一匹380円!阿佐ヶ谷の「高額たい焼き」が飛ぶように売れるワケ | FRIDAYデジタル

一匹380円!阿佐ヶ谷の「高額たい焼き」が飛ぶように売れるワケ

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『天然もの』のたい焼き

たい焼きといえば、御三家といわれる浪花家総本店(麻布十番)、わかば(四ツ谷)、柳屋(人形町)が有名だ。しかし近年、阿佐ヶ谷のパール商店街に店を構える「たいやき ともえ庵」に注目が集まっている。

白玉に梅干を練り込んだ梅干白玉を挟んだ「梅干白玉たいやき」に、つぶあんに塩漬の粒山椒を混ぜた「青実山椒たいやき」といった変わり種の「月替りたいやき」。たい焼きを開いてプレスした「たいやきの開き」…。2021年の日テレ系ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎』では、たい焼きの指導・監修を担当して話題にもなった。

もちろん、味も逸品だ。定番は一匹200円、月替わりは380円と高額ながら売り切れることも多い。庶民の手軽なおやつというイメージの強い、「たい焼き」の秘める可能性とは? 

「『一丁焼き』の良さは、たっぷりのあんこがパリッとした薄皮で包まれている点だと思います」と店長の安部さん(撮影:川戸健治)
どこから食べても一口目であんこに到達する一丁焼き

あんこの美味しさを満喫できる「一丁焼き」 

「たい焼きは誰もが知っていますが、『一丁焼き』の美味しさは、あまり知られていません。それを伝えることができれば、たくさんの人に喜んでいただけるだろうという考えから先代がこだわったそうです」

そう話すのは、「ともえ庵」店長の安部翔さん。 

「一丁焼きとは、一匹ずつの型で焼くたい焼きのことです。昔はこのスタイルが主流でしたが、その後、一度にたくさん焼けるようにと量産タイプの焼き台が開発されて、全国に普及しました。

ファンの中には、一丁焼きを『天然もの』、量産タイプを『養殖もの』と呼ぶ方もいます。どちらが美味しい、美味しくないということはなく、あくまでも焼き方の違いですし、お客さんの好みもあります。お店によって細かい違いもありますが、一丁焼きの良さは、たっぷりのあんこがパリッとした薄皮で包まれている点だと思います」(安部さん 以下同)

鼻先からしっぽの先まであんこがギッシリつまった状態で焼き上げるには、熟練した技術が必要で、一度に焼ける数も限られるため、一丁焼きのお店は数が少ないという。

「また食べたい」と思ってしまう理由は、あんこの糖度にもある。 

「当店で使用するあんこは、糖度が低め。代表が、開業前に『御三家』や有名和菓子店の甘さを調査したときに、美味しさの秘密は糖度の低さにあると気づいたそうです。糖度が低い分、小豆の風味が前面に出るんですよ」 

甘さ控えめなあんこにはファンが多く、数年前から年末年始限定で500gのつぶあんを1パック900円で販売しているほどだ。

一匹ずつ丁寧に焼き上げていくため、熟練された技術が必要
海産物卸などを経て4年前に入店し、今年から店長に。「本物の魚から菓子の魚に変わりましたが、前職以上に鮮度にこだわる気持ちをもっています」

ほかでは食べられないオリジナルメニューが登場する「月替りたいやき」 

一丁焼きのお店ということで、「ともえ庵」は十分珍しいといえるが、よりレア感を増しているのが、「月替りたいやき」だ。ほかでは食べられないオリジナルメニューの存在感は大きい。 

「常連さんたちが楽しみにしているのが、ほかのお店では出していないような『月替りたいやき』です。最初に作ったのは『きざみ生姜たいやき』で、砂糖漬けにした生姜の刻んだものをあんこに混ぜ込んでいます。生姜の爽やかな辛さとあんこが、実にマッチした一品です。

完成した当初は定番品にするつもりだったそうですが、その後、ほかの変わり種メニューのアイデアが出てきたので、月替りになりました」 

お店の代名詞ともなりつつある「月替りたいやき」だが、年々、新メニュー考案のハードルは上がっていると安部さん。

「当初は『ほかのお菓子に使っている素材を合わせる』という発想から作られていたそうですが、現在では『甘さ以外の強い特徴がある素材』であることを意識しています。『あんこに混ぜること』、『和の素材であること』、『ほかのお店が出していないこと』といった制約の中で考えるのは、けっこう大変で(苦笑)。それに、新メニューを思いついたとしても、既存の月替りたいやきの味を超えないとメニュー化できないので、新メニューの誕生は難しくなっていっています」 

甘さ以外の特徴を持つ食材を見事にあんことペアリングしたいい例に、「青実山椒たいやき」がある。 

「代表が、好物の山椒の実のつくだ煮を使った商品を作りたかったことから生まれたそうです。ただ、醬油でつくだ煮にした山椒があんことどうしても合わなくて、塩漬けにすることで商品化できたといいます」 

5月の月替りたいやきは「ずんだ白玉たいやき」。青大豆から作っているため、爽やかな味わいが特徴
定番メニューの「白玉たいやき(350円)」。棒状になった手作り白玉が入っていて、満足感も高い

「安くて当たり前」なイメージの払拭

新メニュー考案には、あえて斜め上をいく発想が必須なのだ。あんこの甘さと“上手にケンカ”する食材探しには、並々ならぬ苦労がうかがえる。

「『月替りたいやき』は、一匹380円。月によって変わりません。食材の原価に加えて、仕込みや焼きの手間がかかるというのもありますが、『たい焼きは安くて当たり前』というイメージを変えたいと考えた上での価格です。

380円は、たい焼きだとかなり高く感じると思いますが、ケーキであれば安いと感じる人もいるのではないでしょうか? それはもちろん、洋菓子業界の方々の努力の賜物ですが、私たちも洋菓子に負けない苦労と手間をかけて作っていると自負しています。 

それに、『月替りたいやき』は小ロット生産にならざるを得ないので、原価率がかなり割高になるものもあります。例えば、『白玉たいやき(350円)』をベースにした『さくら白玉たいやき』や『よもぎ白玉たいやき』は、白玉にもつぶあんにも、かなりの量の桜の葉やよもぎを混ぜ込んでいますが、価格差はたった30円。ここだけの話、原価ギリギリですね(苦笑)」 

たい焼きとしては高額だが、企業努力とプライドがあって実現している価格なのだ。

店頭には、ほかのお店では見かけない、たい焼きを開いてプレスした「たいやきの開き」や「たいやきマスク」といった楽しいグッズも並ぶ
たい焼きの可能性を次々に広げる阿佐ヶ谷の「ともえ庵」

■「たいやき ともえ庵」のホームページはコチラ

  • 取材・文安倍川モチ子

    WEBを中心にフリーライターとして活動。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。

  • 撮影川戸健治

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