実名報道が可能に…是非が問われる「少年事件」凄惨な犯行内容 | FRIDAYデジタル

実名報道が可能に…是非が問われる「少年事件」凄惨な犯行内容

ノンフィクション作家・石井光太が日本社会の深層に迫る!

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去る4月25日、弁護士が記者会見を開き、担当する殺人に関与した19歳の男性の実名報道を控えるよう要求した。

弁護士は次のように述べたという。

「事件を持ちかけたのは別の人物で、最も従属的な立場だった。結果は重大だが、小さな地域の出身で、実名報道されれば家族が住めなくなる」

今年の4月1日からの法改正に伴い、これまでは未成年の扱いだった1819歳は、「特定少年」と規定され、起訴された後は実名報道が可能になった。今までは「少年A」などと匿名にされていたものが、「山田○○」などと個人の名前で報じられることになったのだ。

弁護士が担当していた事件は、今年3月に大阪府の寝屋川市で発生した。深夜、4人組の20歳前後の男女が、専門学校に通う男子学生(20)を強盗目的で襲ったのだ。その犯行は残忍極まりないものだった。まず1人が学生の顔に向けて催眠スプレーを噴射した後、他の者たちが用意していた特殊警棒でくり返し乱打した上、ナイフで背中を刺した。そして学生が持っていた現金13万円の入ったバッグを奪取し、車で逃げ去ったのである。

「繰り返し催涙スプレーを噴射」

事件は、金銭を目的として計画的に行われたものだった。その後、刺された男子学生は死亡。警察によって、加害者4人は逮捕された。

大阪地検は、4人のうち成人の2人を強盗殺人容疑で起訴。残りの19歳と18歳の男性を、それぞれ家庭裁判所へ送致した。だが、家庭裁判所は、2人に対して次のような決定を下した。

「(暴行は)繰り返し催涙スプレーを噴射し、何度も特殊警棒で殴打するもので相当に危険で悪質である」

そして大阪地検へ逆送したのである。つまり、犯行の悪質さから、家庭裁判所ではなく、成人同様に刑事事件として地裁で審判が行われることになったのである。

冒頭の弁護士が実名報道を控えるように訴えたのは、この加害者や家族を守るためだった。その理由としては加害者グループの中で立場が「従属的」であったことや、「家族が(地元に)住めなくなる」ことが挙げられた。

実は、4月1日から法律が改正されたにもかかわらず、実名が報じられたケースはほとんどない。この少年たちの他にも、新潟県で19歳の男性が危険運転致死罪で起訴されているが、実名報道されていないのだ。

実名を出すかどうかは検察の判断によるところも大きい。起訴されたとしても、実名を出すことによって、加害者の更生を妨げる可能性があるなどと判断された場合は、従来通り隠されるケースがあるのだ。つまり、特定少年として起訴されたからといって、必ずしも実名が出されるわけではないのである。

では、一体どこまでやれば、実名が公表されるのだろうか。

法改正を受けた実名公表の第1号は、21年に起きた「甲府夫婦放火殺人事件」の加害者の男性(19)だ。これもまた凄惨な事件だった。

加害者の男性は、高校の後輩であるB子に一方的な恋愛感情を膨らませていた。彼はアクセサリーをプレゼントするなどして気をひこうとしていた。だが、B子は応じず、交際の申し出も拒否した。そして男性からつきまとわれるなどのストーカー行為をされていたこともあり、SNSをブロックする。

恋愛対象だけでなく家族まで

こうした中で、男性はだんだんとB子に対する憎しみを膨らましていく。そしてついにはB子だけでなく、その家族まで殺そうと考えるようになる。

事件が起きたのは、1012日の未明だった。男性は刃物などを持ってB子の家に行くと、まず父親と母親をナタや果物ナイフで襲った。夫婦は数十ヵ所の刺傷を負って死亡。次に男性は家にいたB子の妹を襲って頭部に傷を負わせた末に、証拠隠滅のためライターオイルをまいて火を放ち、木造の家を全焼させたのである。

逮捕後、男性は「家族全員を殺すつもりだった」「B子を拉致するつもりだった」などと語った。生き残ったB子にしてみれば、あまりにも理不尽な事件であり、生涯にわたって筆舌に尽くしがたい苦しみを負うのは明らかだ。

今年3月、家庭裁判所は「計画的で残虐さを極め、結果も重大」とし、男性を逆送し、刑事処分にすることに決めた。この時、検察は彼については実名を公表するに値すると判断し、「遠藤裕喜」という名を発表したのである。

ただし、すべてのメディアがこの実名を報じたわけではない。在京メディアでは東京新聞などが匿名のまま報道を行った。東京新聞は、法改正前の考え方を原則として維持した上で、次のようにするとしたのだ。

「社会への影響が特に重大な事案については、例外的に実名での報道を検討することとし、事件の重大性や社会的影響などを慎重に判断していきます」

つまり、実名にするか否かは事件の内容によって判断するとしたのだ。逆に言えば、今回の事件はそれに値しないということである。

「【後編】凶悪少年犯罪 戦慄の中身」に続くーー。

神奈川県川崎市・多摩川の河川敷でリンチを受け亡くなった上村遼太君(提供写真)
遼太君の衣服が燃やされたトイレ。地元の人もあまり寄りつかない
遼太君が殺害された現場には多くの献花がされた
フラれた逆恨みで恋愛対象の女性宅が放火された甲府の現場。亡くなった被害者を思い手を合わせる人も(画像:共同通信社)
  • 取材・文石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

  • 写真蓮尾真司 共同通信社

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