「猪苗代湖ボート死傷事故」裁判が混迷を極める複雑な背景 | FRIDAYデジタル

「猪苗代湖ボート死傷事故」裁判が混迷を極める複雑な背景

佐藤剛被告側は「治療費600万円」を支払うことなく、 一方で共同通信社などに対し計3300万円の損害賠償を求めて提訴

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初公判後、報道陣の取材に応じる瑛大君の両親。涙ながらに「瑛大は戻ってこないと突きつけられた」と語った

「(佐藤)剛君は会社の社長を辞めたので、いまは表立って仕事はしていません。しかし、元社長ということで、たまに工事の現場に行ったりはしているようです。裁判について奥さんと相談をするなど、今後の訴訟をどう進めていくか、色々と考えているようです」

そう語るのは佐藤剛被告(44)の親族の男性。’20年9月、福島県の猪苗代湖で遊んでいた豊田瑛大(えいた)君(当時8)がプレジャーボートに巻き込まれて死亡し、母親も両足切断の重傷を負った。この事故で業務上過失致死傷の罪に問われているのが、土木会社の社長だった佐藤被告だ。この事故の裁判が、いま混迷を極めている。

昨年12月27日、福島地裁で初公判が開かれた。佐藤被告は逮捕時から一貫して「身に覚えがない」と容疑を否認していたが、公判では一転して事故の事実を認めた。全国紙記者が語る。

「佐藤被告は『大切な命を奪い、重大なケガをさせたことはその通りで認めます』と語り、遺族に謝罪しました。ただ、事故時に『被害者は見えなかった』と自身の過失を否認した。しかし、それから3ヵ月以上が経ちますが、いまだに裁判の次回期日が決まっていないのです」

裁判の次回期日が決まらないのはなぜなのか。佐藤被告の弁護士に話を聞いた。

「裁判所や検事と争点整理などを行っています。頻繁に協議を行い、私自身も期日を早めてほしいと言っています。ただ、海事事故という特殊な事例なので、時間がかかっているというのはあります」

元東京地検公安部検事で弁護士の落合洋司氏が語る。

「通常、期日の間が空いたとしても2ヵ月ほどです。3ヵ月以上が経ち、まだ次回期日が決まっていないというのは、かなり時間がかかっています。裁判所が検察の立証に一定の疑問を持っている可能性が考えられます」

水上での事故は、道路での事故に比べて立証が困難になる。証拠となる血痕などの痕跡が水で流されてしまうからだ。検察の立証が難航しているとなれば、当然、佐藤被告の主張が認められる公算は大きくなる。

そんななか、裁判の本筋とは違う部分で動きがあるという。被害者側から佐藤被告に600万円の支払いを求めているというのだ。佐藤被告の弁護士が話す。

「被害者側から治療費の実費として、請求がありました。ただ、これは示談ではなく、あくまで治療費の話です」

通常、事故の賠償金は、治療費と慰謝料から構成される。慰謝料の部分については、今後の裁判で佐藤被告の過失が認められるかどうかで金額が変わってくる。そのため、先に治療費の部分を被害者側が請求したとみられる。しかし、佐藤被告はこの金銭をまだ支払っていないという。被害者の弁護士が話す。

「先方から治療費に関して分割で払うという話はして頂いていますが、現時点ではまだ1円も支払ってもらっていません。もう1~2ヵ月前の話ですが、まったく進んでいないのです。公判も進まず、お金のほうもそういった状況なので、ご遺族は不安を抱えています」

前出の親族は「剛君は『これで600万円を支払ったら、自分がやったと認めるようなものだ』と言っていました」と話す。佐藤被告は、弁護士の戦略で公判では事故の事実を認めたが、本音では「自分はやっていない」という思いが強いのだという。こうした理由から、支払いを渋っているとみられる。

その一方で、佐藤被告はこんな動きも見せている。3月22日までに、共同通信社と福島民報社を相手取り、訴訟を起こしているのである。前出・記者が話す。

「共同通信社が配信し、福島民報社が掲載した記事についてです。記事では、事故当日に撮影された動画に『やばい』などと慌てる声が記録されていたことや、佐藤被告が同乗者に口止めしていたことを報じていた。これに対して佐藤被告は、これらを事実無根として、計3300万円の損害賠償を求めているのです」

被害者からしてみれば、自分たちへの金銭の支払いは行わず、メディアを訴えることに執心しているようにしか映らないだろう。この件について被害者の弁護士は「こちらからコメントすることはありません」と回答した。

いったいこの裁判はどこへ向かうのか。前出・落合氏が話す。

「今回の事故だと、懲役2年半~3年、執行猶予3~4年程度の量刑が予想されます。ただ、佐藤被告が水面に浮かぶ被害者を認識できない状況だったと認められたら、無罪になる可能性も高いです」

はたして遺族が納得できるような結末

にたどり着けるのか。

佐藤被告が自身のSNSなどにアップしていた写真。以前は夏場は毎週のようにボートレジャーを楽しんでいた
事故発生直後、捜索を行う救助隊員たち。今回の事故については初動捜査のミスも指摘されている

『FRIDAY』2022年4月22日号より

  • PHOTO共同通信社 アフロ

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