サッカーW杯無料生中継を可能にした「ウマ娘マネー」のスゴい力 | FRIDAYデジタル

サッカーW杯無料生中継を可能にした「ウマ娘マネー」のスゴい力

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韓国でも大人気となりそうな韓国版ウマ娘。事前登録者が1週間で100万人を超えた、という情報もある(写真:共同通信)

サッカー日本代表が中東では初開催となる「FIFA W杯2022カタール大会」(11月21日―12月18日)への出場を決めた。7大会連続出場を決めた舞台裏では、放映権料の高騰に日本国内のTV局の〝体力〟が追いつかず、全64試合無料生中継が絶望視されていた。その窮地を救ったのが、インターネットTV局「ABEMA(以下、アベマ)」の参戦だった。

国際サッカー連盟(FIFA)と公式インターネット番組を多角的に配信する契約(オフィシャル・インターネット・ブロードキャスター)を結び、カタール大会の無料生中継の実現に大きく貢献。株式会社AbemaTV代表/ABEMA総合プロデューサー藤田晋氏(48)が自身のツイッターで「アベマとして過去最大の投資になります」と投稿した「巨大な買い物」の背景には、昨年メガヒットしたあのゲームの存在があった。

「今回のW杯放映権ではアベマさんに頭が上がらない。正直、脱帽です!」

地上波のあるベテランTV局関係者は、開局6年目を迎えるインターネットTVへあえて感謝の言葉を口にした。なぜなのか。今年11月に開幕するW杯カタール大会では国内での無料放送が放映権料の高騰で、日本のTV局がギプアップ状態だった。すべての交渉も暗礁に乗り上げて、絶望的だった無料生中継がアベマの参戦によって、カタール大会は全64試合の無料生中継が可能になった。

日本代表がW杯初出場を決めた、98年フランス大会で日本に提示された放映権料は5.5億円だった。ところが2002年日韓大会ではそれが一気に185億円まで跳ね上がる。

「欧州サッカーで主流になった有料放送局がW杯放映権購入に手を挙げ始めて、その価格がバブル状態になりました」(前出のベテラン放送関係者)

FIFAはこの後のW杯でも日本向けの放映権料は数十億円単位で値上げを提示してきた。日本側はNHKと民放各局で「ジャパンコンソーシアム」(JC)という組織を作り対抗、これまでのW杯では各局が放映権料をかき集めてきた。日本戦とそれ以外の試合という形で割り振り、共同で番組制作も行った。

日本のTV業界は、W杯カタール大会に向けてFIFAの提示額を右から左に捻出する状況ではなくなった。特に民放局ではこの2年間、コロナ禍でスポンサー収入が激減。昨年9月に始まったW杯アジア最終予選の裏で同時並行的に行われていた地上波各局に向けた放映権交渉はすべて不発に終わった。FIFAからカタール大会での日本側に提示された350億円(推定)という放映権料を集める目処がたたず、日本国内でのW杯無料放送は事実上不可能な状況になっていた。

そこで白羽の矢が立ったのが、開局6年目を迎えたインターネットTV局として躍進している「ABEMA(アベマ)」だ。

アベマでFIFAワールドカップ2022統括責任者である、野村智寿執行役員が振り返る。

「(W杯放映権の話は)アベマの総合プロデューサーである藤田(晋代表)の元に入りました。(社内決定には)長い時間をかけていろんな応酬があったわけではないと思います」

アジア最終予選で4試合連続ゴールを奪い、日本代表のW杯出場に大きく貢献した伊東純也。W杯本番の生中継により真のスターに駆け上ることができるか(写真:アフロ)

複数のTV局関係者の話を総合すると、アベマの放映権料は推定200億円。過去6大会では日本向けの放映権料におけるNHK対民放の割合は6:4が多かった。残りの150億円をNHKが90億円、テレビ朝日とフジテレビで60億円を負担した計算になる。日本テレビとTBSは今回のW杯放映権獲得には手を挙げていない。

アベマではW杯放映権購入を検討している時も有料放送を行う考えは一切なかったという。200億円は持ち出しとなる。文字通り、過去最大の投資だ。日本のすべてのTV局がスクラムを組んでも太刀打ちできなかったが、アベマにはそれが可能だった。藤田代表が「開発2年で配信するつもりでしたが、3年延期して、お金と人を大量投入した」(文藝春秋5月号)、モバイルゲーム「ウマ娘 プリティーダービー(以下ウマ娘)」が世界的な空前のメガヒットになった。

米国アプリ調査会社・Sensor Towerが発表した2021年モバイルゲームソフトの売り上げによれば「ウマ娘」は全世界で約9億6500ドル(約1096億円)を記録したのだ。実際、今も夢中になっているユーザーからこんな声が聞こえてきて、国内でも好評だ。

「1日やるのは1時間から2時間だけで満足できる」
「月1500円から3000円の課金でも十分満足!」
「今まで遊んだことのないゲームシステムです」

サイバーエージェントのゲーム事業はこのメガヒットで前年比68.6%増収。3.2倍の増益を達成した。多くの企業がコロナ禍に苦しむ中、2021年度の連結売上がなんと6664億円を記録。ここに〝ウマ娘マネー〟が誕生した。誰もが諦めていたW杯無料生中継も実現可能になった。

サッカーW杯は修道女までも興奮の渦に巻き込む。世界をあげたお祭りだ(写真:アフロ)

これまでならW杯イヤーで否が応でも盛り上がる時期だが、今回は違う。加えて本大会でのグループリーグではドイツ(世界ランク12位)、スペイン(同7位)と同組になった。森保ジャパン(同23位)が公約にしているW杯ベスト8は茨の道と言っていい。

野村執行役員は現場で陣頭指揮をとる。

「サッカー日本代表のコンテンツとしての魅力は今もとってもあると思っています。選手の名前を知らない、顔がわからないというのは見る機会、知るきっかけが減っているだけです。開局当初では受けきれなかったですが、ここまで試行錯誤してきてW杯という素晴らしいコンテンツを扱える挑戦権を得られたかなと。(アベマを)知らなかった方にはそのきっかけになってもらいたい。W杯を見ていただくことで、日本を一つにしたいし、元気にもしたい。メディアとしてそれを実現したい志はあります」と力を込めた。

「ウマ娘」のメガヒットでカタール大会の全64試合無料生中継という大盤振る舞いが、これからどう〝化学反応〟していくのか注目だ。史上初の11月開催となる今回のW杯。NHK、テレビ朝日そしてフジテレビが日本戦の生中継を中心に行う。これまでと違う風景があちこちで見られるはずだ。そして土俵際に追い込まれていると言っていい、日本でのサッカー人気回復に果たしてつながるのか。すべての答えは年末に出る。

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