小麦高騰は序章に過ぎない…!史上最悪「食糧危機」が世界を襲う日 | FRIDAYデジタル

小麦高騰は序章に過ぎない…!史上最悪「食糧危機」が世界を襲う日

戦場と化した世界有数の穀倉地帯ウクライナ 史上最悪の「世界食糧危機」が飢餓と新たな紛争を生み出す

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ウクライナは世界有数の穀倉地帯だ。しかし、戦火によって生産も輸出も停滞している

ロシアによるウクライナ侵攻が食糧危機を引き起こそうとしている。

3月29日、国連世界食糧計画(WFP)のデイビッド・ビーズリー事務局長は「ウクライナでの戦争は第2次世界大戦後、目にしたことのないような大惨事を地域の農業と世界の食糧・穀物供給にもたらそうとしている」と警鐘を鳴らした。

ウクライナ、ロシアはともに食糧の輸出大国で、とくに小麦の輸出量ではロシアが世界第1位、ウクライナが第5位と、両国で世界のおよそ30%を占めている。ほかにも、トウモロコシが約20%、ヒマワリ油は70%以上を世界は両国に頼っているのだ。”世界の食糧庫”であるウクライナ、ロシア両国の戦争により、世界の食糧価格が高騰している。東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授が語る。

「ウクライナからはほぼ輸出ができていない状況です。輸出の拠点となる大きな港町はマリウポリとオデッサですが、マリウポリはロシア軍に制圧されてしまった状態で港として機能していません。オデッサに関しては出港しようとする船をロシア海軍が黒海で待ち受けていて、使えません。‘21年に収獲された小麦がウクライナに大量に残されているのです」 

今後の収穫への影響はさらに大きい。

「ウクライナの国全体が戦場になっているわけではないので、生産できる地域もあります。しかし、問題は労働力です。働き手が戦争に取られたり、海外に脱出したりしています。また、ディーゼル燃料や農薬の値上がりも凄まじく、生産者に大きな負担をかけています。実際、雪どけの頃に行う小麦の種まきがほとんどできていませんから、今年の小麦の収穫はかなり低水準になるでしょう」(前出・鈴木氏)

肥料価格の高騰も深刻だ。肥料の三大要素は「窒素、リン、カリウム」。世界のカリウム生産の20%をロシア産が占めている。影響は世界に及ぶのだ。

「肥料価格は種類によりすでに2~3倍に上昇しています。さらに価格が高騰すれば、欧州を中心に世界中のあらゆる農業地域が打撃を受ける。生産者が肥料を買い控えれば穀物だけでなく、野菜などの生育状況が悪くなる可能性がありますし、肥料を買えなくて作付けを断念してしまうことさえ考えられます」(前出・鈴木氏)

穀物価格は中国の大量消費などにより、ウクライナ侵攻前からすでに上昇していた。小麦価格で見れば戦争直前の2月中旬の段階で、すでに過去5年平均(2017年~2021年)を49%も上回っていた。そこに戦争が始まったことで拍車がかかり30%上昇している。環境史・土地開発史・災害史に基づく災害リスクマネジメントが専門の立命館大学・高橋学特任教授はこう語る。

「今世界の人口はおよそ80億人で年に1億人ずつ増えています。一方、全世界で生産できる食糧は100億人分しかありません。すでに世界中で食べ物が足りなくなってきているのです。現在、約8億人が飢餓に苦しんでいます。誰かの贅沢は、ほかの誰かの飢餓につながっているのです。そんな中、中国では穀物の生産が国内消費に追い付かず、’19年から穀物の輸入量がものすごい勢いで増えているウクライナで小麦が作れないとなると、市場でのフローが本当に細くなってしまいます。現在の価格高騰はほんの序章です」

食糧自給率の低い発展途上国は影響をもろに受ける。7年にわたって内戦が続くアラビア半島の国イエメンは、小麦の40%をウクライナとロシアからの輸入に頼っていたため極めて深刻な状況に陥っている。国連世界食糧計画によると、飢餓状態に陥る人々が今年の後半には、人口のおよそ3分の2にあたる1900万人に達する見通しだという。餓死する者は、現在の5倍にまで増えると予測されている。

「ウクライナの小麦を主に買っていたのは地理的に近い中東とアフリカ諸国です。この地域は貧しい国が多く、若い人口が多い。食糧不足が起きると国民の不満は高まり、政権に対する大きな反発が起きます。私は中東やアフリカ諸国ではこれから社会動乱が起きてくるだろう、と考えます」(前出・鈴木氏)

実際、南米のペルーでは燃料や食料品の急激な値上げに抗議するデモが広がり、警官隊との衝突で死傷者も出て、政府は4月5日に非常事態宣言を出している。

「’10年から’12年にかけて中東や北アフリカで起きた大規模反政府デモ『アラブの春』は’08~’09年の穀物価格や原油価格の高騰が引き金です。今回の穀物価格の高騰は『アラブの春』と同じパターンになる可能性があります。また、貧しい国は独裁的な国家が多く、支配者が暴動を力で抑え込む可能性が高い。力を使えば使うほど社会の不満は高まり、国は不安定になっていく、という負のスパイラルに陥ってしまいます」(前出・鈴木氏)。

ウクライナ戦争は世界中で新たな紛争を生み出しつつあるのだ。

  • 写真時事通信社

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