消費者庁VS大幸薬品「クレベリン」をめぐる8年戦争の行方 | FRIDAYデジタル

消費者庁VS大幸薬品「クレベリン」をめぐる8年戦争の行方

コロナ流行で大きく飛躍した「空間除菌剤」。背後には政府の「お墨付き」の影響も……

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「正露丸」で有名な大幸薬品。右は同社の柴田高社長

「消費者庁は4月15日、大幸薬品に対して、措置命令を出しました。同社の空間除菌剤『クレベリン』の『空間に浮遊するウイルス・菌の除去』という表示に対して、合理的な効果はなく、景品表示法に違反するとして、こうした表示をやめることなどを求めたのです。これは同月13日に東京高裁が大幸薬品に下した判断を受けてのもの。しかし、業界内には『大幸薬品は上告するのではないか』という声も出ています」(全国紙社会部記者)

大幸薬品といえば、ラッパのマークの胃腸薬『正露丸』でお馴染みだろう。しかし、同社の隠れた主力商品が空間除菌剤『クレベリン』なのだ。そんなクレベリンをめぐって、いま消費者庁と大幸薬品の間で壮絶な争いが起きている。前出・記者が話す。

「昨年11月、消費者庁は大幸薬品に対して、クレベリン6商品(置き型タイプ、スティックタイプ、スプレータイプ)の表示に対して、措置命令についての弁明の機会を付与しました。これに対して、大幸薬品は措置命令の差し止め裁判を起こしたのです。これはメーカーとしては、異例のアクションです。

今年1月、東京地裁はクレベリンの置き型の2商品については効果を認めたものの、それ以外の4商品については合理的な効果は認められないという判断を下しました。これに対して、大幸薬品と消費者庁の双方が控訴するという事態に陥ったのです」

高裁の判断が下されたのが、4月13日のこと。高裁は4商品だけではなく、地裁では効果が認められていた置き型の2商品も「空間除菌をうたう合理的な根拠はない」と判断した。大幸薬品としては、藪蛇になったと言える。

そもそも空間除菌剤をめぐる大幸薬品と消費者庁の争いの発端は、8年前にさかのぼる。’14年に消費者庁が大幸薬品など17社に、販売している空間除菌剤には、「空間を除菌できる」などの宣伝を裏付ける証拠はないとして措置命令を出した。このとき、大幸薬品はメディアの取材に対し、「誤解のない表記に努めたい」などとコメントしていた。

そんななか起きたのが、新型コロナの流行だ。世の中が「とにかく除菌をしなくてはいけない」と躍起になっている最中、空間除菌剤の売り上げはどんどん伸びていった。大手製薬会社の関係者が語る。

「空間除菌剤の市場規模は、新型コロナの流行で大きく拡大しました。置き型では’18年度までは50億円規模と言われていましたが、’19年度、’20年度で一気に100億円規模になった。そのなかでもクレベリンは市場の約8割を占めています」

大幸薬品にとって、コロナ禍は大きな転機となった。

「大幸薬品は’20年から決算を3月期から12月期に移行したため、’20年12月期決算は9ヵ月分しかありません。にもかかわらず、大幸薬品の’20年12月期のクレベリン関連の事業は約140億円(’20年2月期決算では1年間で約93億円)。大幅に増加したのです」(同前)

クレベリンの各商品。コロナ流行初期には品薄状態になるほどだった

これだけではない。同社は’20年4月に大阪府にクレベリンを1万個寄附した。この実績で’21年7月に政府から「紺綬褒章」を授与されているのだ。紺綬褒章とは、公益のために多くの私財を寄附した人物や組織に贈られる褒章のこと。

「大幸薬品は紺綬褒章を授与されたことを自社のホームページで大々的に取り上げています。褒章というお墨つきを得たことは、クレベリンの売れ行きにも大きな影響を与えたと考えられます」(同前)

しかし、昨年11月から消費者庁との争いに再び火がつき、4月13日に高裁判決が下されたのはご覧いただいたとおりだ。

今回の高裁判決でクレベリンが「合理的な根拠なし」という判断が下されたことについて、大阪府健康医療部に取材を申し込んだところ、以下のように回答があった。

「今回の東京高裁による判決は、裁判所において審理が尽くされた上でのものと認識しており、裁判の当事者でない大阪府が判決内容について、コメントする立場にはございません」

褒章について担当している内閣府賞勲局総務課にも取材を申し込んだところ、こう回答した。

「個別の授与の理由については、お答えいたしかねます」

お墨付きを与えたにもかかわらず、いざその商品について疑義が呈されると、知らぬ存ぜぬというわけだ。前出・製薬会社関係者が話す。

「実は大幸薬品は’21年12月期決算で95億円の赤字になっています。これはクレベリンの販売が計画を大きく下回ったことが大きな要因です。ここで高裁判決が確定してしまえば、大きなイメージダウンになる。そもそも今回の訴訟を提起しただけでも驚きでしたが、いま業界では『大幸薬品は上告して、まだ戦いを続けるのではないか』と言われています」

4月25日、大幸薬品に高裁判決と、上告の意向について取材を申し込むと、以下のような回答があった。

「本決定による今後の対応につきましては、決定内容を精査した上で検討いたします。(上告するかどうかは)現時点では何も申し上げられません」

「8年戦争」はまだまだ続くかもしれない。

  • 撮影共同通信社

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