ラグビーW杯代表入りを期待される20歳ディアンズの書道の腕前 | FRIDAYデジタル

ラグビーW杯代表入りを期待される20歳ディアンズの書道の腕前

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高校時代、書の甲子園で秀作賞に輝いたワーナーの作品(提供:毎日新聞社)

日本ラグビー界有数のスター候補だ。ニュージーランド出身のワーナー・ディアンズは、昨秋、代表デビューを果たした20歳。身長201センチ、体重117キロと恵まれたサイズで、勤勉に動く。流経大柏高時代には通称「書の甲子園」で秀作賞に輝いた特異なアスリートは、名手の態度を手本に2023年のワールドカップ(W杯)フランス大会での躍動を目指す。

日本語に英語圏のなまりがない。父のグラントさんがNEC(当時名称)のS&Cコーチとなったことから、14歳で来日。いまでは近頃の若者風のイントネーションで「ヨユー」と口にする。

話題は、あびこラグビースクールを経て入った千葉の流経大柏高の頃の思い出である。

ディアンズは、母国でバスケットボールと一緒に親しんでいた楕円球をアジアの島国でも追いかけてきた。最近では現所属先の東芝ブレイブルーパスで、1日3度のトレーニングも経験している。それでも、高校3年目におこなった「校内合宿」のほうが「ヨユー」で大変だったのだと笑う。

「ヨユーで、校内合宿(のほうがハード)です」

件の「校内合宿」があったのは2020年夏。新型コロナウイルス感染拡大の影響でできなくなった、毎年恒例の菅平合宿の代案であった。

気温30度超の炎天下の千葉のグラウンドで約10日間、「4部練」が繰り返される。走り込み、ポジション別練習、実戦形式セッションが繰り返される。

過酷だったのは、休憩時間もタフだったことだ。

昼食後は多くの部員が、近隣の「龍鳳館」という寮で昼寝ができた。他方、自宅から通っていたディアンズは…。

「ずっと部室にいて、携帯をいじっていました。クーラー、ないっす。通いの人は10人くらいいて、皆、ひとつの扇風機の下に集まっていました」

日本の部活動ならではの試練を乗り越えた。さらに普段の学生生活でも、独自の体験があった。書道である。

ディアンズのいた流経大柏高の「普通科スポーツ進学コース」は、生徒の集中力向上を目指してか書写の授業時間を多くとっているようだ。

担当の徳村康広教諭は、過去にはロンドン五輪男子柔道81キロ級フィジー代表のナウル・チョサテキも指導していた。

「大きな文字を書くのには、ごまかしがきかないんです。筆を自分の頭の上から落とし、ひじを大きく動かし、身体で書かなくてはいけない」

3年目に週3回の授業を受けたディアンズは、その資質を有していた。

太い筆を3本、束ね、ラグビー部寮にちなんで「龍鳳」と書く。8月下旬から始まった2学期の授業、別室での特訓を経て、「第29回国際高校生選抜書展」へ出展する。

「書の甲子園」と呼ばれるこの大会で秀作賞に輝いた1枚は、線の太さやにじみ具合がダイナミックな印象を与える。

徳村教諭は、半紙と向き合うディアンズに独自の「リズム感」を見出した。描く線によって筆を進める速さを変えるのもコツのひとつだが、ディアンズはその塩梅を自分なりに掴んでいたと見る。

専門の書道を通し、専門外のラグビーの才能も想像できたと言える。

「速く書いたり、ゆっくり書いたり。これは呼吸、リズム(が肝)なんです。彼は運動神経がいいからそれをすぐに飲み込める。運動神経がいい子、リズム感がある子は(書道でも)伸びます」

2mを超えるワーナー。日本代表SH流大(右)より頭3つ高い(写真:アフロ)

高校時代に身長が15センチ以上も伸びたディアンズは、高校のラグビー部の相亮太監督曰く「メイド・イン・ニュージーランドのパソコンに日本のチップを搭載したイメージ」。卒業後は東芝入り。33歳の同僚に薫陶を受ける。

リーチ マイケル。自身と同じように日本の高校を出て、2019年までに2大会連続でW杯の日本代表主将となったこの人を、ディアンズはロールモデルに掲げている。

「練習でも試合でも毎回、100パーセントでやる、超えたい人です」

そのリーチに師事する若手からも、知見を吸収する。

当時のトップリーグで公式戦デビューを果たせないながらも、昨秋の日本代表活動に参加。帯同したアイルランド遠征で同部屋だったのは、ベン・ガンター。5月21日からはじまるリーグワンのプレーオフトーナメントに進んだ、埼玉パナソニックワイルドナイツ所属の24歳だ。同じフランカーに入るリーチを、尊敬してもいる。

ディアンズは、先輩格のガンターが日々の練習の前後にチームのサインプレー、トレーニングの動画をくまなくチェックする姿に感銘を受けた。本人に意図を聞くと、「これをすることで、練習でのミスが減るんだ」と教えてくれた。

広く伝わる格言に、嘘がないとわかった。

「準備が一番、大事」

この秋の遠征でディアンズは、日本代表の初キャップを得る。

2021年11月14日、エスタディオ・シダーデ・デ・コインブラ。ポルトガル代表戦の後半36分に出場する。38―25で勝利した瞬間も、桜のエンブレムをつけてグラウンドに立っていた。

母のターニャさんがネットボールのニュージーランド代表選手だったとあり、子どものころからずっとオールブラックス(ラグビーのニュージーランド代表)入りを夢見ていた。

規定上、いったんテストマッチ(代表戦)に出れば他国の代表となるのは難しくなる。日本代表のジャージィを着ることは、長年の目標から遠ざかるのを意味していた。

ただしいまとなっては、「ジャパンにフォーカスしている」。オールブラックスにならずとも、叶えられるミッションがある。

「世界一の、ロックになりたいです」

長身選手の担うロックのポジションへ入り、求められるすべての仕事で際立ちたいとディアンズは言う。

2022年に発足のリーグワンでは、新生「東芝ブレイブルーパス東京」の一員としてレギュラーシーズン13試合に先発。球を持てばフットワークを活かして相手をいなし、守っては高低のタックルを使い分ける。

出場停止期間があったため新人賞、ベストフィフティーン入りの資格は得られないものの、チームにとって2015年度以来の国内4強入りに喜ぶことができた。

21日からはプレーオフに進み、日本一を見据える。6月に再開する代表活動よりも先に、「目の前の試合に集中」。最高の「準備」を心掛ける。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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