春ドラマ軒並み惨敗の中「山下智久が一人勝ち」の意外なワケ
「総倒れ」などと手厳しい言葉が飛び交っている今クールの春ドラマ。その中で、盲点的な勝ち組となっているのが、山Pこと山下智久(37)主演の『正直不動産』(NHK)だ。
物語は、嘘をつきまくって契約を獲得してきた不動産会社のエース営業マン・永瀬財地(山下智久)が、ある土地の祠を壊したことでたたりに遭い、嘘が一切つけなくなってしまうというもの。しかしその正直さが結果的に顧客たちの幸せへとつながっていき……。
と、まあハッキリ言ってかなりフザけた設定なのだが、これがなかなか「バカバカしくて面白い」と好評なのである。ジワジワと口コミで評判が広がり、見逃した人たちから「見てみたい!」という要望が殺到し、何と早くも2度目となる再放送がなされたほどだ。
山下智久といえば、2年前に報道されたスキャンダルによって、一時は芸能活動の継続すら危ぶまれたほど。そのこともあってかその後、所属していたジャニーズ事務所を退所し、活動の場を主に海外に移していた。今ドラマは久々の日本復帰でもあったが、まさに山Pの底力を見せつけた形となった。
視聴率が低くても好調な特殊事情
なぜこうも山P人気は根強いのか。芸能事情に詳しい記者やライターたちに話を聞いてまわった。
「まず前置きとして、実は『正直不動産』も視聴率がそんなにいいわけではないんです。前半は5%前後を推移していた状態だったのですが、NHKが積極的に視聴率を開示しなかったこともあってか、あまり不調な印象を与えませんでした。
そうこうしているうちに口コミで『実は一番面白い』などと話題になり始め、2度目の再放送が決まった。そこから一気に勢いに乗った、というわけです。今回はNHKドラマへの出演を選んだことが、幸運な方向に転がったとも言えるでしょう」(週刊誌の芸能担当記者)
とはいえ、作品が面白くなければ不調なものは不調なままだ。最初の出遅れを跳ね返したということは、それだけ山下の演技が良かったということではないだろうか。実際ネット上には、「久々の山P、やっぱりカッコいい!」、「この役が山Pで良かった」などと、山下がハマリ役であったゆえの面白さを指摘する声が多数上がっている。
まさに、『正直不動産』の好評ぶりは主演が山下だったからと言えるだろう。取材を進めていったところ、その理由は大きく2つあることが見えてきた。
「1つは、久々の日本での本格的な活動だったことです。スキャンダル後、山下は活動の場を海外に移し、日本のテレビでその姿を見ることがほぼなくなりました。一応、Hulu配信の日欧共同制作ドラマは公開されましたが、日本の地上波ドラマとなると3年ぶり。主演映画となると、18年の『コードブルー‐ドクターヘリ緊急救命‐』以来4年ぶりです。しかも今後公開が決まっている作品もやはり、海外製作かつ配信系サイトでの放送のものばかり。再び、日本での露出は減る予定です。
加えて彼は、バラエティ番組にはあまり出演しない傾向があった。もともといつでも見られる存在ではなかったうえ、日本のドラマや映画への出演も激減したため、希少感が大きく高まっていました。そんな中での、久々にガッツリ日本に腰を据えたドラマだったので、『やっぱり山Pっていいな』という印象につながったのではないかと思われます」(インタビューライター)
そして2つ目の好評理由は、山P自身の人柄によるものが大きいという。
「今回のドラマで山下は、嘘がつけなくなる誠実な不動産営業マンを演じているのですが、これが山下の素のイメージとピッタリ合ったと言えると思います。というのも山下は、最近芸能界を震撼させているガーシーこと東谷義和のYoutubeで、『とにかく女性に優しい。悪評を聞いたことがない。神』とまで絶賛されていました。多くの俳優が彼の暴露でイメージを落としている中、山下は珍しくイメージを爆上げした存在です。
そんなガーシ―効果もあって、正直な営業マンを演じても『本当に山Pならこんなふうに優しく対応しそう』と真実味があるのです。違和感なくドラマを見られることも、尻上がりに好評になっている理由の一つではないでしょうか」(テレビ誌編集者)
“正直山P”の人気は、まだまだ続きそうだ。
取材・文:奈々子
愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。タレントのインタビュー、流行事象の分析記事を専門としており、連ドラ、話題の邦画のチェックは欠かさない。雑誌業界では有名な美人ライター
撮影:島 颯太