重圧を危惧された鈴木誠也 恩師が明かす「想像を超えられる理由」 | FRIDAYデジタル

重圧を危惧された鈴木誠也 恩師が明かす「想像を超えられる理由」

5年100億円の大型契約、準備期間の短さの感じさせない活躍の裏には…

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4月11日、ブルワーズ戦でメジャー初本塁打を打った直後の鈴木(写真:共同通信)

開幕戦での1安打2四球に始まり、デビュー以来9試合連続安打&12試合連続出塁の日本人タイ記録をマークするなど、早々にロス監督からの信頼を勝ち得たカブス鈴木誠也。4月29日現在もOPS、出塁率はそれぞれナ・リーグ5、6位を誇り、ホームランも4本、得点圏打率は.438でファンの心もがっちりとつかむことに成功した。

5年100億円という大型契約によるプレッシャーも危惧される中、メジャー生活を華々しくスタートできた要因を、二人の恩師はどう見ているのか。

「誠也がこうやってメジャーに行くことは考えてもいませんでした。ただ、広島での活躍、首位打者のタイトル獲得、侍ジャパンの4番。どれも私の想像を超えてきました。そういうことを何度も積み重ねてきているので、今回も、メジャーでもやってくれるんじゃないかという気はしていました。まだ始まったばかりで、これからですけど、いいスタートを切ってくれました」

母校・二松学舎大学付属高校野球部の市原勝人監督も、鈴木には驚かされてばかりだと楽しそうに振り返る。もともと物怖じするところはなく、新しい環境に気後れするようなことはないという。

「高校から広島に入ったときもそうでしたが、テレビで見ていた選手たちに混じっても特別に意識するようなこともなかった。メジャーにも行くのが楽しみという感じだったんじゃないでしょうかね。メジャーだからと入れ込むことなく、普通にやっているんだと思います」

だが、その普通にやることが難しい。ボールの違いや言葉の問題、環境の変化。日本を代表するスラッガーの多くが苦杯をなめさせられてきた事実が、それを証明してきたわけだが、鈴木の対応力の高さには広島入団時の二軍監督で、才能開花を後押しした内田順三氏も賞賛を惜しまない。

「鈴木の場合、MLBと選手会の労使交渉が長引いた影響でなかなか契約が決まらず、気持ちの部分でも難しさがあっただろうからね。バッティングのことで言えば、タイミングの取り方のうまさ。日本人のピッチャーは前の足を上げたあと、体を割って投げる。1、2~の、3というテンポ。向こうのピッチャーは始動からリリースまでがすごく早い。1、2、3で来る。極端なピッチャーは1がほとんどなく2、3で投げてくる。だからイチローにしても振り子の幅を小さくし、松井秀喜は上げていた足をすり足に変え、大谷翔平はノーステップ打法を取り入れて対処した。逆に今季、開幕前にレッズを退団した秋山翔梧などは、そこに順応できずに能力を発揮できていない。

成功するか否かの大事な要因なわけだけど、鈴木は最初から若干、タイミングの取り方を小さくして、立ち遅れることなく積極的に打ちに行けている。追い込まれたらノーステップで打ったりもするけど、大きな反動を使わなくても力負けしないだけのパワーも日本での9年間で培ってこられた」

落合博満、清原和博、松井秀喜…教えてきた数々の名選手から送られたバットに囲まれて話す内田順三氏(写真:西﨑進也、撮影は2019年11月)

現在のメジャーのトレンドも鈴木に味方しそうだ。フライボール革命により、アッパースイングをするバッターが多くなったことで、ピッチャーは高めのフォーシームを増やす傾向にあり、昨季も打率4割近くを残すなど高めを得意とする鈴木には追い風となりうる。

「今のメジャーでは高めに対応できるバッターが一層、成功に近づける。鈴木は右肩を落としてアッパーブローに振るタイプじゃないし、右肩を早く出して叩くタイプでもない。トップの位置から、もっとも素早くバットを出せる角度でスイングできているから高めは苦にしないはず。それに鈴木の良さはただ遠くに打てるだけではない。守備や走力も優れていて、選球眼もいいからフォアボールを多く取れている。あらゆる面でチームの勝利に貢献できるのも彼の強み」(内田氏)

リーグ5位のフォアボールを取っている鈴木の姿に、市原監督は高校時代を懐かしむ。

「いいバッターになればなるほど警戒もされるわけですが、当時は打ちたいという思いが強くて、特にチャンスだとボール球に手を出してしまうことがよくあったんです。『我慢しろ』という話をよくしましたね。まだ高校生なので、すぐにというわけにはいかず少しずつでしたが、それは勉強になったんじゃないですかね。広島ではマークが厳しくなってから我慢してフォアボールを取れるようになっていきましたし、経験とともに身につけていったんだと思います」

成長し続け、成功を積み重ねる鈴木は、なにが他の選手と違うのか。市原監督は「素直さ」を挙げた。

「人の話をよく聞く子でした。高校3年生になってプロのスカウトの方が練習試合を毎週のように見に来てくださっていた時期、プロに行きたいという思いがあれば、誰しも力んだり、背伸びしたりしがちなんですけど、誠也もその類に漏れなかった。

それで『おまえがバッティングで遠くに飛ばすとか、ピッチャーとして速いボールを投げるとか、スカウトの方はそんなものは全部、知っている。おまえの姿勢を見に来ていると思うよ』という話をしたら、1塁まで全力で走り、次の塁を狙う姿勢を緩めなかったり、ピッチャーだと暑くて疲れたりして、手を抜きたくなるところを怠らずにやっていたのは特に印象に残っています。

広島でもいい先輩方がいて、教わったり、見て学んで、自分のためになると思ったら迷わずどんどん吸収していったであろうことは容易に想像できます。そしてなによりすごいと感じるのは、これだけプロで活躍する選手になっても天狗になることなく、人の言葉に耳を傾けられる素直さを失っていないことです」

侍ジャパンのチームメートでもあった巨人・坂本には打撃のアドバイスを請うこともあった(写真:共同通信)

内田氏が口にする「欲の強さ」という答えも、結局のところ行きつく先は同じだ。

「これができるようになりたい、こういうふうになりたい、というのが強い。疑問があればすぐに聞いてきましたし、それは私が巨人のコーチに移ってからも変わらなかった。ある年、シーズン後半になっても打率は3割を越えているのに、『バッティングを変えようと思っています』と久々に電話してきた。先を見据えて、さらなるレベルアップを考えてのことだったんだろうね。球界を代表する選手になって以降も、巨人の坂本勇人だったり、違うチームの選手にも話を聞きに行っていた」

みずからの欲に素直でいられ続けることがメジャーで活躍するまでの選手に鈴木を昇華させた。そして、それは今後も変わらないようだ。

「今回、メジャーに行くにあたって激励のラインを入れたら、『さらに進化します』と返してくれた。進化というのが、彼らしいなと思いました」

そう言って笑う内田氏は、鈴木の飽くなき向上心の源を、こう説明する。

「同学年の大谷翔平や藤浪晋太郎、広島の同期で1位入団の高橋大樹らは甲子園に出場して高校日本代表にも選ばれていた。でも、鈴木は甲子園に出られず、そのメンバーにも入れなかった。彼らには負けたくないという気持ちを持ってやってきたのは間違いない」

前を走っていた同世代に追いつき、追い越し、その象徴でもある大谷と今度はメジャーという最高峰の舞台で対峙する。今季のインター・リーグ(メジャーリーグにおける交流戦)では対戦がない両球団だけに、メジャーでの初対戦がワールドシリーズなら、ますます鈴木の胸は躍ることだろう。

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