初の東大出身力士・須山「慶応で仮面浪人」苦労人の意外な素顔
「(番付の)目標は東大関です。東大なので」
5月10日の前相撲で初白星をあげた須山穂高(24。木瀬部屋)は、こう語って報道陣へ笑顔を見せた。5月8日に新弟子検査をパスした須山は、東京大学文学部哲学科の4年生で身長180cm、体重104kg。国立大学から力士になったのは、須山で4人目。東大出身者は初めてだ。
須山の経歴はユニークだ。東大生になるまでにも遠回りをしている。
「須山は埼玉県の市立浦和高校出身です。1浪の後入学したのは慶応大学でした。バンドサークルに入りギターを担当。競馬にハマり、それなりに学生生活を楽しんでいたようですが、2年連続で落ちた東大への憧れを忘れられなかったのでしょう。仮面浪人し、3度目の挑戦で東大に合格しました」(スポーツ紙担当記者)
スポーツ経験は中学時代の野球だけ
須山には、スポーツ経験がほとんどない。
「高校は帰宅部。中学時代、野球部に所属していたのが唯一の運動キャリアです。以前から格闘技に興味があり、東大に入学してから相撲を始めたとか。ただ大学3年、4年の時は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でほとんど稽古ができなかったと聞いています。
当初は『商社か外務省に行くのかな』と、将来について漠然と考えていたそうです。しかしコロナの影響から相撲で完全燃焼できず、中途半端に終わりたくないという気持ちが強くなったのでしょう。25歳になる今年9月で新弟子検査の年齢制限を超えてしまうため、受験を決めました」(同前)
新弟子検査前に門を叩いたのが、木瀬部屋(東京都墨田区)だ。入門理由も変わっている。
「東大相撲部時代に、何度か稽古に訪れたことがあったそうです。入門の最大の決め手は、親方(元前頭・肥後ノ海)と誕生日(9月23日)が一緒だったからだとか。親方との縁を大切にしたのでしょう」(相撲協会関係者)
性格はふてぶてしい。
「物おじせず動じません。初の東大出身力士として注目され、重圧を感じるかと記者に問われても『別にないです』とどこ吹く風。まだ8つの単位と卒業論文が残っているため、しばらくは東大に通いながら木瀬部屋で稽古を重ねる予定です」(同前)
須山が得意とするのは四つ相撲で、目標とするのは元横綱・日馬富士だとか。関取にまで昇進した国立大学出身力士はまだいない。動じない東大生が、前人未到の偉業達成へ大きな1歩を踏み出した。
写真:共同通信社