「核と疫病」に悩む北朝鮮がコロナ蔓延を公表したウラ事情 | FRIDAYデジタル

「核と疫病」に悩む北朝鮮がコロナ蔓延を公表したウラ事情

国内事情を一切明かさない北朝鮮が、突然のコロナ感染拡大を発表。その背景には金正恩総書記の焦りと真の狙いが見え隠れする

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薬局を視察する金正恩総書記。コロナ感染拡大に対する国民の不安抑制のため、事あるごとに「軽症」を強調している
薬局を視察する金正恩総書記。コロナ感染拡大に対する国民の不安抑制のため、事あるごとに「軽症」を強調している

朝鮮中央通信が今月12日、突如、北朝鮮でのコロナ蔓延を伝えた。金正恩氏の下、ゼロコロナで制御されているとしてきた姿勢から180度方針を転換した格好だ。

5月20日時点で発熱者数はおよそ224万人に達しているとみられ、金正恩総書記は「建国以来の大動乱」とし、全都市を完全封鎖。首都平壌では3000人近くの軍医が薬局に派遣され、医薬品を各戸に供給するなど封じ込めを図っている。

感染が拡大した要因は、各地から集められた兵士がマスクなしで参加していた、4月25日の軍創建記念日の軍事パレードと推測されている。しかし国際ジャーナリストの山田敏弘氏は、はじめからゼロコロナではなかったのではないかと語る。

「2020年1月から北朝鮮政府は直ちにコロナ対策に乗り出しています。まず国境封鎖で外国との往来を禁止し隔離施設も作ったとされます。しかし、1〜2月で、軍人3700人が隔離状態にあり、180人が死亡したと伝えられている。2020年10月10日、朝鮮労働党創立75周年の際に金正恩は『北朝鮮のコロナ感染者はゼロだ』と発言していますが、海外メディアからは『実態は違う』と指摘されていた。コロナ感染者などについては箝口令が敷かれていたらしいです。

実際に脱北者が海外メディアに告白した情報によると『2020年11月までに8万1000人が隔離されている』といいます。これには兵士らは含まれておらず、コロナ感染の疑いのある人たちはもっと多いとされていました。この時点で重症患者用の施設が10カ所設置されていて、少なくとも300人の死者がいると報じられていたのです」

4月に行われた人民革命軍創建90周年祝賀軍事パレード。具体的な参加人数は明らかになっていないが、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は「史上最大の大政治・軍事祝典」だったと報じた
4月に行われた人民革命軍創建90周年祝賀軍事パレード。具体的な参加人数は明らかになっていないが、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は「史上最大の大政治・軍事祝典」だったと報じた

北朝鮮でのコロナ禍は今にはじまったことではないと考えられるのだ。金正恩氏は上海などで続いている都市封鎖を参考にして感染を抑制し、医薬品についても中国の支援を受けていく意向を示している。

では、なぜこのタイミングで公にしたのか。山田氏が続ける。

「感染を隠してきた理由は、国内で金正恩がきちんと対応できていると見せたいからにほかなりません。コロナ感染が広がっているというのは総書記の名声と評判を落とすと見られているからです。今になって公表した理由は、それだけ感染が拡大していてコントロールできなくなっている証拠だと思います。

理由は他にもあります。ロシアのウクライナ侵攻です。この混乱で、北朝鮮は国際社会から完全に存在感を失っています。最近になってミサイル発射を乱発していますが、どの国からも相手にされていない。北朝鮮は瀬戸際外交が常套手段ですから。世界からの注目を集めることも狙いの一つだと思います」

北朝鮮は医療体制が脆弱でコロナ検査キットも不足していると伝えられる中、中国の支援を得ても感染を抑え込むことができるのかは依然、不透明だ。5月10日に就任したばかりの韓国・尹政権は早々に支援を表明したが、北朝鮮からの回答はないという。今後どのような事が想定されるのか。

「アメリカが直接でなくともWHOなどが主導するCOVACSなど国際機関を通して、ワクチン提供を働きかけていくでしょう。それを北朝鮮が受け入れるかはわからない。金正恩が西側に頼らずに事態をコントロールできるとアピールしたいなら受け入れないかもしれない。注目を浴びて、欧米に交渉してもらってなんぼですからね。制裁緩和をしてもらいたいというのが狙いでしょう。

ミサイル発射では国際社会の注意を引けなくなったいま、核実験をやるのかどうかが最大の注目点です。核実験を成功させて、同時期にコロナ収束宣言を出して、両方の成果を強調するシナリオも考えられなくはない」(前出・山田氏)

実際に岸防衛大臣は20日の会見で、「早ければ今月中にも核実験を行う恐れがある」と語った。北朝鮮での感染拡大は由々しき事態だが、一方で日本は強硬化する軍事挑発に警戒を怠ってはならない。

「コロナ公表」は世界に衝撃を与えた。今後、金正恩氏はどんな手を打つのか。一挙手一投足が注目される
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  • 写真共同通信社

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