ここにたしかに笑顔があった…旅行者が撮った「素顔のウクライナ」 | FRIDAYデジタル

ここにたしかに笑顔があった…旅行者が撮った「素顔のウクライナ」

日本人女性が撮った「忘れられない光景」後編

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ウクライナに魅せられ、繰り返し訪れていた日本人女性がいる。彼女のカメラに残されたウクライナの美しい風景と人々の表情。そこには、たしかな生と笑顔があったのだ。

ウクライナの旅の記録。「小リヴィウ」とよばれる西部の街イヴァーノ・フランキーウシクで、路上演奏するミュージシャンたち(2018年)。ごく最近まで、こんな光景があったのだ 写真:Chiri

40日かけて、ウクライナ7都市をめぐった

「3度目に訪れた2018年。ウクライナ40日間の旅を計画しました。首都・キーウからスタートして、地方都市をめぐる旅程。

前回の訪問から、1年ぶりのキーウ。下町のようなエリア、リバーサイドのくつろぎスポット、郊外で見つけたおしゃれな屋内市場…人口も多い大都市キーウには、あちこちに楽しいにぎわいがありました」

キーウ中心部。ドニプロ川を眺めながら、のんびり水タバコを楽しむ人たち(2018年)

ウクライナ随一のリゾート地

「次に、キーウ鉄道駅から寝台車にひと晩乗って、ウクライナ南西部、カルパチア山脈の一端にあるヤレムチェに行きました。ウクライナ国内で人気のリゾート地。

電車を降りた途端、空気が違うと実感。雄大な山々と渓流、見事な滝…絶景がいくらでもあって。ここでひと夏を過ごしてみたい!と思いました」

アジア人は珍しく、どこに行っても「目立ってしまう」のが困ったという。

ウクライナ南西部、カルパチア山脈の広大な自然の景観に癒される。ヤレムチェは人気のリゾート地。といっても素朴な雰囲気が魅力だった(2018年)

「小リヴィウ」と呼ばれる西部の街へ

「次の街、イヴァーノ・フランキーウシクへ。ヤレムチェからバスで1時間半ほど。カルパチア山脈へのゲートウェイです。

中心部のメインストリートは遊歩道になっていて、通りすぎる人たちのファッションが華やか。レストランやカフェが並び、路上では古本市やアートの実演販売が。週末には歌やバンドのパフォーマンスが行われていて、いっそう盛り上がっていました」

ウクライナには、こんなふうに幸福な、美しい街がいくつもあったのだ。

街並みの美しさから「小リヴィウ」とも呼ばれるイヴァーノ・フランキーウシクの街(2018年)

ルーマニア国境近くのチェルニウツィー

「そこから向かったのはルーマニアに近い西部の街、チェルニウツィー。さまざまな国に支配されてきた複雑な過去をもち、そのために見どころも変化に富んでいます。現在は大学の一部として使われているかつての府主教邸宅は2011年、世界遺産に登録されています。

石畳の旧市街は坂が多く、長い年月を感じさせる建築物と相まってとても絵になる。写真を撮っていると『撮りましょうか?』と声をかけてくれたり、うろうろしていると『何かお探しですか?』と話しかけてくれたり、親切な街の人たちも印象的でした」

中世を思わせるチェルニウツィーの街並み。美しい広場と、瀟洒な建物が見られた(2018年)

難攻不落の古城の街

「カームヤネツィ・ポジーリシクィイには、古いお城が。高台に建ち、かつては難攻不落といわれたこの古城が街のいちばんの見どころです。夕方になると明かりが灯り、メルヘンチックに見えるけれど、軍事の拠点でした。

地方のホステルで会う宿泊客はほとんど、ウクライナ人か近隣諸国からの人。宿の女性スタッフたちは日本語が珍しいらしく『私たちの名前を書いて』と。カタカナで名前を書いてあげたらとても喜んで、『タトゥー入れる?』などと言って笑っていました」

メルヘンのように見えるけれど、かつて軍事の拠点だったカームヤネツィ・ポジーリシクィイの古城(2018年)

のどかなテルノーピリ

「次に向かったのはテルノーピリ。ウクライナの地方都市については、日本語の情報がほとんどありませんでした。なので、行き先も適当に決めて。それでも、どこへ行っても面白いのです。

テルノーピリは、街の真ん中に大きな湖が横たわる美しい場所でした。湖畔は地元民の憩いの場。散歩をする人や芝生でくつろぐ人、釣りや水浴びをする人の姿も見られました」

湖を中心に街が広がるテルノーピリ(2018年)

噴水ショーを眺める人たち

「7つ目の滞在地はヴィーンヌィツャ。ウクライナ中部に位置し、ここからキーウへは特急列車で2時間ほどです。広範囲の市街地と、川や森など自然環境とのバランスがちょうどいい、暮らしやすそうなところでした。

ここでは地元の製菓会社による噴水ショーが行われていて、誰でも無料で観ることができます。夏の夕べ、ライトアップされた噴水を大勢の観客が眺める、その無邪気さと豊かさ。

ウクライナの旅で見た平和な風景、人生を謳歌していた人々の姿が、昨日のことのように思いだされます」

噴水ショーの会場。日が落ちてショーが始まるころ、客席はいっぱいになった(2018年)

この戦争が始まる前にウクライナの街をめぐった日本人は、あまり多くないだろう。Chiriさんが撮った1000カットほどの写真のなかには、ウクライナの美しい街、幸福な日常が残されている。この街並みは、もうない。

この先、戦争が終わっても、この街並みが戻ることはないかもしれない。愚かな戦いで失ったものはあまりに大きいのだ。

  • 取材・文・撮影Chiri

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