体操・世界選手権 中国製の器具でニッポンは金メダルゼロ | FRIDAYデジタル

体操・世界選手権 中国製の器具でニッポンは金メダルゼロ

白井健三の父が「中国のあくどい手口」に警鐘を鳴らす

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世界選手権の種目別決勝、床運動に出場した白井。3連覇は叶わず大会後には「本当に辛かった」と語った
世界選手権の種目別決勝、床運動に出場した白井。3連覇は叶わず大会後には「本当に辛かった」と語った

「大会後、健三はロッカールームで涙を浮かべていたといいます。息子が泣いたのは、リオ五輪の前に祖父と祖母が亡くなって以来。体操競技で涙を見せたのは初めてです。自分の実力ではなく、器具が原因でベストなパフォーマンスが出せなかったのがよほど悔しかったのでしょう。調子は絶好調でしたから。帰国後は、『今回の世界選手権は本当に長かった。もう終わったこと。思い出したくもない』と、記憶から消そうとすらしていました」

こう語るのは、体操・白井健三(22)の父・勝晃(まさあき)氏(59)だ。

先月25日からドーハ(カタール)で行われた体操世界選手権は、日本勢にとって散々な結果に終わった。注目の白井は3連覇がかかっていた床運動で銀メダル、内村航平(29)も鉄棒で銀メダルに散り、まさかの金メダルゼロ。前回優勝の団体でも日本は銅メダルに終わった。

この惨敗のウラにあるのが、中国メーカー「泰山(タイシャン)」の器具だ。過剰に硬いのに、まるで反発がない――。かねてから悪名高かったこの中国製器具の影響で、日本選手たちは苦戦を強いられた。勝晃氏が続ける。

「私は長年世界選手権を現地で観戦していますが、今回はその中でも間違いなく最低の大会でした。大会後、世界6ヵ国以上のナショナルチーム指導者から私の元に『中国製の器具が五輪でも採用されるなら、選手があまりに不憫(ふびん)だ』という怒りと嘆きが混じったメールが何通も届いたくらいです。会場では『体操ってこんなに失敗ばかりする競技なの』と途中で席を立つ人が続出して、空席も目立った。あん馬に至っては全出場選手の80%にあたる、およそ120人の選手が失敗するという前代未聞の事態でした」

この中国製器具が競技に与える悪影響は、想像以上に甚大だ。現在、FIG(国際体操連盟)は、技の難度をA〜Iの間で細かく分けているが、白井のような特定の演技に強いスペシャリストはそこでH〜I難度の技を演じて高得点を稼ぐ。だが、世界選手権では中国製器具のせいで、半ば強制的に演技構成のレベルを落としていたのだ。自身の十八番であり高得点が望めるオリジナル技、「シライ3」も披露することは叶わなかった。

「健三は幼少期からトランポリンでジャンプをしていた影響で、演技中に踵(かかと)が床に着かないクセがついた。それは着地が苦手、という短所にもなりました。ただその半面、ウサイン・ボルト並みの数値と認定された、並外れた跳躍力にも繋がっています。得意の4回ひねりなどの大技も、その賜物なんです。ただ今回、H難度の『シライ3』を繰り出していたら、選手生命が危ぶまれる可能性すらあった。健三の『心が折られるような器具だった』という発言には、本当に胸が痛みました」(勝晃氏)

命すらも脅かされる

白井だけではない。選手の中には器具への不安から、命の危険すら感じていた者もいたという。

「器具への適応力が高く、普段一切言いわけしない内村でさえ、『これは無理だ』と断言していました。それどころか『この器具でやるのは命がけ』と演技自体をためらう選手すらいたほど。今年8月のアジア大会も中国製で、今回もそうだった。世界中を見渡しても、得をしたのはこの器具を使い慣れている中国選手だけです。全体の演技レベルは著しく低調だった。このままでは、体操自体の人気低迷につながる可能性すらあります」(体操協会関係者)

大会後、中国製器具に非難が殺到したことで、東京五輪では日本、フランス、ドイツのメーカー3社の器具が使われることが決定した。なぜ、世界選手権では劣悪な中国製器具が採用されたのか。スポーツライターの小林信也氏が語る。

「今回の世界選手権後、内村選手が『体操が楽しくない』と発言しましたが、あの言葉にすべてが凝縮されています。器具は本来、選手の能力を引き出すサポートをするもの。ですが、今のスポーツ界では、国の政治力や商業的な要素が強くなりすぎている。その結果、”アスリートファースト”の精神が弱まり、選手たちが十分なパフォーマンスを発揮できない状況になっている。とくに今回、器具の恩恵もあって”独り勝ち”した中国は、五輪でも国家絡みで策略を仕掛けてくる可能性があります」

メダルを取るためにはなりふり構わず、国家レベルであくどい手口を仕掛けてくるのは中国の常套手段とも言える。本当の実力者がメダルを取れるよう、目を光らせる必要があるだろう。

神奈川県内の体操クラブで取材に応じた白井健三の父・勝晃氏。中国製器具の劣悪さに危機感を募らせる
神奈川県内の体操クラブで取材に応じた白井健三の父・勝晃氏。中国製器具の劣悪さに危機感を募らせる

 

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  • 写真松尾/アフロスポーツ撮影濱﨑慎治

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