自粛をやめて「壁」を越える…精神科医が教える鬱にならない生き方 | FRIDAYデジタル

自粛をやめて「壁」を越える…精神科医が教える鬱にならない生き方

『80歳の壁』和田秀樹先生が提唱する「楽しく健康な人生のために、外に出よう」

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
自粛の副作用、配慮なき自殺報道…今、起きている問題に早くから警笛を鳴らしていた精神科医の和田秀樹さんは、「生きる」ことの意味を問い続けている。本棚の書籍はほとんど自身の著書。「言いたいこと」が、たくさんあるのだ
自粛の副作用、配慮なき自殺報道…今、起きている問題に早くから警笛を鳴らしていた精神科医の和田秀樹さんは、「生きる」ことの意味を問い続けている。本棚の書籍はほとんど自身の著書。「言いたいこと」が、たくさんあるのだ

「コロナ自粛で、心を病む人が増えるのは当然です。僕はもう2年前からずっと、そのことを指摘してきました」

こう語るのは、精神科医の和田秀樹先生。豊富なカウンセリング治療の経験をもつ和田先生は、かねてから「コロナ自粛」の弊害を訴えてきた。

「日本では、こんな生活が2年を越えました。外出や人と接する機会が極端に減って、まずダメージを受けたのは高齢の方。家にこもって、感染の恐怖ばかりが伝えられるテレビを見て、外出しない生活によって、身体機能がどんどん衰えて『フレイル』になる。

コロナ以外の疾病を抱えている方もいますから、そんな症状でひとたび入院したら、家族にも会えない。この2年間、孤独のなかで亡くなる人がどれほどいたか。一方の家族も、愛する老親を看取ることができないままお別れ、という苦しみを味わった。

これ、どう考えても理不尽でしょう?」

「死」は、いつかだれにでも訪れるものだ。しかし、その瞬間まで「生きて」いる、その時間をどう過ごすかが問われている、という。

40代、50代の鬱が増える「当然の理由」

「そしてこの長引く状況のなか、中高年層にも、そんな精神的ダメージが広がっています。今月相次いだ著名人の自死。そこから連鎖する負のパワーは計り知れない」

コロナ禍に、鬱症状を訴える人が増えているという。

「精神科の現場で多くみられるストレスによる鬱症状には、大きく分けて2つの型があります。ひとつは、人間関係のストレスによる鬱。これは、コロナ以前からある、鬱の典型的なパターンです。いわゆる5月病のように、新しい環境になじめない、とか、職場のパワハラがつらいとか、そういう原因による発症ですね。

もちろん、鬱に至るまでにはいくつもの原因が絡みあうものですから、これだけ!という1つの理由で発症するわけではありません。けれども大きく分けるとやはり、この『人に関わるストレス』が鬱の要因になることは多いです。

そして今日的なもう一つの要因が、逆に『人と関わる機会を失ったためのストレス』、これがコロナ鬱で見られるものです。

上島竜兵さんの報道を聞く限り、まさにそうじゃないかと。人と飲みに行く、おしゃべりをする。それは人間にとって必要な豊かな時間です。それがいきなりなくなったことが、大きなストレスになったんだと思います。

多くの人は、歳を重ねるなかで、定年になったり子どもが巣立ったりと社会的な活動の範囲が徐々に狭まっていきます。一方で、その年齢なりの活動をはじめたりしてバランスをとっていく。変化は、比較的緩やかです。

が、コロナ自粛は、なんの用意もなく人間関係をバン!と、遮断してしまった。上島さんのように、人と飲み歩くことが楽しみだった人にとって、これは相当きついんです。

彼ほどでなくても、たとえばママ友とランチをするというようなささやかな時間も、心の安定に必要なんです。

ピアカウンセリングという手法は、たとえばアルコール依存の人同士が話し合うこと。ピア=仲間同士でカウンセリングし合う。とても有効な治療法なんです」

この国のメンタルヘルスを蝕むもの

「飲みに行く、ランチでおしゃべりをする、という日常は、まさにこのピアカウンセリングの役割を果たしていました。

コロナ自粛で失ったのは、人の気持ち。この国のメンタルヘルスをゆっくりと蝕んでいます。政府の専門家会議は、感染症の研究者が牛耳っています。彼らに、人の心はわからない。コロナ政策にメンタルヘルスも考慮しなくては。精神科の専門医が参加するべきです」

ここにきて、さまざまな「自粛」がすこしずつ解除されています。

「心の病は、なにかあって即、悪化するわけではありません。この2年のストレスがたまって、これから多くの人に症状が出ることが心配です。

僕はマスク着用に反対なんです。なにがよくないかって、人は、人の笑顔を見ることで心が落ち着くんですよ。マスクは顔を半分隠してしまう。相手が笑っていることがキャッチできません。

そして、真面目で、ルールを守って生きている人ほど鬱になりやすい。自粛を守って家に籠る。『ひとりで家飲み』では、依存症のリスクこそ増やしても、気持ちは晴れません」

したいことをして、元気に生き切る

とはいえ、まだしばらくは「注意して生きる」ことが強いられます。

「気持ちが晴れない、鬱っぽい人の多くは、セロトニンという物質が不足しているからです。自粛生活で、たいていの人はセロトニンの出が悪くなっています。そうすると、神経がへたばった状態になるんです。セロトニンを増やすには、外出をすること、それから、肉をしっかり食べること。外出を控えて、太るからなど気にしてあっさりしたものを食べていちゃ、絶対だめ。

だいたい、少し太っているほうが人間は健康で長生きなんです。それははっきりとデータに示されています。

そもそも、長生きってなんでしょう。健康で長く生きることが望みですよね。できることなら寝たきりにならず、死ぬときまで元気に生き切る。鬱々とした気持ちではなく、幸せな気持ちで生きていく。そのために、人はもっともっと外に出て、したいことをして、食べたいものを食べて。僕は、そう思います。

人はもっと、幸せになっていいんです。そろそろ無駄な自粛はやめて、外に出ましょう。自由に自立して生きる。なによりそれが、いちばん大切なことですから」

和田秀樹:1960年生まれ。東京大学医学部卒業後、米国で精神医学、カウンセリングを学ぶ。精神科医として、30年以上にわたり医療の現場に携わる。現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長、国際医療福祉大学教授。受験アドバイザー、映画監督としても活躍している。近刊『80歳の壁』がベストセラーに。新刊『テレビの重罪』など、著書多数。

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事