも長けた、ハートフルな指導者たち。強さの理由として十分だが、もうひとつ加えたいのがチームの明るさだ。選手も、指導者もとにかく大阪桐蔭は明るい。特にこの十数年感じてきた強さの一因だ。勝利が宿命づけられ、負けが許されない重圧と常に戦いながらも、重苦しさをまるで感じない。

西岡と二遊間を組み、社会人の名門・日本生命でも活躍した岩下知永に5年ほど前に聞いた時もこの話になった。

「今ももちろん練習は厳しいと思いますが、僕らの頃に比べるとグラウンドの雰囲気が明るいし、選手1人1人がまた明るい。たまに練習に入らせてもらったりすると、そこを凄く感じました。僕らの頃から西谷さんはよく『野球好きの集団であれ』と言っていましたけど、その言葉が年々形になって、本当に野球好きが集まっているんだなと思います」

このあたりの溌溂とした空気感はコーチ時代から数えて30年、西谷効果の賜物だろう。話し好きの笑い好き。雑談には常にオチをつけ、選手たちへの愛情を持ったイジリも大好物。指揮官発信でもある、勝利の女神に好まれそうな明るさはチームを包み込む大きな空気となっている。

名将・西谷浩一「不運の高校時代」

そもそも、大阪桐蔭の選手は表情豊かで元気一杯。野球小僧と呼びたくなるような選手が多い。これもたまたまではない。かつて西谷にスカウティングのポイントを尋ねると、こう返って来た。

「一番は僕が一緒にやりたいと思う選手に来てほしいんです」

つまり?

「試合や練習を見ていて三度の飯より野球が好きという雰囲気を出している選手と一緒にやりたいんです」

こう話した西谷自身が生粋の野球小僧だった。以前、報徳学園時代の同級生に当時の印象を尋ねたことがある。すると、「ほんとに練習している姿しか思い出せないです」と言って次の言葉が出てこなかった。他の選手より早くグラウンドに出て誰よりも遅く帰る。高校の卒業アルバムにある西谷の顔写真の下にはクラスメートが書いたメッセージが残る。「1日すべてが野球、今も健在レッスンマシーン」。まさに練習の虫。

西谷の高校生活は、2年秋の近畿大会出場(初戦敗退)が唯一の戦績らしい戦績。1年と3年時は部員の不祥事が続き、最後の夏も出場辞退。県大会開幕の日にチームで紅白戦を行い、高校野球生活は終わった。思うようにいかないことが続いたが、ひたすら野球へ打ち込んだ時間はその後の人生の支えになった。とにかく高校の3年間は大好きな野球を一生懸命に。子供たちに求める一番もここにある。

近年、スカウティングに関しては石田寿也コーチ(主に投手指導担当)が担う面も多くなっているが、大阪桐蔭のカラーに合いそうな野球小僧を求める視点はしっかり受け継がれている。

度目の春夏連覇へ

センバツ優勝を果たした表彰式

力を持った選手が明るく、一生懸命に、日々積み上げた先の強さ。今春の結果を受け、戦いは夏へとつながっていく。過去3度のセンバツ優勝のうち2度は春夏連覇を達成している。

決勝戦を見終えた直後、このチームがどうやったら負けるのだろう、気づけばそんな方向へ頭が向きかけていたところ、グラウンドではアナウンサーが主将の星子天真へ最後の質問を向けていた。

「それでは夏に向けて目標を聞かせて下さい」

これに、その名のごとく天真爛漫にして、勝負には誰より厳しい主将が、力強い声で返した。

「夏の頂点を獲って、3回目の春夏連覇を達成したいと思います!」

圧勝が続いても、一切の緩みやスキを感じさせない、堂々たる宣言だった。大阪桐蔭の指導者、選手たちはわかっている。準々決勝以降、相手投手陣は疲れ、本来の力を出せない中での“猛打”であったことを。相手エースが力通りに投げた初戦の鳴門戦では思うように打てず苦戦したことも。だからこそ、まだまだ、もっともっと。

­一方でインパクト十分のセンバツの結果に、これからの大阪桐蔭には、「あれだけ選手を集めていれば」といった見方がさらに強まるかもしれない。しかし、この春に敗れた相手チーム、選手たちが痛感しているのはおそらく「あれだけ集めているから」ではなく、「あれだけやっているから」。繰り返すが、力を持った者たちが意識高く、やるべきことをやっているからこその強さ。

今頃すでに生駒の山の中で新たな競争をスタートさせている春の王者はさらに強さを増し、夏の山を力強く登っていくのだろう。もっと上手くなりたい、もっと強くなりたい、という野球小僧の思いは誰も止めることはできない。

  • 取材・文谷上史朗撮影小池義弘

Photo Gallery3

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事