アスリートたちを「誹謗中傷」する人たちのヤバイ心理の正体 | FRIDAYデジタル

アスリートたちを「誹謗中傷」する人たちのヤバイ心理の正体

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選手が負けると自分の価値が下がる…!?

ネット上で誹謗中傷が止まらない。国会では侮辱罪の厳罰化に向けた議論が続いている。

コミュニケーション講座などを主宰する公認心理師の川島達史さんはこう分析する。 

「今は誰もが気軽にSNSに投稿でき、しかも匿名での書き込みも可能です。感情にブレーキが利きにくくなっていることは確かでしょう。 

誰かの行為や発言に負の感情を持ったとしても、自分自身を客観視できる人であれば、SNSに誹謗中傷を書き込むことはありません。それに対して、自分の行動を認識せず本能的に動くタイプの人は、思ったことをすぐに書き込んでしまいがちです」 

弁護士ドットコムが一般会員を対象に実施した「インターネット上の誹謗中傷」に関する調査では、「誹謗中傷を行った動機」について51.1%が「正当な批判・論評だと思った」と回答

昨今は世界で活躍するトップアスリートさえもターゲットにされ、心ない言葉を浴びせられている。頂点を目指し、努力を尽くして頑張る彼らまでがなぜ、誹謗中傷されなくてはならないのか。

「自分が所属意識を抱いている集団に好意的な感情を持つ「内集団バイアス」という心理傾向が関係しています。たとえばオリンピックで日本人選手を応援したくなるのは、その選手が試合に勝つと同じ日本人として自分の価値が上がるといった心理からです。つまり、同じ集団に属するその選手と自分を重ね合わせているわけです。 

逆に、世界で活躍しているアスリートがマイナスの発言や行動をすると、自分の価値を下げられたような気分になってしまう。自尊心が傷つけられたと感じるので、内集団から追い出そうとして誹謗中傷などの攻撃的な行動に出るんです。 

人は基本的に、どう転ぶかわからないことに興奮したり充実感を覚えたりする性質があります。スポーツは勝敗が伴うものなので、見る側は興奮して理性を失いやすい。その分、勝つか負けるかの世界にいるアスリートは、叩かれる頻度が他の分野の有名人より高いかもしれません」

サッカー日本代表の主将を務める吉田麻也選手が、今年の1、2月に行われたカタールW杯アジア最終予選に苦戦したことで森保ジャパンに向けられた批判に言及した際、こう話していた。「こういう時代なので、すごくねちっこい批判が多くなるけど、あまり気にせず自分たちのやるべきことに集中しないといけない」と。

昨年の東京五輪では、大坂なおみ選手が3回戦で敗退すると、ニュースサイトのコメント欄に批判的な投稿が多数寄せられた。また北京五輪では、ノルディックスキー・ジャンプ混合団体で高梨沙羅選手がスーツの規定違反により失格になったことで、ネット上でバッシングを受けた。

オリンピックや国際大会などの舞台に立つトップアスリートは世界中から注目を浴びるが、同時に誹謗中傷やアンチコメントのターゲットにされやすい立場に置かれることにもなる。

「応援と非難のバランスが崩れるのは、やはり敗れた時ですね。好きで応援しているアスリートほど期待が大きいものなので、それが裏切られると怒りに変わりやすいと思います」 

東京五輪では大坂なおみ選手が敗退した途端、SNSに非難のコメントが投稿された。中には最終聖火ランナーを務めたことを負けた原因と批判する書き込みも(画像:アフロ)

自分が描く「アスリート像」に反する選手は許せないという心理

北京五輪の個人ノーマルヒルで4位とメダルに届かなかった高梨沙羅選手は、メイクについても批判され、波紋を呼んだ。これぞ謂れなき中傷。そもそも、アスリートがメイクをすることの何がいけないというのか。

「スポーツ選手がメイクをすることに違和感を覚え、自分の価値観とずれていると感じると、メイクをしてジャンプ台に立つ高梨選手まで嫌いになってしまいます。アスリートに対して『こうあるべきだ』というイメージを持っていて、そのイメージと違う行動をとるアスリートは許せないとなるパターンじゃないでしょうか。あるいは、高梨選手の場合は中学生の時から活躍しているので、その頃の純朴なイメージとのギャップで叩くというのもあると思います」

高梨沙羅選手への「メイク批判」に、北京五輪ではアスリートたちから反論が続出。芸能人などからも擁護のコメントが寄せられた

ネット上での誹謗中傷の問題が深刻化し、発信者情報の開示を求める動きが急増している。

しかし、誹謗中傷は根本的には、書き込む人間のモラルの問題だ。書き込みそうになった時の対処法はあるのか。

「怒りのピークは6秒と言われています。かっとなった瞬間の6秒以内に誹謗中傷行為に走りやすいんです。心理療法では我に返る訓練をしますが、深呼吸するだけでずいぶん違う。腹式呼吸を5、6回繰り返すと、書き込まずに済むと思います」

感情に任せて書き込んだ言葉がアスリートの心をえぐり、成績ばかりか人生にまで影響を及ぼすことになるかもしれない。誹謗中傷やアンチコメントを投稿しそうになった時には、ひとまず深呼吸を。

川島達史(かわしま・たつし)公認心理師、精神保健福祉士。1981年、鳥取県生まれ。目白大学大学院心理学研究科現代心理学専攻。2006年、株式会社ダイレクトコミュニケーションを設立。首都圏を中心にコミュニケーション講座を開講している。著書に『結局どうすればいい感じに雑談できるようになるんですか』(サンマーク出版)『嫌われる覚悟「考え方」が変われば好かれるようになる』(マイナビ出版)『不安がスッと消え、誰とでもすぐにうちとける会話術』(明日香出版社)など。

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  • 取材・文斉藤さゆり

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