サッカーW杯出場を決めても森保監督がネット上で叩かれ続ける理由 | FRIDAYデジタル

サッカーW杯出場を決めても森保監督がネット上で叩かれ続ける理由

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敵地で豪州代表を撃破。オーストラリアを破り7大会連続のW杯出場を決めた後、サポーターと写真に納まる日本代表・森保一監督(写真:共同通信)

3月、森保ジャパンはオーストラリアでW杯切符を掴んだ。最終予選の6連勝とアウェイ・オーストラリアでの勝利はともに日本代表史上初のこと。結果だけ見れば最強ジャパンなどと呼ばれてもおかしくないはずが、どこかすっきりとしない感触が残る。

立ち上げ以来3年半近くが経過したが、成長や強化が見た目にわかりづらく、チームとしてのストロングポイントも見出しづらく、見ていて面白いサッカーとも言い難い。要するに圧倒的な結果の一方で、見ている側にとって納得の内容ではないのだ。その乖離がすっきりしない感触の一つの原因でもあるだろう。

そんなことも理由なのだろうか、森保ジャパンへのネット上の批判も過去に類を見ないほど展開された。

<言ってる事とやってる事がいつも違う。その場しのぎの発言が行動としてこの3年半に表れてるよ>

<早く解任してくれ。あんな意味不明なスタメン、選手交代、戦術?いい加減にしてくれ>

(ゲキサカ 3月29日 日本vsベトナム 試合後の森保一監督会見要旨についたヤフーコメントから引用)

<選手も見てる方もしんどかったし、批判もされたと思うけど結果W杯に行けるということで本当によかったです>

<ワールドカップ出場おめでとうございます。中々厳しい戦いばかりでしたが終わってみれば首位。結果を出した代表の方々を誇らしく思います>

(ゲキサカ “救世主”三笘薫が伝説的2ゴール!! 森保J、敵地オーストラリア撃破でカタールW杯行き決定についたヤフーコメント)

突破直後の記事に対してでさえ手放しで喜ぶというよりも一言物申すコメントが多く、試合内容への不満から批判まで様々だが、選手よりも指揮官に対してのものが多かった。ただ、これも実際に接触し、交流のある人間の反応とは大きくかけ離れている。

例えば実際に親交のある川淵三郎氏などは「腹が据わっているよ。驚いたね。個人的には(この腹の据わり方なら監督を)任せられるとも考えた。とことんいくしかない」などと話し、絶対の信頼を寄せる。

また、取材現場の雰囲気も和やかで、前回2018年のロシアW杯前のハリルホジッチ監督時代のピリピリ感はなんだったのかと思うほどだ。3月の突破を決めたオーストラリア戦後は深夜2時頃にオンラインでの取材対応が終わったのだが、朝7時に異例の対面での取材会も行われた。

取材自体は短時間で終わったが、せっかく現場まで来た方へと気遣う広報と、それを受け入れる森保監督の人柄がこのムードを作り出していることはよくわかる。早朝の取材会など監督自身が「それはやりたくない」と言ってしまえば成立しなかったわけだ。そのムードはネットメディアのユーザーコメントやSNSといったソーシャルメディアで展開される議論のそれとは大きくかけ離れている。

昨年11月16日、ワールドカップアジア最終予選でオマーン代表に勝って3連勝とした試合直後のTwitter。W杯出場がおぼろげながら見えてきた状況になったが、「#森保解任」のハッシュタグがトレンド入りした

このような乖離はなぜ起こるのか。山口真一 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授に聞いた。山口氏は著書「ネット炎上の研究」などがあるネットメディア論の専門家だ。

「大前提として、会った人が悪口を言わないというのは当たり前の話で、会った人はむしろ人柄を重視するわけです。ネットで書き込む人は人柄は二の次で、采配はどうか成績は、という点しか見ていないわけです」

その前提の上で、スポーツは炎上しやすい分野であると説明する。

「野球やサッカーといったスポーツは自分なりの“俺理論“を持っている人が多い。以前であればそれらは居酒屋で消えていた言葉だったのが、ネット上に残り続けるというのはあるんです。また、一部の人たちの間に流れる暗黙の規範というものに反していると批判されやすいというのがあります。一部のサッカーファンの間でこういう采配であるべきだというような哲学があって、それに反していると叩かれる、というようなことはあります」

一方で、サッカーに限らず一般にインターネットにはネガティブなコメントが書き込みやすいとも指摘する。以下の説明はサッカーに限った話ではなく一般論だ。

「ヤフコメなどに書き込む人はそもそも非常に強い思いを持った人たちで、表出する意見は極端で否定的な意見がでやすいというバイアスがあります。さらに、私のネット炎上に関する研究では、60から70パーセントの人が、『相手が許せない』『失望したから』という正義感で書いていることがわかっています。ただ、ここでいう正義は社会的正義ではなくその人の中での正義ですので、一億人いたら一億とおりの正義があるわけです」

日本代表はこう戦うべきだなどという思いを持つ人が多ければ多いほどネット上でも当然ながら反応があり、傾向としてネガティブなものが増える、ということであれば、森保ジャパンへの今の様々な反応は現在のサッカー人気の表れと受け止めるべきかもしれない。地上波で観戦し居酒屋で酒の肴にする応援スタイルから、かつてはマニアのものだったネットで観戦も意見交換も行うスタイルに、多くの人が移行し、さらにそれが可視化された、ということなのだろう。

また、森保ジャパンでは、いわゆるメディアと、ソーシャルメディアのテンションも違った。前者は批判記事は前回の最終予選を戦ったハリルホジッチ監督時代に比べればかなり少なく、トーンも緩やか。あったとしてもソーシャルメディアなどでのコメントを引用した形で批判の意図を伝えるものが多かった。一般に”こたつ記事”と揶揄されるスタイルの記事が見受けられた。

同じネット上に存在する意見ではあるが、メディアとソーシャルメディアで、森保ジャパンへの姿勢が違うことについても山口氏はこう解説する。

「ソーシャルメディア上でも同調圧力はありまして、仮に自分が支持していても攻撃的な人から何か言われるのもイヤだしということで支持している意見は書き込まなくなる、ということはネット炎上ではあることです。また、仮にですがメディア上で好意的な記事が多い場合、『俺は否定的なのになんで好意的な記事ばかりなんだ』という形で読者のガス抜きの場所がないので、ソーシャルメディア上でエスカレートしていくという可能性はあると思います」

ある種、メディアの鏡というか裏返しのようなものがソーシャルメディアという言い方もできるのだろう。

森保ジャパンは6月に4試合と9月に2試合の親善試合を行い、11月にはカタールでのW杯に向かう。残された時間は限られており、これからガラッとメンバーや戦術が変わっていくこともあまりないだろう。それでも本大会で結果さえ残してくれれば、こんなモヤモヤなど吹き飛ぶと信じたい。

  • 取材・文了戒美子

    1975年、埼玉県生まれ。日本女子大学文学部史学科卒。01年よりサッカーの取材を開始し、03年ワールドユース(現・U-20W杯)UAE大会取材をきっかけにライターに転身。サッカーW杯4大会、夏季オリンピック3大会を現地取材。11年3月11日からドイツ・デュッセルドルフ在住

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