ライトファンでも楽しめる『シン・ウルトラマン』の本当の見どころ | FRIDAYデジタル

ライトファンでも楽しめる『シン・ウルトラマン』の本当の見どころ

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※核心的なネタバレはありません

『シン・ウルトラマン』2022年5月13日(金)全国東宝系公開中 Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
『シン・ウルトラマン』2022年5月13日(金)全国東宝系公開中 Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ

2022年の本命の1本と言って差し支えないだろう。多くの人々が長らく公開を待ち望んでいた映画『シン・ウルトラマン』が、5月13日に劇場公開を迎えた。

製作発表が行われたのは2019年の夏で、元々の公開は2021年の初夏を予定していた本作。コロナ禍に入ったことなどで約1年の公開延期となり、製作発表時から楽しみにしていたファンにとっては約3年越しの“対面”となる。

企画・脚本は庵野秀明、監督は樋口真嗣と数々の傑作を世に送り出してきたタッグ。斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊、有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、早見あかりといったメンバーが集い、米津玄師が主題歌を手掛けた。さらに、津田健次郎ほか豪華な面々がボイスキャストとして参加している(詳細は劇場で確認されたし)。

4月末に映画が完成し、完成報告会が5月2日に行われたことから、本当にギリギリまで仕上げの作業が行われていたのだろう。撮影のメインは2019年に行われたというから、多くの日本映画のスケジュールよりも長い期間で生み出された力作だ。

『シン・ウルトラマン』は、1966年に放送開始された「ウルトラマン」のリブート作品。初代ウルトラマンをベースにしつつ、現代の日本にウルトラマンがやってきたら?という設定で物語が展開していく。

そのため、「ウルトラマン」のコアなファンが歓喜する要素を多数ちりばめつつも、ライトファンやビギナーが観ても理解できるエンターテインメントといえるだろう。

本稿では、そうしたライト~ミドル層の目線で、『シン・ウルトラマン』の中身について紹介していく。核心的なネタバレは避けるため、ご安心いただきたい。

Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ

そもそも「ウルトラマン」はどのような物語だったか?

脱走した宇宙怪獣ベムラーを追って地球にやってきた異星人のウルトラマンは、その際に科学特捜隊(科特隊)のハヤタ隊員を巻き込み、死なせてしまう。

ウルトラマンはハヤタ隊員と一心同体となることで彼の命を救い、共に地球の平和を守ろうとする……というのがざっくりとした筋書き。ハヤタはベーターカプセルという装置を使用することでウルトラマンに変身し、地球を襲来する怪獣や異星人と戦っていく。

『シン・ウルトラマン』も、神永新二(斎藤工)がウルトラマンとなり、禍威獣(カイジュウ)や外星人と戦う――という点においては同じ。

ただ、「現代日本」を舞台にしたことで、より政治ドラマのエッセンスや、様々な事象に対する説明を詳細に行い、リアリティが強まっているように感じる。

例えば、ウルトラマンより先に「なぜか日本でのみ」謎の巨大生物が多数出現→禍威獣(かいじゅう)と総称→自衛隊が対応→専門機関として防災庁の禍威獣特設対策室専従班、通称「禍特対(かとくたい)」が設立される、という設定。

また、禍威獣を討伐する際には関係省庁と連携をとる必要があったり、米国から武器を買い取ったりといった(核兵器の使用に対する言及も)、我々がいま生きる日本をベースに物語が展開していく。

Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ

一般市民が禍威獣について井戸端会議する姿や、巨大不明生物に遭遇した際にスマートフォンなどで撮影し、TwitterやTikTok、YouTubeにアップする「禍威獣が日常化した社会」がさりげなく描かれている点も興味深い。いわば巨大生物とのファーストコンタクトだった『シン・ゴジラ』が、“過去の出来事”として描かれているようなタイムラインなのだ。

怪獣や科特隊といったキーワード自体もリニューアルしており、劇中には「緊急事態宣言」に近しいワードも登場。コロナ禍に入る前の2019年に「禍」の言葉を入れ込んで脚本を仕上げた庵野の才覚には驚かされるばかりだ。

また、ウルトラマンが現れたことで発生する懸念点が、複数の軸で展開するストーリーも非常に練られている。

ウルトラマンと禍威獣のバトルはもちろんのこと(スペシウム光線、ド派手な空中戦等々、映像的な見せ場も多数)、並行してザラブやメフィラスといった外星人が現れ、日本政府が対応に苦慮するという外交サスペンスの要素も色濃く描かれる。

Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ

日本国内の禍威獣発生から、ウルトラマンの介入、その先に起こる衝撃的な事件――全てが連鎖反応していくような構造になっているのだ。そういった意味では、ストーリーの強度が極めて高いばかりでなく、スッと理解できるようなスムーズさも担保している。

また、「ウルトラマンが現代日本に来たらこうなる」のIf(もし)をシミュレートしつつ、キャッチコピーの「空想と浪漫。そして、友情。」へと突入していく点も上手い。

シリアス一辺倒にせず要所にギャグを挟む設定もそうだが、ウルトラマンという“外星人”と、禍特対という“人間”の絆を描くエモーショナルなドラマも展開される。

そのため、本作を観賞したのちに沸き上がってくる感情は爽快感が大きいのではないか。「ウルトラマン」というシリーズが子どもたちに夢を与えたように、本作にも確かな希望が込められている。

そのうえで、「ウルトラマン」シリーズのファンにはたまらない小ネタの数々や、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』『シン・ゴジラ』とオーバーラップするような要素がストーリー・ビジュアルの両面で絡んでくるため、2度3度と楽しめる“沼要素”も完備。

熱狂的なリピーターが生まれてくることは確実で、今後の興行面での動向も注視していきたいところだ。

Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
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Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
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Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
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Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
Ⓒ2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©️円谷プロ
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『シン・ウルトラマン』2022年5月13日(金)全国東宝系公開中

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション勤務を経て映画ライターへ。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント等幅広く手がける。

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