元エース記者・鮫島浩が明かす「朝日新聞の混乱と崩壊」 | FRIDAYデジタル

元エース記者・鮫島浩が明かす「朝日新聞の混乱と崩壊」

登場人物すべて実名で内部告発する話題のノンフィクション『朝日新聞政治部』がまもなく刊行!なぜ、大新聞は「死んだ」のか――

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朝日新聞をバックに立つ鮫島氏。「情報を一方的に送りつけるオールドメディアは構造的に勝てない」と断言する
朝日新聞をバックに立つ鮫島氏。「情報を一方的に送りつけるオールドメディアは構造的に勝てない」と断言する

「木村さんが謝罪会見をしたあの日、朝日新聞は死んだと私は思っています」

元朝日新聞記者の鮫島浩氏(50)は、淡々とした口調で振り返った。

大新聞の凋落を描いたノンフィクション『朝日新聞政治部』が、5月27日に刊行される。著者の鮫島氏は京都大学法学部卒業後、’94年に朝日新聞に入社。地方支局を経て政治部に移ると、菅直人や竹中平蔵らに食い込み、数々のスクープを報じたエース記者だった。特別報道部次長に就いた後、’14年には、福島第一原発元所長の吉田昌郎氏が政府事故調の聴取に応じた記録を独自入手した、「吉田調書報道」の担当デスクを務めた。

「吉田調書報道」は世間の注目を集める大スクープとなったが、その後、「所長命令に違反し、所員が原発から撤退した」という記述をめぐり批判が殺到。さらに、「慰安婦報道取り消し」や「池上彰コラム掲載拒否」といった問題も起き、朝日新聞にはバッシングが吹き荒れた。

「当時は安倍政権の圧力も強かった。取材の現場では、『官邸に睨(にら)まれるから朝日には話さない』と、政治家や官僚から露骨に排除されることもありました」

追い込まれた当時の木村伊量(ただかず)社長は、’14年9月11日、謝罪会見を開く。発表したのは、「吉田調書報道」の取り消しだった。

「『吉田調書』の第一報が、百点満点じゃなかったことは認めます。所員全員が吉田氏の命令を聞いていたかわからないなかで、『命令違反』という表現により『所員の名誉を傷つけた』という批判は、受けとめなければならない。しかし、木村さんは『吉田調書報道』を人身御供にし、他の問題の責任を隠した。あれは、木村さんの保身以外の何でもありません」

そして待っていたのは、現場記者の処分だった。社内中から祝福された鮫島氏は、一転、「捏造(ねつぞう)の当事者」に転げ落ちた。

「現場の人間は、再三にわたり『修正記事を出しましょう』と提案していた。それを上層部は無視したうえ、現場にすべての責任を押し付けたのです。『吉田調書報道』の本当の問題は、危機管理の失敗にこそあります。

『吉田調書報道』で木村さんは新聞協会賞を取りたかったのでしょう。しかし、修正記事を出せば協会賞に水を差す。協会賞を取りたい社長に忖度(そんたく)し、茶坊主と化した周囲の人間が現場の声を握り潰(つぶ)したと、私は聞いています」

記者が処分されれば、当然、現場は萎縮する。その結果が、いまの朝日新聞の凋落(ちょうらく)ぶりに表れていると鮫島氏は語る。

「権力批判は弱まり、傍観報道を垂れ流していると感じます。現場の記者を処分したことで、朝日新聞は死んだのです」

鮫島氏は昨年5月に朝日新聞を退社し、現在はネットメディアを立ち上げ、たった一人で活動している。

「朝日新聞は何に敗れたのか。大枠で見ると、ネットに敗北したと、私は考えています。ネットメディアを下に見て、ネット上に溢れる批判の声を無視してきたことで、朝日新聞は取り返しのつかない状態になってしまった。それを身を持って痛感したからこそ、自分自身がメディアになろうと思ったのです」

著書『朝日新聞政治部』は、オールドメディアに身を置いた27年間の総括として書いたという。登場人物は全員実名。巨大組織がいかに崩壊していくかが、生々しく描き出されている。

「吉田調書報道」に関する記事のスクラップブック。退社後、鮫島氏の自宅に届いた。差出人は不明だ
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本誌未掲載カット 元エース記者・鮫島浩が語った朝日新聞の混乱と崩壊
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5月27日刊行。凋落ぶりだけでなく、新聞記者の具体的な仕事や朝日新聞の組織構造についても詳しく書かれている
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『FRIDAY』2022年6月3日号より

  • PHOTO濱﨑慎治

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