ウクライナ避難民と難民のために知るべき「入管法改悪」の問題点 | FRIDAYデジタル

ウクライナ避難民と難民のために知るべき「入管法改悪」の問題点

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ウクライナから避難する人々を救いたい。そしてその他の全ての国の難民たちを守りたい。「もうこれ以上、一人の命も失いたくない」という悲痛な声が日に日に高まっている
ウクライナから避難する人々を救いたい。そしてその他の全ての国の難民たちを守りたい。「もうこれ以上、一人の命も失いたくない」という悲痛な声が日に日に高まっている

「外国人が増えると犯罪が増える、というデマが聞かれます。これは、まったくの嘘。真実とはかけ離れた悪質なデマです。日本の政府は外国からの難民に対して、国際的に見てかなり冷淡。こういったデマを許す社会を作っているのは、ほかならぬ政府じゃないかとすら感じます」(弁護士・高橋済さん)

ウクライナからの「避難民」の受け入れを進めている日本政府。戦争に巻き込まれた市民を保護することは重要だし、一刻を争う。が、その一方でこれまで難民として日本にやってきたその他の国々の人たちに対して「日本がやってきたこと」が今、大きな問題になっている。そんななか、4月19日、「入管を変える!弁護士ネットワーク」が、緊急の勉強会を開いた。

「ウクライナの人のためという名目で、入管法を『改悪』することは、有害無益でしかありません」

同ネットワークの弁護士、駒井知会さんは、こう言う。

外国から「助けを求めて」来日する人たちの過酷な運命

「たとえば、政治活動に関わって、国から逃げ出さなければならなくなったウガンダの人たちがいます。国際条約に鑑みて、明らかに難民なんですが、それを認めないケースが少なくありません。内戦状態になって多数の人が殺戮されているカメルーン英語圏から逃げてきた人もいます。彼らは、祖国に帰ったら命を奪われる危険がある。けれども日本では、なかなか難民として認められません。

何年も待たされ、その間に施設に収容されたり、仮放免で出られても、働けない。日々生活するお金もなくて苦しんでいる人を何人も知っています。今日、食べるものがない、住む場所がない、身体が痛いけど病院に行けない…という人が大勢いる状況です。この人たちの命も、ウクライナの人々と同様に守らなければならないと思います」(駒井弁護士)

ちょうど1年前、「入管法改正/改悪」の議論があった。政府は、外国からの難民に対し、難民申請中に「帰国による危険」などの判断がでない人たちを強制送還できるようにしたり、「処罰」するという「改正案」を国会に提出した。誰彼構わず「収容」できる法律が放置され、収容された先の入管施設の運営は、現場任せの「裁量」が広く、収容者は過酷な環境におかれる。3月には、スリランカ出身の女性が、入管施設の誤った対応のために命を奪われた。

「ウイシュマさんの死によって、入管の問題に注目が集まり、大きな世論になりました。その結果、昨年の改悪案は廃案になった。それが今、ウクライナからの避難民を受け入れるため、という名目で、廃案になった『改悪』部分も抱き合わせの形で通されようとしているんです。

ウクライナの人々を受け入れるためなら、現行法の規定のなかで、十分に対応できるんです。それなのに…入管法全体を変えようとしている。明らかに他の『意図』があるんです」(弁護士・指宿昭一さん)

「ウクライナ」にだけ、手厚く素早い理由は

ロシア軍の攻撃にさらされ、国民の1割を超える人々が国外に脱出しているウクライナ。隣国のドイツをはじめ欧州各国が彼らを受け入れている。日本も、開戦から1週間後の3月2日に岸田文雄首相が受け入れを決めた。

「岸田首相のウクライナ難民受け入れは、いつになく早い決断でした。『電光石火』とニュースになったほどです。そのころ、日本国内でもウクライナの人々との連帯が叫ばれ、ウクライナに心を寄せる声が大きかった。…夏には、参院選挙がありますから、こういった国民の声にいちはやく反応した、という見方もあります」(政治部記者)

一度廃案になった法案を復活させようとする背景には、さまざまな「きな臭さ」があるという。

「ウクライナの人たちに手を差し延べることはもちろん、すべきことです。が、それを理由に他の国々から避難してきた難民たちに対する対応をより後退させる法案を再提出しようとしていることには、怒りを覚えます。今回の政府の提案は、ごく控えめにいって『火事場泥棒』のようなものです」(駒井弁護士)

「外国人に冷たい」理由を考える

日本政府は、あるいは一部の日本の市民は、なぜここまで外国人に「冷たい」のだろうか。

「難民の問題も深刻ですし、技能実習生のおかれた現状も過酷です。

今、日本の経済は外国人の労働力なしには回りません。深夜のコンビニで働いている人、人手不足の農家で技能実習生として働いている人、みんな、この国を支えているんです」(高橋弁護士)

「外国人がいると治安が悪くなる」と、まことしやかに言う人がいる。

「外国人が増えると犯罪が増える、というデータはありません。むしろ外国人による犯罪は『減っている』んです。在留資格がないのは、犯罪歴があるから、というのも間違いです。難民申請の濫用は、全体のわずか2%程度という数字もあります。これらは全て、公の機関による調査結果です。なのに、悪質なデマがまかり通っている。しかも、立場のある人がそういうデマを平気で流すこともあります。日本が、外国人に冷たい理由…政権の思惑としか、考えにくいですね」(高橋弁護士)

ウクライナから、その他の全ての国から、難を逃れて日本にやってきた人たちを保護していくことは、国際社会のなかで重要な役割だろう。今、ウクライナから日本に逃れてきた人は664人。この人々へは「避難民証明書」が発行されることになった。

ウクライナ「避難民」に注がれる連帯の思いが、広く外国の人々に向けられるとき、日本が変わる。強いものだけが「いい目」をみるのではなく誰もが生きやすい社会ができるのではないだろうか。今、この国の真価が問われている。

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