バーバリーロスから6期連続赤字も三陽商会に見えた「苦境の終焉」 | FRIDAYデジタル

バーバリーロスから6期連続赤字も三陽商会に見えた「苦境の終焉」

バーバリーロスとコロナ禍というダブルパンチの「三陽商会」に春の気配が…

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「バーバリーブルーレーベル」「バーバリーブラックレーベル」の輝きはどこへ?

3月下旬、三陽商会が2022年2月期連結の下方修正を発表しました。当初は売上高415億円、営業利益1億円、経常利益5000万円と黒字化を見込んでいましたが、これを売上高386億円、営業損失10億円、経常損失7億円に修正し、6期連続で赤字となりました。当初は黒字化される見通しでしたが、コロナ禍の延長による売れ行き不振や燃料費・原材料費・輸送費の高騰の影響を強く受けたといえます。

とはいえ、21年2月期は営業赤字89億1300万円、経常赤字90億3600万円だったことと比べると今回の赤字は大幅に改善されており、三陽商会の苦境にもようやく終焉が近づいてきたのではないでしょうか。

引退するまでファッションアイコンとして輝き続けてきた安室奈美恵さん。「アムラー」という単語が流行語大賞に登場したのは1996年(撮影:川上孝夫)

三陽商会の長引く苦境の最大の原因は、バーバリーとのライセンス契約が2015年春夏物で終了したことです。三陽商会とバーバリーのライセンス契約は40年間の長きにわたっており、2010年代になると、三陽商会の売上高の半分前後を占めていたと言われています。(バーバリー事業の業績は非公表だった)2013年12月期連結の売上高は1064億円あり、その半分前後(500億円内外)をバーバリー事業が占めていたと見られています。いきなり500億円内外の売上高が消えるわけですから、業績が悪化するのも当然でしょう。そして2020年から続いているコロナ禍によって、6期連続の赤字ということになってしまいました。

6期連続の赤字もさることながら、個人的には1000億円強もあった売上高が386億円にまで縮小してしまったというところに強い衝撃を受けます。バーバリーロスとコロナ禍というダブルパンチによる不採算事業の撤退が要因とはいえ、これだけ縮小してしまえば舵取りは難しくならざるを得ません。

サンヨーコートなどでお馴染みの三陽商会の長引く苦境の最大の原因は、「バーバリー」とのライセンス契約が2015年春夏物で終了したこと(写真:アフロ)

契約解消は、日本での「バーバリーブルーレーベル」の成功に触発されて?

バーバリーが日本でこれほどの人気を博するようになったのは、40年間にも及ぶ三陽商会の地道な取り組みがあればこそでしょう。三陽商会はライセンスブランドに頼りすぎているという批判もあり、それは的確ではありますが、それでも個人的にはこれまでの三陽商会の取り組みもそれなりに評価したいと思っています。何よりも起爆剤となったのは、96年に開始したバーバリーブルーレーベル、98年に開始したバーバリーブラックレーベルという若者向け商品だといえます。

96年に開始したヤングレディース向けのブルーレーベルは人気歌手だった安室奈美恵さんのモデル起用をきっかけに爆発的な人気となり、アムラー人気と相まって凄まじい過熱ぶりとなりました。この成功によって98年にはヤングメンズ向けのブラックレーベルが開始され、こちらは20代・30代の男性から厚い支持を受けました。当時のイケてる若いサラリーマンはブラックレーベルのネクタイやらワイシャツやらをこぞって着用していました。

この両ラインについて、アパレル業界内には「三陽商会が勝手に開始してブランド価値を弱めた」と批判する声もありますが、個人的には、それまでオジサン向けだったバーバリーというブランドを若者が注目するブランドに変えたという功績の方を評価したいと思います。

97年以前に若者でバーバリーを着ている、バーバリーに注目しているという人はほとんどいませんでしたし、百貨店でもミドルエイジ向け売り場にしかバーバリーはありませんでした。また、個人的な感想を言うと、バーバリー本国が三陽商会との契約終了後、ブランドのトレンドファッション化を推し進めていること考慮すると、三陽商会の当時の方針は必ずしも間違いではなかったのではないかと思います。もっと想像をたくましくすると、日本でのバーバリーブルーレーベルの成功に触発された部分もあるのではないかと思ってしまいます。

三陽商会のバーバリー事業が推定で年間売上高500億円内外にまで成長できたのは、まぎれもなくブルーレーベル、ブラックレーベルの功績だといえます。

まさにアムラー風にバーバリーチェックを着こなしているのは、トップモデルのイリーナ・シェイク(写真:アフロ)
アメリカの高級デパートの社長だったローズマリー・ブラヴォーが社長兼CEOに就任し、バーバリーの改革に着手したのは97年。その後、マドンナをはじめ世界中のセレブお気に入りブランドのひとつに(写真:アフロ)

いまも続いていた「バーバリー」とのライセンス契約…

さて、みなさん、この超人気レーベルだったブルーレーベル、ブラックレーベルが今どのようになっているのかご存知でしょうか?

バーバリー無き後、6期連続の赤字とはいえ、三陽商会とて決して無為に過ごしていたわけではありません。バーバリーの代わりとして新ライセンスブランド「マッキントッシュ ロンドン」を開始しています。またブルーレーベル、ブラックレーベルの代わりとして「クレストブリッジブルーレーベル」「クレストブリッジブラックレーベル」を開始しています。

ただし、いずれも6年が経過した今もバーバリーほどの売上高には成長していないというのが実態です。それは386億円にまで落ち込んだ売上高を見れば如実にお分かりになるでしょう。

実はこの「クレストブリッジ」というブランドは、アパレル業界では広く知られていますが、一般的にはあまり知られていないように感じられてならないのですが、何とバーバリーとのライセンス契約ブランドなのです。

バーバリーとのライセンス契約解除によって、バーバリーの馬マークと独特のタータンチェックである「バーバリーチェック柄」の使用、バーバリーというブランド名の使用は禁止されましたが、クレストブリッジというブランド名の使用と、クレストブリッジで使用されているハウスチェック柄の使用は認められたのです。

バーバリー本社からすれば、40年間に渡ってブランドを育てた功績と、若者向けを開拓したという功績を考慮したというところでしょうか。

しかし、いくらバーバリー本社との新たなライセンス契約ブランドだとしても、そのことが一般的にはあまり知られていなければ意味はありませんし、一口に「チェック柄」と言ってもバーバリーチェックとハウスチェックでは柄自体が違いますから同じような売れ行きになることはあり得ません。

またこのクレストブリッジは、開始当初からデザイナーの三原康裕氏、21年春夏からはデザイナーの江角泰俊氏をクリエイティブディレクターとして起用し続けており、それなりに力を入れていますが、目に見えた効果が出ていないのが現状です。

ブルーレーベル、ブラックレーベルの大ヒットデビューはもう25年前のことになり、その当時の若者と今の若者とでは、消費行動やファッションの好み、購買販路などがすっかり変わってしまっていますから、往年の輝きを取り戻すのは極めて難しいのではないでしょうか。

2022A&Wロンドンファッションウィークのバーバリーのショウでキャッチされたプロスケーター、アーティスト、モデル、デザイナーのブロンディ・マッコイ(写真:アフロ)
  • 南充浩(みなみみつひろ)

    1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。

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