ソフトバンクG「1.7兆円の大赤字」でも株価が上がっているワケ | FRIDAYデジタル

ソフトバンクG「1.7兆円の大赤字」でも株価が上がっているワケ

1.7兆円の赤字を「ニューノーマル」と言い切った孫正義

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1.7兆円の赤字を「ニューノーマル」と言い切った孫正義氏 /photo by aflo

株式相場には「遠くのものは避けよ」という格言がある。

まったく知らない企業の株を買うのではなく、生活と関連のある企業や、仕事で関係がある会社のように、知見のある銘柄を選んだほうが失敗が少ない、という考えだ。

5月12日、ソフトバンクグループ(以下、SBG)は2022年3月期決算の記者会見を開き、連結決算損益が1兆7080億円にのぼることを発表した。前年は国内企業として過去最高の4兆9879億円の黒字だったことを考えれば、この一年で6.7兆円も失ったことになる。

この大幅赤字は、SBG傘下の「ビジョンファンド」が3兆7000億円の投資評価損を計上したことに拠る。金利上昇やロシアへのウクライナ侵攻で株式市場が低迷し、グロース(成長)株の株価下落が直撃した。

特に、ビジョンファンドが投資する韓国のネット通販『クーパン』で1兆6000億円、中国配車アプリの『滴滴出行(ディディ)』で9000億円といった運用失敗が明らかになった。

「過去にも30億ドル(3200億円)も出資したレンタルオフィス業の『WeWork』が、創業者のアダム・ニューマン氏の乱脈経営やインサイダー取引、マリファナパーティーでの乱痴気騒ぎが報じられた結果、企業イメージが悪化。事業立て直しのために1兆円の融資も行い、ニューマン氏に17億ドル(1800億円)もの退職金を支払う羽目になりました。孫さんは、中国のネット通販最大手アリババ集団創業者のジャック・マー氏のようにニューマン氏に惚れ込んでいたのですが……。

他にも10億ドル(1100億円)出資の『不動産業界のAmazon』と謳ったインドのホテルチェーン『OYO』は新型コロナウイルス感染拡大で観光業が壊滅的な状況となった。その他、3億7500万ドルを出資した、自動運転をしながらロボットがピザを焼く『ズームピザ』はピザ事業から撤退し、ピザ容器の生産に事業転換など投資の失敗は目立っていた」(経済紙記者)

ビジョンファンドの原資はサウジマネーを後ろ盾にしたものだ。SBG会長兼社長の孫正義氏がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子を口説き、政府系ファンドから450億ドル(5兆円)もの資金を調達したもので、年利7%の利回り保証をつけている。赤字となっても保証した利回りは支払わねばならない。

今後も世界的に金利上昇は続き、グロース株の成長は厳しそうだ。ビジョンファンドの運用成績が短期的に改善することもないだろう。

「いま我々が取るべき行動は徹底した守りだ」

ビッグマウスで知られる孫氏がそう述べねばならないほど、世界経済の見通しは不透明。

「株式相場の上がり下がりで、業績は上がったり下がったりする。1兆、2兆の赤字黒字はニューノーマル、あまり驚かない方がいい」

21年5月、5兆円の利益を叩き出した会見で意気揚々と語っていた孫氏とは別人のようだ。会見では「新規投資の縮小」を強調しつつも、「1~2年はもたもたするかもしれないが、その後は大きく伸びる」と今後もマネーゲームを続行することを示した。

これに対して、市場は驚きの動きを見せた。SBGの5月13日の終値は、549円高の5040円となったのだ。日経平均が678円と大幅反発したとはいえ、前日に1.7兆円の巨額な赤字決算を発表した直後である。なお、週明け月曜日も続伸し、70円アップの5110円で取引を終えた。

大きな赤字となったのに、株価は大反発。この値動きをどう読み解くべきなのか。株式アナリストの鈴木一之氏は「相場上の『天底逆転』の一例」と語る。

「SBGは投資対象のほとんどがIT企業ですから、成果は米国のNASDAQ(ナスダック)と必然的に連動します。米国市場の株価下落は長期にわたっており、今回の赤字決算自体は、投資家にとって織り込み済みだったと言えます。

たしかに『1兆円超の赤字』はインパクトある数字ですが、SBGは対応策を持っています。保有する現預金は2.9兆円にのぼり、上場した投資先の株式の売却益、株式担保ローンによる調達は5兆6000億円にもなる。つまり、ビジョンファンドに投じた約5兆2000億円を上回っているのです。

孫社長は今後の投資について、『新規の株式公開は今後1年間は減るため、新たな投資はより慎重な運営をする』と安全運転への転換を表明しました。こうした要素が複合的に影響して、決算後株価が上昇しているのでしょう。

もっと言えば、今回のSBGの値動きは、今後の日本の株式市場全体の『底入れ反転』の前兆と捉えてもいいかもしれません」

冒頭の株の格言を鑑みると、「知らない会社よりは馴染みのあるソフトバンクの株を買おう」と思う人も少なくないのだろうが、はたして、孫氏はどこまで先を見通しているのか。

  • 取材・文岩崎大輔

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