辛口批判相次ぐ朝ドラ『ちむどんどん』壮大な伏線回収で評価一変か | FRIDAYデジタル

辛口批判相次ぐ朝ドラ『ちむどんどん』壮大な伏線回収で評価一変か

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NHK朝ドラ『ちむどんどん』ヒロインの黒島結菜。ドラマには厳しい評価も上がっているが…
NHK朝ドラ『ちむどんどん』ヒロインの黒島結菜。ドラマには厳しい評価も上がっているが…

沖縄の本土復帰50年を記念して放送が始まったNHK朝ドラ『ちむどんどん』。大きな期待を背負ってスタートしたものの、世帯平均視聴率は第4週まで下降線をたどりSNSでは

《ちむモヤモヤする》
《役者さんが良いだけに脚本のアラが目立つ》

などといった辛口のコメントが寄せられている。

「今回の朝ドラは、復帰前の沖縄からスタート。沖縄料理に夢をかけるヒロインと支え合う兄妹たちの絆を描く青春群像劇。脚本家・藤本有紀氏が手掛けた前作『カムカムエヴリバディ』では、3世代のヒロインが織りなす百年の物語の中で、壮大な伏線回収劇が行われる展開にSNSも大興奮でした。’07年の朝ドラ『ちりとてちん』以来、“伏線回収の魔術師”の異名をとる藤本氏の後だけに、物足りなさを感じてしまう視聴者が多いようです」(ワイドショー関係者)

しかしドラマのスケールにおいて、決して今作も負けてはいない。『カムカム-』が3世代百年の物語なら、『ちむどんどん』は比嘉4兄妹が織りなす『若草物語』や『細雪』を思わせる家族の物語。

特に長女・良子(川口春奈)、次女・暢子(黒島結菜)、三女・歌子(上白石萌歌)の“山原美人3姉妹”が放つオーラは、半端ではない。

「このドラマ当初は4姉妹の設定でしたが、脚本を手掛ける羽原大介氏の提案で3姉妹と兄の4兄妹の物語に変わりました。羽原氏の父親は、実は比嘉兄弟と同じ4兄妹。

しかも実父は賢秀(竜星涼)を上回るトラブルメーカーで、『死ぬまでやんちゃだった』と羽原氏自身も話しています。比嘉4兄妹の4通りの人生を楽しむのも、今作の見所のひとつです」(前出・ワイドショー関係者)

ヒロインに選ばれたのは、次女・暢子を演じる沖縄出身の黒島結菜。制作統括の小林大児チーフプロデューサーは

「透明感に、凛々しさ、たくましさを併せ持ち、シリアスもコミカルも表現できる素晴らしい俳優。沖縄出身でもある黒島さんの他にヒロインは考えられませんでした」

と、ヒロインに抜擢した理由について語っている。

だが、沖縄の本土復帰50周年の記念すべき朝ドラにもかかわらず、放送開始直後からハッシュタグ《#ちむどんどん反省会》などへの書き込みが相次ぎ、SNSには非難が殺到。

しかし向かい風が強ければ強いほど、大きな成功を収めるチャンスはあるとみる声がある。

「羽原氏の大学時代の同級生でもある作家・吉本ばななは、’14年に羽原氏が手掛けた朝ドラ『マッサン』について『彼の脚本の特徴は、ある地点から突然全部の伏線が花開いて、人物が生き生きとし出すところ。人物造形がハンパなくきちんとしているから、どんな出来事にも土台があるし、安心して観られるのにひとひねり深い展開になる』と賛辞を惜しまない。

となると今後、家族を残して無念の死を遂げた父・賢三(大森南朋)や、沖縄戦で家族を失った母・優子(仲間由紀恵)にまつわる壮大な“伏線回収劇”が始まる可能性は充分にあります」(前出・制作会社プロデューサー)

故・つかこうへいの運転手からキャリアをスタートさせた脚本家・羽原大介氏には、譲れない矜持がある。

「映画『パッチギ』や朝ドラ『マッサン』、『テンペスト』(共にNHK)といった作品で、日本の中の異文化を見つめ、逆境の中で生き抜く人間たちの骨太なドラマを描いて来た羽原氏にとって、今作はまさにうってつけの題材。

しかも、どの作品でも“普遍的な人間愛”を真ん中に置いて描く姿勢は師であるつか氏譲りであり、アメリカ世からヤマト世へ移り変わる激動の時代を生きる暢子たち兄妹をどう描くのか。沖縄返還の歴史を総括するような、心に残るドラマを今後、期待したいところです」(制作会社ディレクター)

そんな羽原氏が「山原編」で涙を流しながら執筆したシーンがある。それは自分のやりたいことが見つからず、モヤモヤしていた暢子が料理部の助っ人として「産業まつりのヤング大会」に出場。第4週の最後に「東京に行って、料理人になりたい」と宣言する場面だという。

「このシーンを書きながら、『湧いてくるものをそのまま文字にしているから、こみ上げてくる時があるんです』『僕、あのシーンを泣きながら書いたんです』と言えば、暢子を演じる黒島も『初めてそのシーンを読んだ時、泣いちゃいました。感動で』と告白。今作にとって、まさにターニングポイントになる名場面。その翌週から視聴率も少しずつ上がり始めています」(前出・制作会社ディレクター)

返還前の沖縄が描かれた「山原編」。そこに散りばめられた数々の”伏線”が花開き、やがて我々視聴者を感動の涙で包み込む。そんな至福の瞬間がやって来るのを、今しばらくワクワクしながら待ちたい――。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO近藤 裕介

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