コロナ蔓延もお構いなし…海外極悪刑務所「超密」内部写真
無数の男たちが、周囲の人間とほとんど間隔なく座らされている。全員が上半身裸で、掲げた両手は後頭部に。中には、身体中に刺青を入れた者もーー。
これは3月28日に中米エルサルバドルの大統領府が公開した、東部シウダバリオス刑務所の内部写真だ(1枚目の画像)。エルサルバドルでは、一日で60人以上の死者が出るほど犯罪者組織間の抗争が激化。オルテス大統領は非常事態宣言を発令し、取り締まりを強化している。
「写っているのは、有名な中米のギャング集団『マラ・サルバトルチャ』や『バリオ18』のメンバーです。構成員は、それぞれ3万人以上。麻薬密売、強盗、殺人、人身売買、強姦とどんな犯罪にも手を染める極悪組織です。オルテス大統領はギャング集団の撲滅なしに治安維持は達成できないと、メンバーを徹底的に摘発しています」(全国紙国際部記者)
刑務所に収容されたギャングメンバーは、定員の10倍以上。問題も多い。
「衛生状態は最悪です。消毒液や石鹸の供給もままならず、マラリアやチフスなど強力な感染症が蔓延することも多い。人数が多すぎて収拾がつかず、服役囚の健康を気遣うような状況にないんです。
国際人権団体『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』は、『中南米の刑務所や少年院は不衛生で過密状態』と注意喚起していますが不安は現実に。首都サンサルバドルにあるイザルコ刑務所では新型コロナウイルスが蔓延し、服役囚約1100人のうち300人以上が感染したそうです」(同前)
大統領の人気取りの手段に

「超密」な状態にあるのは、中南米の刑務所だけではない。アジアでも悲惨な状況が。代表的なのはフィリピンだ。
「刑務所によっては、定員300人のところ4000人が収容されています。30人が入る監房に130人以上が押し込まれることも日常茶飯事です。米国メディア『CNN』の報道によると、病気や服役囚同士のケンカで5人に1人が死亡。毎年5000人以上が刑務所で命を落としていると言われます」(同前)
刑務所が過密になるのには、それぞれの国の事情がある。犯罪情勢に詳しい、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が解説する。
「フィリピンに関しては、ドゥテルテ大統領が犯罪者の摘発に熱心なんです。ドゥテルテ大統領は就任前、『極悪人の巣窟』と呼ばれていたダバオ市の市長を長く務めていました。犯罪者を片っ端から逮捕し治安強化に力を注いだことで、全国区の人気を得たんですよ。
大統領になってからも、超法的な態度でギャング集団と対峙。万引きのような微罪でも、容疑者を刑務所に送っています。刑務所を、自身の人気取りの手段として利用しているように見えます」
ドゥテルテ大統領は市長時代に、自ら大型バイクに乗って事件が起きそうな路地をパトロール。犯罪者を見つければ射殺し、強姦容疑者をヘリコプターから投げ落としたこともあると、16年10月の『ロイター通信』の取材に答えている。
中南米は、フィリピンと少し事情が違うようだ。黒井氏が続ける。
「ギャング集団の力が、とても強いんです。国によっては、ギャング集団に丸め込まれてしまっています。政府が国の指導的立場を維持するには、強硬な手段に出るしかない。エルサルバドルは、その典型でしょう」
日本人には、想像もつかない海外の凶悪犯罪事情。コロナや衛生状態を気遣っていては、治安は維持できないようだ。





写真:SALVADOREAN PRESIDENCY/AFP/アフロ ロイター/アフロ