自動車事故で右足切断危機だったウッズが戦い抜いた理由 | FRIDAYデジタル

自動車事故で右足切断危機だったウッズが戦い抜いた理由

わずか14ヵ月前、瀕死の重傷を追ったタイガー・ウッズがマスターズで奇跡の復活をとげるまで

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瀕死の重傷から14ヵ月でマスターズに復帰したタイガーウッズは18ホールを戦い終えて、同組のジョン・ラームと握手(写真:アフロ)

昨年2月21日、自らがホストを務めるPGAツアー「ジェネシスインビテーショナル」の最終日の翌日、ロサンゼルス郊外で自動車事故を引き起こし、瀕死の重傷を負ったタイガー・ウッズ。右足を切断する恐れもあったほどの大事故で、特に右足は複雑骨折してネジやプレートなどを足に埋め込む緊急手術を受けるほど重症だったが、その後は優秀な医師の治療と、家族や友人などの「チームタイガー」の献身的なサポートにより、14ヵ月後にはアップダウンの多いオーガスタでプレーできるほどの奇跡的な回復を見せた。

2020年11月の「マスターズ」以来、1年5ヵ月ぶりにツアー競技に復帰し、19位タイの成績で見事予選通過。だがやはり、足に怪我を負いながらのラウンドはつらかったようで、ホールアウト後には、マネージャーに抱えられながらコースを後にする姿も……。4日間を終えて、13オーバーの47位に終わった。

「僕のチームは、本当に一生懸命やってくれて、信じられないほどすばらしいサポートをしてくれている。手術も素晴らしかったし、毎日やっている理学療法も申し分ない。でも、何よりも大事なのは僕にメッセージを送ってくれたり、電話をくれて心配してくれる友人たち。彼らにも直接会って感謝したい」

彼は「マスターズ」が始まる1週間前に息子のチャーリーくん、ジャスティン・トーマスとともにオーガスタを訪れ、テストラウンドを行った。その日はパー3コンテスト(水曜日の午後に行われるマスターズの伝統のイベント)で使用される9ホール(パー3コース)までプレーしたというから、合計27ホールをプレーしたことになるが、ラウンド後、足の腫れはあったものの、すぐに回復。ショットとともに、体調面もチェックし、試合に出られそうだと踏んだようだ。

タイガーは以前から「優勝するために試合に出る。優勝できないと思えば試合には出ない」と言い続けてきた。今回は、瀕死の大事故が起こった後、1年余りしか経過していない状況で、歩くのもやっと。年末にはチャーリーくんと親子でPGAツアー非公式試合「PNC選手権」に出場し、2位に入賞したが、この時もカートを使ってラウンドしていた。そんな状況であるから、普通なら「4日間、完走できるかどうかわからないが、まずは競技に出て様子をみたい」という人がほとんどだろう。あるいは最初から「マスターズでプレーしよう」などとは思わないかもしれない。

だが、タイガーは違う。記者に「今週のマスターズでも勝てると思うか?」の問いに、「思う」とはっきり答えたのだ。

「今は歩くのが一番難しいところだが、肉体的にはゴルフをすること自体、何も問題ない。オーガスタは簡単に歩ける場所ではないし(アップダウンがきついため)、72ホールを歩くには長い。タフだが、挑戦したい」

実際、タイガーの組について、どんな歩き方をしているのか、どんなスイングをしているのかを現場で見てみたが、足の動きは硬く、突っ張るような感じだった。グリーン上ではいつものようにヒザを完全に曲げてラインを読むことはできない。若干、ヒザを曲げながら、前傾してラインを読んでいるが、柔軟性のないシニアの選手のような動きだ。また、歩く際の歩幅も狭く、タイガー本来のアスレチックなウォーキングとは程遠い。

それでもスイング中は、重傷だったことを感じさせないほどのダイナミックな動きを見せ、精度の高いアイアンショットで、ピンそばにピタリとつけ、パトロン(マスターズではギャラリーのことをこう呼ぶ)から大歓声が沸くことも多かった。ティショットが曲がっても2打目でドローやフェードを打ち分けながらリカバリーし、グリーン周りの小技のうまさは、全盛期時代と遜色ない。

昨年2月21日、自らがホストを務めるPGAツアー「ジェネシスインビテーショナル」の最終日翌日、ロサンゼルス郊外で自動車事故を引き起こしたときの現場

試合が始まる前は「自分のゲームは本調子ではない」と語っていたものの、日を追うごとに感覚を取り戻し、予選通過を決めた2日目のラウンド後には「距離感やショットのコントロールが徐々に出てきた。ボールのライを見て、感じ、残りの距離の数字通りに打つだけ。考えるよりも、自分の技術を出せればいいプレーができる」と語っていた。

もちろん、足の痛みがなくなっているわけではないから、日々のケアにはかなりの時間をかけ、翌日のラウンドに備えなければならなかった。

「チームのみんなが、僕が試合でプレーできるように、苦心しながら準備をしてくれている。NASCARのように、壊れたら治す、という感じだ。プレー前のケア、プレー後のケアにはかなりの時間がかかる。特にプレー後はずっとアイシングしているよ」

オーガスタナショナルは、テレビで観ているよりも傾斜があり、アップダウンもきつい。

「足には棒やプレート、ピン、ネジなどいろいろなものが入っているから、足首が通常通りには動かないし、たくさんのことはできない。球を上げようとすれば、後ろに重心がかかるし、つま先上がり・下がりのライであれば、まともに負担がかかってしまう。一番大事なのは足首だ」

かつてメジャー9勝、PGAツアー64勝を挙げた、ベン・ホーガンというレジェンドがいるが、彼は1949年に自動車を運転中、バスと正面衝突し瀕死の重傷を負ったことがあった。医師からは「二度と歩くことすらできないのでは?」という診断も下ったそうだが、わずか11ヵ月後に「ロサンゼルスオープン」でツアー復帰を果たし、プレーオフの末2位に。その5ヵ月後にはメリオンカントリークラブで開催された「全米オープン」で優勝したのだ。

当時ホーガンは36歳だったため、46歳のタイガーと比較すれば、体力、回復力という面では上だったかもしれない。ただ、現代の医療技術は格段に進んでいるため、46歳のタイガーでも奇跡的に「マスターズ」でプレーすることができたと言えるだろう。タイガー自身、ホーガンの奇跡のカムバックを心の支えに「自分もまだまだやれる。優勝できる」と日々リハビリに励んでいるに違いない。

今後は、試合数を選んで出場すると発表しているが、次の試合は早ければ5月の「全米プロ」だろうか?今回の「マスターズ」では相当肉体を酷使し、足の痛みも出ているはず。しばらくはゆっくり静養し、体の回復を待って、また「全米プロ」あるいは「全米オープン」でタイガーのプレーを見られることを楽しみにしたい。

事故から4ヵ月ほど経過した2021年6月、ロスの空港に姿を見せたときのタイガー・ウッズ。この時はまだ歩行に杖が必要だった
今年のマスターズでグリーン上でラインを読む。右ヒザがまだ完治していないため、ヒザを完全に曲げてラインを読むことはできなかった
2019年、マスターズで優勝したとき、グリーン上でのタイガー。この時は完全にヒザを曲げてラインを読んでいた
今年のマスターズでの一コマ。ウッズはテレビで見るよりキツい傾斜を歩いて4日間、戦い抜いた
2019年、マスターズを制した瞬間。この快感を追い求めているのだろう
  • 取材・文大泉英子

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